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損害保険の損害調査報告書作成をAIで効率化する方法|事故情報×写真からLLMが報告書ドラフトを自動生成
損害保険会社の保険金サービス部門において、損害調査報告書の作成は最も時間と専門知識を要する業務の一つです。事故現場の写真分析、当事者からの聞き取り内容の整理、損害額の算定根拠の記載——この一連のプロセスをマルチモーダルLLM(テキスト+画像を同時処理できるAI)で効率化する動きが加速しています。NECの映像×LLM技術やリコー×損保ジャパンのマルチモーダルLLM共同開発など、業界での実装が進んでいます。
業務の詳細フロー(現状の手作業)
ステップ1:事故受付・初動対応
契約者からの事故報告を受付し、事故の概要(日時・場所・当事者・損害の概要)を記録します。必要に応じて、損害調査員(アジャスター)や鑑定人の派遣を手配します。
ステップ2:現場調査・写真撮影
事故現場または損害物(車両、建物等)の調査を実施し、損害状況を写真・動画で記録します。車両事故であれば損傷箇所の角度別写真、建物被害であれば被害範囲の全体像と詳細写真を撮影します。
ステップ3:当事者からの聞き取り
事故の当事者、目撃者、関係者からの聞き取りを行い、事故の経緯・原因を確認します。聞き取り内容をメモに記録し、後の報告書に反映します。
ステップ4:損害額の算定
修理見積書の精査、部品価格の確認、工賃の妥当性チェック等を行い、保険金として支払うべき損害額を算定します。車両の場合は修理費と時価額の比較(全損判定)も必要です。
ステップ5:損害調査報告書の作成
上記の調査結果を統合し、損害調査報告書を作成します。事故の概要、調査結果、損害認定の根拠、支払い推奨額、注意事項等を記載します。この報告書に基づいて保険金の支払い判断が行われます。
課題・ペインポイント
- 報告書作成の時間:写真の選定・整理、聞き取りメモの構造化、損害認定根拠の記載に多大な時間を要する
- 写真の分析負荷:数十枚の写真から損害状況を正確に読み取り、文章で説明する作業が煩雑
- 品質のばらつき:調査員の経験により報告書の分析の深さ、記載の正確性にばらつきが生じる
- 大規模災害時の対応:台風・地震等の大規模災害時に大量の損害調査が集中し、報告書作成が追いつかない
- 不正請求の見極め:報告書作成と並行して、損害の不自然さや不正請求の兆候を見抜く必要がある
AI化のアプローチ(マルチモーダルLLMによる実装イメージ)
入力データの設計
- 事故受付データ:事故日時、場所、当事者情報、事故種別、保険契約情報
- 写真・動画:損害状況の写真(複数枚)、ドライブレコーダー映像(車両事故の場合)
- 聞き取りメモ:当事者・目撃者からの聞き取り内容(テキストまたは音声の書き起こし)
- 修理見積書:修理工場から提出された見積書のデータ(OCRで自動抽出)
- 報告書テンプレート:自社の損害調査報告書のフォーマット、記載基準
LLMへの指示(プロンプト設計の考え方)
- 役割設定:「あなたは損害保険会社の損害調査報告書作成支援AIです。以下の事故情報、写真、聞き取りメモに基づき、損害調査報告書のドラフトを作成してください」
- 写真分析の指示:「添付の写真を分析し、損傷箇所、損傷の程度(軽微/中程度/重度)、損傷の特徴(擦り傷/凹み/破損等)を記述してください」
- 構成の指定:「①事故概要、②調査結果(現場状況・損害状況の写真分析・当事者からの聞き取り要約)、③損害認定(損害額の算定根拠)、④過失割合の検討材料、⑤注意事項・所見の構成で作成してください」
- 不正請求のフラグ:「写真と聞き取り内容に不整合がある場合、または損害の状況に不自然な点がある場合は、注意事項として明記してください」
人間が判断すべきポイント
- 損害認定額の最終決定:保険金として支払う金額の最終判断は損害調査員・査定担当者が行う
- 過失割合の判断:事故の過失割合の判断には法的知識と判例の理解が必要で、人間の専門判断が不可欠
- 不正請求の最終判定:AIがフラグを立てた案件の不正の最終判定は、特別調査チーム(SIU)が行う
- 顧客への説明:損害認定結果の顧客への説明は対面・電話で人間が行う
他業種の類似事例
- 建設業の施工管理報告書:現場写真+作業メモからLLMが日報・品質管理記録のドラフトを自動生成
- 不動産の物件査定:物件写真+周辺データからAIが査定レポートを自動作成
- 銀行の担保評価:不動産写真+登記情報+市場データからAIが担保評価レポートを生成
導入ステップと注意点
ステップ1:写真分析AIの構築(4〜8週間)
損害写真からの損傷箇所自動検出・損傷度判定のAIモデルを構築します。マルチモーダルLLMを活用し、写真の説明文を自動生成します(出典:NEC "映像×LLMによる報告書作成自動化")。
ステップ2:報告書テンプレートとプロンプトの設計(2〜3週間)
自社の報告書フォーマットをLLMのプロンプトに落とし込み、事故種別(車両事故/火災/自然災害等)ごとのテンプレートを設計します。
ステップ3:パイロット運用(4〜8週間)
一部の損害調査チームでAIドラフトと従来の手作業報告書の品質を比較します。損害認定の正確性と記載の網羅性を重点的に検証します(出典:損保ジャパン×リコー "マルチモーダルLLM共同開発")。
注意点
- 写真の機密性:事故現場の写真は個人情報・プライバシーに関わるため、適切なセキュリティ管理が必要
- AIの判断の限界:写真だけでは判断できない損害(内部損傷、経年劣化との区別等)があり、現場確認は引き続き必要
- 法的証拠としての報告書:損害調査報告書は法的手続きの証拠として使用される場合があり、AIドラフトの正確性は人間が保証する必要がある
Renue視点:専用ツールではなく汎用LLMで実現する理由
損害調査報告書の作成は「写真を見る→損害を記述する→聞き取りを整理する→報告書を書く」というマルチモーダルな言語処理です。Claude等の汎用マルチモーダルLLMは、写真の分析とテキスト生成を同時に行う能��を持っています。専用の損害査定AIシステムに比べ、汎用LLMは導入コストが低く、プロンプトの修正で柔軟に対応できます。「調査員がどのように写真を見て報告書を書いているか」を言語化すれば、それはLLMの仕事にできます。
まとめ
損害保険の損害調査報告書作成は、マルチモーダルLLMを活用することで、写真分析から報告書ドラフト生成まで一貫した自動化が可能です。NECの映像×LLM技術やリコー×損保ジャパンのマルチモーダルLLM共同開発など、業界での実装が進んでいます。ただし、損害認定額の最終決定、過失割合の判断、不正請求の最終判定は完全に損害調査員・査定担当者の専門性の領域です。
