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熱処理の図面指示 完全ガイド|焼入れ・浸炭・窒化のHRC/HV硬度指定・JIS記号・硬度換算表【2026年版】

2026/4/13

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熱処理の図面指示 完全ガイド|焼入れ・浸炭・窒化のHRC/HV硬度指定・JIS記号・硬度換算表【2026年版】

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株式会社renue

2026/4/13 公開

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熱処理とは?図面で指示する理由

熱処理とは、金属を加熱・保持・冷却することで、硬度・強度・靭性などの機械的性質を制御する加工です。図面で熱処理を正しく指示しないと、部品の硬度不足による摩耗、靭性不足による破損など重大な不具合につながります。

熱処理の種類と図面指示方法

1. 焼入れ・焼戻し(調質)

最も一般的な熱処理。鋼を高温(オーステナイト領域)に加熱後、急冷(焼入れ)して硬化させ、その後再加熱(焼戻し)して靭性を回復させます。

項目図面指示例備考
JIS記号○の中にH(HQ+T)材料欄に「S45C ○H」と表記
硬度指示焼入焼戻し HRC 48~52必ず範囲で指定。単一値指定は不可
代表的な材質と硬度S45C:HRC 40~45 / SCM440:HRC 48~53材質により達成可能な硬度が異なる

重要(海外文献より):硬度は「48-52 HRC」のように必ず範囲で指定してください。「50 HRC」のような単一値は実務上達成不可能であり、熱処理業者に無理を強いることになります。JIS規格でも上下限値での指定が標準とされています。

2. 高周波焼入れ

部品の表面のみを硬化させる局所的な熱処理。摺動面や歯車の歯面に使用。

項目図面指示例
指示方法図面上に二点鎖線で焼入れ範囲を囲み、引き出し線で注記
注記例「破線部 高周波焼入れ HRC 50~55 有効硬化層深さ 1.5~2.5mm」
範囲の指定焼入れ開始点と終了点を寸法で明示

3. 浸炭焼入れ

低炭素鋼の表面に炭素を浸透させてから焼入れする処理。表面は硬く、内部は靭性を保持。歯車・カム・ピンに多用。

項目図面指示例
JIS記号HCQ(Carburize Quench)
注記例「浸炭焼入焼戻し 表面硬度 HRC 58~62 有効硬化層深さ 0.5~0.8mm」
非浸炭部の指示「ねじ部は浸炭防止のこと」(マスキング指示)
心部硬度「心部硬度 HRC 30~40」

重要(中国語技術文献より):浸炭品の図面では、浸炭させない部位(ねじ部・嵌合面等)を必ず明示してください。非浸炭部の指示漏れは、不必要に硬化した部分が後加工不能になる原因です。

重要(英語技術文献より):浸炭品は油焼入れまたは塩浴焼入れのみ。水焼入れは歪み・割れの原因になるため禁止です。

4. 窒化処理

窒素を鋼の表面に浸透させて硬化させる処理。浸炭より低温(500~600°C)で処理するため歪みが極めて少ない。

項目図面指示例
JIS記号HNT(Nitriding)
注記例「ガス窒化処理 表面硬度 HV 900以上 窒化層深さ 0.3~0.5mm」
適用材質SACM645(窒化専用鋼)、SCM435等のCr-Mo鋼

英語文献データ:ガス窒化は通常510~570°C(950-1060°F)で行い、心部硬度はHRC 41程度まで維持可能。浸炭に比べて歪みが大幅に少ないため、精密部品に適します。

5. 焼きならし・焼きなまし

処理名JIS記号目的図面指示例
焼きならし○の中にN組織の均一化・機械的性質の向上焼ならし HB 170~220
焼きなまし○の中にA軟化・被削性の改善焼なまし HB 170以下
応力除去焼鈍SR溶接・加工の残留応力除去応力除去焼鈍 600°C×2時間

硬度の表記方法と換算

硬度スケールの種類

スケール記号測定方法適用範囲
ロックウェルCHRCダイヤモンド圧子焼入れ鋼(HRC 20~68)
ロックウェルBHRB鋼球圧子軟鋼・非鉄金属(HRB 20~100)
ブリネルHB / HBW鋼球(超硬球)鋳鉄・非熱処理鋼(HB 100~450)
ビッカースHVダイヤモンド四角錐全範囲(薄膜・微小部も可)

硬度スケールの使い分け

  • 焼入れ品の表面硬度 → HRC で指示
  • 非熱処理品・鋳鉄の硬度 → HB(HBW)で指示
  • 窒化・浸炭の表面硬度 → HV で指示(薄い硬化層を正確に測定)
  • 素材の受入検査 → HB で指示

硬度の概算換算表

HRCHV(概算)HB(概算)引張強さ MPa(概算)
20238226740
30302286950
403923711250
454464211450
505134811700
55595-2000
60697--

