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はめあい公差とは?基本概念をわかりやすく解説
はめあい公差とは、穴と軸を組み合わせたときの「きつさ」や「ゆるさ」を図面上で規定するための寸法公差のことです。JIS B 0401-1:2016(ISO 286-1:2010等に一致対応)などで体系化されています。
穴に軸を挿入する際、「スムーズに入る」「圧入しないと入らない」「ガタなく回転する」といった要求は、はめあい公差の指定によって管理します。
はめあいの3種類
| 種類 | 特徴 | 代表的な用途 |
|---|---|---|
| すきまばめ | 穴の最小許容寸法が軸の最大許容寸法以上。最小すきまがゼロの組み合わせも含む | 滑り軸受、ガイドピン、自由回転部 |
| 中間ばめ | すきまになるか締まりになるか、個々の部品寸法次第 | 位置決めピン、軸受ハウジング(精密位置決め) |
| しまりばめ | 軸の最小許容寸法が穴の最大許容寸法以上。しめしろに応じて圧入・焼きばめ等で組み立てる | プレスフィット、歯車の軸固定、ベアリング圧入 |
穴基準方式と軸基準方式の違い
はめあいを設計する際、穴と軸のどちらを基準にするかで2つの方式があります。
穴基準方式(推奨)
穴の公差をH(下の寸法許容差がゼロ)に固定し、軸の公差クラスを変えることではめあいの種類を調整する方式です。
- メリット:穴加工はドリル・リーマ等の定寸工具で行うため、寸法調整が困難。軸側を旋盤で削って調整するほうが容易
- 選定の考え方:穴加工の難しさを踏まえて穴基準方式が一般的に使われる。ただし、無指定で自動的に適用されるという意味ではない(ミスミの設計解説)
- 工具の共通化:同じリーマで複数のはめあいに対応でき、工具コストを削減
軸基準方式
軸の公差をh(上の寸法許容差がゼロ)に固定し、穴の公差クラスを変える方式です。
- 使用場面:1本のシャフトに複数の部品を異なるはめあいで組み付ける場合
- 例:モーターシャフトに軸受・歯車・プーリを段階的に取り付けるケース
公差域クラスの読み方:記号の意味
はめあい公差の記号は「アルファベット+数字」の組み合わせで構成されます。
アルファベットの意味(公差域の位置)
- 大文字(A~ZC):穴の公差域。Hが基準(下の許容差 = 0)
- 小文字(a~zc):軸の公差域。hが基準(上の許容差 = 0)
- 記号は公差域の位置を表す。H・h、基準寸法を中心とするJS・jsなどの位置を区別し、具体的な許容差は寸法区分と等級を含めて表で確認する(記号の解説/穴の表/軸の表)
数字の意味(IT公差等級)
数字はIT(International Tolerance)公差等級を表し、製造精度のレベルを意味します。
| IT等級 | 精度レベル | 加工方法の目安 |
|---|---|---|
| IT5 | 高精度 | 精密研削、ホーニング |
| IT6 | 精密 | 研削、精密旋削 |
| IT7 | 標準精密 | リーマ仕上げ、精密フライス |
| IT8 | 一般 | 旋盤仕上げ、フライス加工 |
| IT9~IT11 | 粗加工 | ドリル加工、荒旋削 |
H7を選択肢とする理由
穴の公差クラスH7は、JIS B 0401-1:2016に基づく推奨組み合わせ表に掲載されています。選定時に検討できる点は以下の通りです。
- リーマ仕上げを検討できる:IT7はタンガロイの鋼加工を基準とした資料でリーマ等の仕上げ領域に含まれる。ただし、工具の振れ・被削材・切削条件で精度が変わるため、達成を保証するものではない(OSGの加工条件解説)
- 汎用性が高い:すきまばめ・中間ばめ・しまりばめのすべてに対応する軸側クラスが揃っている
