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会計事務所・監査法人にはどんな部署がある?4部門の業務内容とAI活用を解説
会計事務所と監査法人は「数字を扱うプロフェッショナル集団」ですが、その業務範囲は記帳代行から国際的なM&Aアドバイザリーまで多岐にわたります。特にBig4(あずさ/EY新日本/トーマツ/PwCあらた)と呼ばれる大手監査法人は、監査・税務・アドバイザリーの3本柱で総合的なサービスを展開しています。
本記事では、会計事務所・監査法人に共通する主要4部門の業務内容を具体的に解説し、AI活用の可能性を分析します。EY新日本有限責任監査法人は2026年1月に生成AIを組み込んだ書類解析システム「Document Intelligence Platform」の本格稼働を開始し、全被監査先3,805社に対象を拡大しました(出典:EY Japan公式ニュースリリース 2026年1月28日)。
会計事務所・監査法人の組織構造
会計事務所・監査法人の組織は規模によって大きく異なります。
- Big4監査法人:監査部門、税務部門、アドバイザリー部門の3本柱。数千名規模の専門家集団
- 中堅監査法人・会計事務所:監査と税務を中心に、一部アドバイザリーも提供
- 中小会計事務所・税理士事務所:記帳代行、税務申告、経営相談が中心。税理士1〜数名と職員で構成
本記事では4つの主要部門に整理して解説します。
会計事務所・監査法人の主要4部門と業務内容
1. 監査部門
業務内容
監査部門は、上場企業等の財務諸表が適正に作成されているかを検証し、監査意見を表明する部門です。会計監査は監査法人・公認会計士の独占業務であり、監査法人の業務の約9割を占めます。
- 監査調書の作成:監査手続の実施内容と結果を記録する文書。監査証拠の基盤となる
- 勘定科目分析:売上高、売掛金、棚卸資産などの勘定科目を分析的手続で検証
- 証憑突合:帳簿の記録と請求書・契約書・銀行残高証明書などの原始証憑を照合
- 内部統制評価(J-SOX):内部統制報告制度に基づく、統制の整備・運用状況の評価
- 分析的実証手続:財務データの趨勢分析、比率分析、回帰分析による異常値の検出
- 監査意見書のドラフト:無限定適正意見、限定付適正意見等の監査報告書の起案
AI化の可能性
EY新日本有限責任監査法人は2026年1月、生成AIを組み込んだ「Document Intelligence Platform」を全被監査先3,805社に展開しました。このシステムは証憑の内容読取→会計データとの突合→調書作成までを一貫して自動処理します(出典:EY Japan公式ニュースリリース)。
業界全体では、AI監査ツールの導入によりBig4各社の異常検知精度が30%向上しているとの報告があります(出典:Journal of Accountancy 2026年2月号)。従来のサンプルベース(取引の5〜10%を抜き取り検査)から、AIによる全件レビュー(100%母集団検証)への転換が進んでいます。
- 証憑突合の自動化:請求書・契約書をマルチモーダルAIが読み取り、会計データと自動照合。不一致のみ人間がレビュー
- 分析的手続の高度化:全取引データをAIが分析し、統計的に異常なパターンを自動検出
- 監査調書のドラフト生成:監査手続の結果データからLLMが調書の骨子を自動作成
- 内部統制テストの効率化:統制テストの証跡をAIが自動収集・整理し、テスト結果をLLMが文書化
2. 税務部門
業務内容
税務部門は、法人・個人の税務申告、税務相談、国際税務のアドバイザリーを行う部門です。Big4ではそれぞれ税理士法人(デロイト トーマツ税理士法人、PwC税理士法人等)を擁しています。
- 確定申告書の作成:法人税、消費税、所得税、相続税などの申告書の作成・提出
- 税務相談回答書の作成:クライアントからの税務上の疑問に対する回答と根拠の文書化
- 移転価格文書化:グループ間取引の価格設定が独立企業間原則に適合していることの文書化(ローカルファイル、マスターファイル、CbCR)
- 税務調査対応:税務当局の調査への対応、修正申告の検討
- 組織再編税務:合併、分割、株式交換等のスキーム検討と税務上の取扱い
AI化の可能性
PwC Japanは生成AIを活用して社内文書から課税関係の検討を要する取引を効率的に整理し、税務申告書の品質向上を図るサービスを提供しています(出典:PwC Japan公式)。
- 税務相談の回答ドラフト:相談内容+関連税法をLLMが照合し、回答書の骨子を自動生成。過去の相談事例をRAGで参照