※換算値はあくまで目安。正式な換算はJIS Z 2244等の換算表を使用してください。

代表的な材質×熱処理の組み合わせ

材質熱処理達成硬度用途
S45C焼入焼戻し(水冷)HRC 40~45軸・ピン・歯車
S45C高周波焼入れ表面 HRC 50~55摺動面・カム
SCM440焼入焼戻し(油冷)HRC 48~53高強度ボルト・軸
SCM420浸炭焼入焼戻し表面 HRC 58~62歯車・カム
SACM645窒化処理表面 HV 900以上精密金型・シリンダ
SKD11焼入焼戻しHRC 58~62冷間プレス金型
SKD61焼入焼戻しHRC 44~50ダイカスト金型
SUJ2焼入焼戻しHRC 58~64ベアリング
SS400焼入不可-炭素量不定のため熱処理非推奨

熱処理指示のよくある間違いと対策

間違い1:硬度を単一値で指定

「HRC 50」と指定すると、熱処理業者が困ります。実務上、±0のピンポイント硬度は達成不可能です。

対策:「HRC 48~52」のように必ず範囲で指定。幅は4~5HRC程度が標準的。

間違い2:SS400に焼入れを指示

SS400は炭素量が規定されていないため、焼入れしても硬度が安定しません。

対策:焼入れが必要な場合はS45C以上の機械構造用炭素鋼を選定。

間違い3:浸炭品の非浸炭部未指示

ねじ部や嵌合面まで浸炭すると、後加工ができなくなります。

対策:「ねじ部は浸炭防止(マスキング)のこと」と注記に明記。

間違い4:有効硬化層深さの未指示

表面焼入れ・浸炭・窒化で硬化層深さの指示がないと、処理条件が不定になります。

対策:「有効硬化層深さ 0.5~0.8mm」のように必ず範囲で指示。

熱処理と図面AI

熱処理の指示は注記テキストとして図面上に記載されるため、AI-OCRの重要な抽出対象です。

  • 熱処理条件の自動抽出:処理名(焼入焼戻し/浸炭/窒化)、硬度範囲(HRC/HV/HB)、硬化層深さを自動構造化
  • 材質と熱処理の整合性チェック:SS400に焼入れ指示がないか等の自動検証
  • コスト算出への活用:熱処理の種類と部品サイズから処理コストを自動概算

renueでは、熱処理指示を含む図面情報のAI読み取り・構造化ソリューションを提供しています。お気軽にご相談ください。

まとめ

  • 熱処理の図面指示には処理名・硬度範囲・硬化層深さを明記
  • 硬度は必ず範囲で指定(例:HRC 48~52)。単一値指定は不可
  • 焼入れ品はHRC、非熱処理品はHB、窒化・浸炭はHVで指示
  • 浸炭品は非浸炭部(マスキング箇所)を必ず明示
  • 高周波焼入れは図面上に二点鎖線で範囲を囲んで指示
  • SS400は焼入れ不可。熱処理が必要ならS45C以上を選定

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FAQ

よくある質問

熱処理の図面指示とは、金属部品に施す熱処理(焼入れ、浸炭、窒化等)の種類、硬度範囲、処理範囲を図面上に正確に記載する技術です。製造現場が図面だけで正しい熱処理を実施できるよう、JIS記号や硬度値を用いて明確に指示します。記載が不十分だと加工ミスや品質トラブルの原因になります。

処理名(焼入れ焼戻し)、目標硬度範囲(例:HRC 58〜62)、処理範囲(全体焼入れか部分焼入れか)、焼入れ方法の指定が必要な場合はその種類(高周波焼入れ等)を記載します。JIS B 0122に基づく熱処理記号(QT:焼入れ焼戻し等)も併記するのが正式です。

HRC(ロックウェル硬さCスケール)とHV(ビッカース硬さ)は異なる硬度測定法の単位です。HRCは主に焼入れ鋼(HRC 20以上)に使用し、HVは薄肉部品や浸炭層など広範囲の硬度に使用します。HRC 60はHV 697に相当するなど、硬度換算表を使って両者を変換できます。図面にはどちらの単位で指示するかを明記します。

浸炭深さ(有効硬化層深さ、例:0.5〜0.8mm)、表面硬度(例:HRC 58〜62)、芯部硬度(例:HRC 30〜40)、浸炭方法(ガス浸炭、真空浸炭等)の4項目を指示します。防炭処理(浸炭不要な部分のマスキング)が必要な範囲も図面上で明示することが重要です。

浸炭は鋼の表面に炭素を浸透させて焼入れする処理(高温900℃前後、高硬度が得られるが変形大)、窒化は窒素を浸透させて表面を硬化する処理(低温500〜600℃、変形が極めて小さいが処理時間が長い)です。精密部品や変形を嫌う部品には窒化、耐摩耗性を重視する歯車等には浸炭が選ばれます。

AIが部品の形状、材質、使用条件から最適な熱処理条件を自動推薦するシステムが実用化されています。過去の熱処理仕様データベースと連携し、類似部品の実績に基づいた硬度範囲や処理条件を自動提案します。ベテラン技術者の暗黙知をAIで形式知化し、設計者の経験差による品質のバラつきを軽減できます。

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