- 標準品から工具を選べる場合がある:例えばイワタツールはリーマの標準在庫品と径公差を公開している。必要なH7穴を加工できるかは工具径・対象材・加工条件で確認し、価格・納期は個別に確認する
- ゲージによる検査:穴の呼び寸法・H7の許容寸法に適合する通り・止りプラグゲージを選び、検査条件とゲージの管理状態を確認する
- 推奨表を参照できる:ミスミの推奨組み合わせ表では、H7とf6・g6・h6・js6等の組み合わせを確認できる
穴基準H7 はめあい公差 一覧表
穴をH7に固定した場合の軸側クラスとの組み合わせ例を示します。選定には推奨組み合わせ表と穴・軸の寸法許容差表を併用してください。例えば呼び寸法3mm以下のH7/p6は、穴0~+10μm・軸+6~+12μmで、すきまとしめしろの両方が生じます。以下の用途例も寸法・材料・荷重・温度に応じた確認が必要で、転がり軸受の内外輪は軸受固有の許容差とメーカーの推奨に従います。
すきまばめ(穴の最小寸法 ≧ 軸の最大寸法)
| はめあい | すきまの大きさ | 用途例 |
|---|---|---|
| H7/d9 | 大きい | ランニングフィット。潤滑油を介した高速回転軸受 |
| H7/e8 | やや大きい | 大型軸受、クランクシャフト軸受 |
| H7/f7 | 中程度 | 一般的な滑り軸受、スピンドル |
| H7/g6 | 小さい | 精密滑り軸受、スライドフィット。手で滑らかに動く |
| H7/h6 | 最小すきま0。最大すきまは穴・軸の公差幅の和 | 位置決め。挿入性は形状誤差・温度・表面状態も確認 |
中間ばめ(すきままたは締まり)
| はめあい | 特徴 | 用途例 |
|---|---|---|
| H7/js6 | js6軸の公差域は基準寸法を中心とするが、H7穴とのすきまとしめしろは均等ではない。例:φ30では最大すきま27.5μm、最大しめしろ6.5μm(上記許容差表から計算) | カップリング、軸受ハウジング |
| H7/k6 | わずかに締まり寄り | 歯車のボス、プーリの固定(キー併用) |
| H7/m6 | やや締まり | 軸受内輪の固定、中荷重部品 |
| H7/n6 | 締まり寄り | 重荷重軸受、高精度位置決め |
しまりばめ(軸の最小寸法 ≧ 穴の最大寸法。寸法区分による例外に注意)
| はめあい | 締まりの大きさ | 用途例 |
|---|---|---|
| H7/p6 | 軽圧入 | 軸受の軽圧入、ブッシュ固定 |
| H7/r6 | 中圧入 | 軸受ハウジングへの圧入 |
| H7/s6 | 強圧入 | 強固な固定。歯車の軸固定でキーを省く場合は、最小しめしろ・接触長さ・材料・摩擦条件から許容伝達トルクと強度を検証する。H7/s6の指定だけでは省略を判断できない |
基準寸法別の寸法許容差一覧(H7・代表的な軸クラス)
以下はミスミ「穴の許容差」(JIS B 0401-2:2016より抜粋編集)のH7列と照合した代表的な寸法範囲の許容差です(単位:μm)。境界値は「超」と「以下」で区別します。
穴 H7 の寸法許容差
| 基準寸法(mm) | 上の許容差 | 下の許容差 | 公差幅 |
|---|---|---|---|
| 1超~3以下 | +10 | 0 | 10 |
| 3超~6以下 | +12 | 0 | 12 |
| 6超~10以下 | +15 | 0 | 15 |
| 10超~18以下 | +18 | 0 | 18 |
| 18超~30以下 | +21 | 0 | 21 |
| 30超~50以下 | +25 | 0 | 25 |
| 50超~80以下 | +30 | 0 | 30 |
| 80超~120以下 | +35 | 0 | 35 |
