オープンバンキングとは
オープンバンキングとは、銀行が保有する顧客の金融データ(口座情報、取引履歴等)をAPI(Application Programming Interface)を通じてサードパーティに安全に共有する仕組みです。顧客の同意のもと、フィンテック企業やその他のサービスプロバイダーが銀行のデータにアクセスし、革新的な金融サービスを構築できるようになります。
グローバルのオープンバンキング市場は2025年に約357億ドルと評価され、2026年には約432億ドルに成長すると予測されています(CAGR 24.8%)。2025年第1四半期だけで720億件以上のAPIコールが行われ、前年同期の440億件から大幅に増加しています。日本市場は2026年に約22億ドルに達する見通しで、アジア太平洋地域は最も高い成長率が見込まれています。
オープンバンキングの仕組み
APIによるデータ連携
銀行がオープンAPIを公開し、認可されたサードパーティがAPIを通じて顧客の口座情報や取引データにアクセスします。全ての連携は顧客の明示的な同意(コンセント)に基づいて行われ、OAuth 2.0などの標準的な認証・認可プロトコルでセキュリティを確保します。
三者間の関係性
| プレイヤー | 役割 | 具体例 |
|---|---|---|
| 銀行(データ保有者) | APIを通じて顧客データを提供 | メガバンク、地方銀行、ネット銀行 |
| TPP(サードパーティプロバイダー) | APIを利用して新サービスを構築・提供 | フィンテック企業、会計ソフト、家計簿アプリ |
| 顧客 | データ共有に同意し、革新的なサービスを利用 | 個人消費者、中小企業 |
オープンバンキングの主要サービス形態
BaaS(Banking-as-a-Service)
銀行機能(口座開設、送金、融資等)をAPIとして提供し、非金融企業が自社サービスに銀行機能を組み込めるようにする仕組みです。BaaSプラットフォームはAPIゲートウェイ市場を牽引しており、中小銀行がスケーラブルにサービスを拡大する手段としても活用されています。
組込型金融(Embedded Finance)
ECサイト、SaaS、マーケットプレイスなど非金融サービスの中に、決済、融資、保険などの金融機能を組み込む形態です。EC プラットフォームの60%以上がオープンバンキングを活用した組込型金融を採用しています。顧客が金融サービスの存在を意識せずにシームレスに利用できる体験を提供します。
アカウントアグリゲーション
複数の金融機関の口座情報を一元的に集約・表示するサービスです。家計簿アプリやPFM(Personal Financial Management)ツール、法人向けのキャッシュマネジメントツールが代表例です。
決済イニシエーション
銀行口座から直接決済を開始できるサービスです。クレジットカードを介さずに銀行間決済を実行でき、加盟店手数料の削減とリアルタイム決済の実現が可能です。
世界の規制動向
EU(PSD2/PSD3)
EUはPSD2(決済サービス指令第2版)でオープンバンキングを義務化し、欧州が市場全体の約36%のシェアを占めています。PSD3(後継規制)の策定も進んでおり、オープンファイナンス(銀行以外の金融データも対象)への拡張が議論されています。
日本
日本は金融庁が銀行法を改正し、電子決済等代行業者の登録制度を導入しました。PSD2に類似したフレームワークですが、EUのような強制的なAPI公開義務ではなく、銀行とTPP間の自主的な提携に基づく「ソフトな」規制アプローチを採用しています。銀行はサードパーティとの提携状況を公表する義務があります。
英国
英国はCMA(競争・市場庁)の主導で大手9銀行にオープンAPI公開を義務付け、世界で最も進んだオープンバンキング環境を構築しています。
企業にとってのオープンバンキング活用
中小企業の財務管理効率化
複数の銀行口座のデータをAPIで自動集約し、リアルタイムのキャッシュフロー可視化、会計ソフトとの自動連携、経費精算の効率化を実現します。
与信・融資のスピード化
銀行口座の取引データをAPIで取得し、AIが与信判断を自動化するオンラインレンディングが拡大しています。決算書の提出を待たずにリアルタイムの取引データで融資判断ができるため、中小企業の資金調達のスピードが飛躍的に向上します。
顧客向けサービスへの金融機能組込
自社のWebサービスやアプリに、決済、分割払い、保険、ポイント連携などの金融機能をBaaS/APIで組み込み、顧客体験を向上させます。組込型金融により、金融機関でない企業が金融サービスを提供できる時代になっています。
導入のステップ
ステップ1: ユースケースの特定
自社の業務課題やサービス改善ポイントから、オープンバンキングAPIの活用ユースケースを特定します。財務管理の効率化、決済手数料の削減、新規金融サービスの構築など、ビジネスインパクトの大きい領域を優先します。
ステップ2: 規制要件の確認
電子決済等代行業の登録要件、顧客データの取扱いに関する規制、セキュリティ要件を確認します。必要に応じて金融庁への登録手続きを進めます。
ステップ3: APIプロバイダー・BaaSの選定
銀行API(各行の直接API)またはアグリゲーションプラットフォーム(Plaid、TrueLayer等、日本ではマネーフォワード、freee等)を選定します。API の安定性、対応金融機関数、セキュリティ水準、料金体系を評価します。
ステップ4: セキュリティとコンプライアンスの確保
OAuth 2.0による認証・認可の実装、データ暗号化、監査ログの保持、インシデント対応体制の構築を行います。顧客のコンセント管理(同意の取得・撤回・管理)の仕組みも必須です。
ステップ5: ローンチとモニタリング
限定的なユーザーグループでパイロットを実施し、API連携の安定性とユーザー体験を検証した上で全面展開します。API呼び出しのエラー率、レスポンスタイム、利用状況を継続的にモニタリングします。
よくある質問(FAQ)
Q. オープンバンキングは安全ですか?
はい。オープンバンキングは顧客の明示的な同意に基づいて運営され、OAuth 2.0、TLS暗号化、トークンベースの認証など高度なセキュリティ技術で保護されています。銀行のログイン情報をサードパーティに直接共有する従来のスクリーンスクレイピングよりも、API経由のデータ共有は格段に安全です。規制当局の監督下で運営されるため、不正利用時の保護も整備されています。
Q. 日本のオープンバンキングはEUと比べてどの程度進んでいますか?
日本は銀行法改正により制度的な枠組みは整備されていますが、EUのPSD2のような強制的なAPI公開義務ではないため、銀行ごとのAPI対応状況にばらつきがあります。ただし、シンガポール・オーストラリアとともにアジア太平洋地域の62%の普及率を牽引する立場にあり、今後の成長が見込まれています。
Q. 非金融企業でもオープンバンキングを活用できますか?
はい。ECサイト、SaaS、マーケットプレイスなど非金融企業がオープンバンキングAPIを活用して、決済の効率化、顧客の財務状況に基づくサービス提供、組込型金融の実装などを行うケースが急増しています。自社で金融機能を一から構築する必要はなく、BaaSプロバイダーのAPIを利用することで短期間での実装が可能です。
まとめ
オープンバンキングは、API技術を通じて金融サービスのオープン化と革新を推進する世界的な潮流です。BaaS、組込型金融、アカウントアグリゲーション、決済イニシエーションなど多様なサービス形態が生まれ、市場はCAGR 24.8%で急成長しています。日本でも規制フレームワークの整備が進み、フィンテック企業と銀行の連携が拡大しています。金融DXの基盤として、オープンバンキングの活用を検討してみてください。
株式会社renueでは、フィンテック領域のDX推進やAPI戦略のコンサルティングを提供しています。オープンバンキングの活用についてお気軽にご相談ください。