| 120超~180以下 | +40 | 0 | 40 |
| 180超~250以下 | +46 | 0 | 46 |
図面への記入方法
はめあい公差の図面への記載パターンを紹介します。
パターン1:公差クラス記号のみ
最もシンプルな表記です。
- 穴:φ50H7
- 軸:φ50g6
- 組み合わせ:φ50H7/g6(穴/軸の順)
パターン2:公差クラス記号+数値併記
加工者・検査者が許容差を即座に確認できるよう数値を添えます。以下の数値単位はmmで、穴の表と軸の表のμmから換算しています。
- 穴:φ50H7(+0.025/0)
- 軸:φ50g6(-0.009/-0.025)
パターン3:数値のみ
はめあい記号を使わず、許容差の数値だけで指示する方法です。受注生産品や特殊な公差設定で使用します。
- 穴:φ50 +0.025/0
- 軸:φ50 -0.009/-0.025
はめあい選定のよくある間違いと対策
間違い1:とりあえずH7/h6を指定する
H7/h6は寸法公差内であれば最小すきまがゼロで、寸法公差だけから負のすきまにはなりません。ただし、形状誤差・ばり・温度差や寸法公差の逸脱によって、組み立てに支障が出る場合があります。許容寸法によるはめあいと、これらの要因を区別してください。
対策:確実なすきまが必要ならH7/g6、軽い力での組立を想定する場合もH7/js6は中間ばめのため、公差計算で確認しましょう。
間違い2:穴と軸のIT等級の差が大きすぎる
H7/d11のように軸の公差幅が広い組み合わせでは、すきまの変動幅も広くなります。その範囲が機能上の許容範囲を超える場合に問題となり、等級差だけで不適切とは決まりません。
対策:推奨組み合わせ表にはH7/g6・H7/h6などが示されていますが、すべての製品に「等級差1~2以内」を適用する規則ではありません。必要な最大・最小すきま、しめしろと加工能力から選びます。
間違い3:温度変化を考慮しない
例えばアルミ製の穴側部品に鋼製の軸を組み合わせ、双方が同程度に昇温する場合、自由熱膨張では穴側の径の増加が大きくなり、しめしろが減る方向に働きます。逆にアルミが軸側なら傾向が変わるため、部品構成と各部の温度を分けて考えます(NTNの内径・外径の熱膨張式と材料係数表を用いた考え方)。
対策:異種金属の組み合わせや高温環境では、温度変化による寸法変動を計算に入れましょう。
はめあいと図面AI:デジタル活用のポイント
はめあい公差は「φ50H7/g6」のように記号・数字・スラッシュが組み合わさった表記のため、紙図面からの自動読み取りでは誤認識が起きやすい領域です。
AI-OCR技術では以下の工夫により精度を向上させています。
- 公差記号パターンの学習:はめあい記号の構文ルール(大文字=穴、小文字=軸)をAIに組み込み、文脈で補正
- 数値との自動照合:読み取った記号をJIS公差表と照合し、矛盾があればフラグを立てる
- 類似図面の検索活用:同じはめあいを使った過去図面を検索し、設計の妥当性確認に活用
図面のデジタル化やAI-OCRによるはめあい公差の自動読み取りについては、renueにお気軽にご相談ください。
まとめ
はめあい公差は、穴と軸の組み合わせ精度を管理するための重要な設計ツールです。
- はめあいはすきまばめ・中間ばめ・しまりばめの3種類
- 穴基準方式(H固定)は、穴加工の難しさを踏まえた一般的な選択肢。用途に応じて軸基準方式も検討する
- H7ではリーマ仕上げや標準工具を検討でき、軸側の選択肢もある。実現精度と工具の適合性は加工条件ごとに確認する
- よく使う組み合わせ:H7/g6(精密すきまばめ)、H7/k6(中間ばめ)、H7/p6(軽圧入)
- 図面には記号のみ、記号+数値併記、数値のみの3パターンがある