- 申告書の自動チェック:申告書の記載内容と会計データの整合性をLLMが自動検証
- 移転価格文書の作成支援:取引データと比較対象企業のデータからLLMが文書の構成要素を整理
- 税制改正の影響分析:法改正内容をLLMが要約し、クライアントへの影響範囲を自動評価
3. アドバイザリー部門
業務内容
アドバイザリー部門は、M&A、事業再生、内部統制構築など、監査・税務以外の専門的なコンサルティングサービスを提供する部門です。
- 財務DD(デューデリジェンス):M&Aにおける買収対象企業の財務精査。正常収益力の算定、運転資本の分析、簿外債務の洗い出し
- バリュエーション:DCF法、類似会社比較法、時価純資産法による企業価値の算定
- 事業再生計画の策定:経営不振企業の財務・事業の再建計画の立案
- 内部統制構築支援:J-SOX対応のための内部統制の設計・導入・評価支援
- IFRS導入支援:日本基準からIFRS(国際財務報告基準)への移行支援
AI化の可能性
- 財務DDの異常値検出:決算書データをLLMに入力し、通常と異なるパターン(関連当事者取引、期末集中売上等)を自動検出し分析コメントを生成
- バリュエーションの前提条件整理:類似会社の財務データ収集・マルチプル算出をLLMが自動化
- 事業再生計画のドラフト:財務データと事業分析結果からLLMが再建計画の骨子を自動構成
4. 記帳代行・BPO部門
業務内容
中小会計事務所の主力業務であり、大手でもBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)として提供されるサービスです。
- 仕訳入力:領収書・請求書・通帳などの原始証憑から会計ソフトに仕訳データを入力
- 月次試算表の作成:毎月の仕訳を集計し、貸借対照表・損益計算書の試算表を作成
- 消費税区分の判定:取引ごとの課税/非課税/免税/不課税の判定
- 年次決算整理:減価償却費の計上、引当金の計算、経過勘定の処理
- 請求書・領収書の処理:インボイス制度対応の適格請求書の確認・保存
AI化の可能性
AI-OCRの文字認識率は95%以上に達しており、仕訳入力の負担を大幅に軽減できます。日本ではLayerXの「バクラク」が経費精算・請求書処理・法人カード管理を自動化するプラットフォームとして15,000社以上に導入されています(出典:DualEntry "AI in Accounting 2026")。
- 仕訳の自動生成:AI-OCRで請求書・領収書を読み取り→勘定科目を自動判定→仕訳データを自動生成
- 消費税区分の自動判定:取引内容からLLMが課税区分を自動判定。インボイス制度の適格要件チェックも自動化
- 月次レポートの自動生成:試算表データからLLMが経営者向けの月次コメンタリーを自動作成
会計事務所・監査法人のAI活用|業界全体の動向
Journal of Accountancy(2026年2月号)は、AIが監査を変革しつつある状況を「従来のサンプルベースから全件レビューへの転換」と表現しています(出典:Journal of Accountancy)。税理士業務においては、定型業務の自動化が進む一方で、業務の核は高度な専門知識に基づくコンサルティングへシフトすると予測されています。
| 企業・機関 | 取り組み内容 | 効果 |
|---|---|---|
| EY新日本 | Document Intelligence Platform本格稼働(出典:EY Japan公式) | 証憑突合→調書作成の自動化、3,805社に展開 |
| PwC Japan | 生成AIで税務申告品質向上(出典:PwC Japan公式) | 課税取引の効率的整理 |
部門別AI化ポテンシャル一覧
| 部門 | AI化ポテンシャル | 最も効果的なAI活用 | 導入の難易度 |
|---|---|---|---|
| 監査 | ★★★★★ | 証憑突合自動化・全件レビュー | 中〜高 |
| 税務 | ★★★★ | 申告書チェック・税務相談回答 | 中 |
| アドバイザリー | ★★★★ | 財務DD・バリュエーション支援 | 中 |
| 記帳代行・BPO | ★★★★★ | AI-OCR仕訳自動生成 | 低 |
汎用LLMで会計・監査業務を変革する|Renue視点
会計事務所・監査法人のAI活用では、DataSnipperやTrullionのような専用監査AIツールが注目されています。しかし、会計・監査業務の大部分は「数字を集める」「整合性を検証する」「根拠を文書化する」という、データ処理と文書作成の組み合わせです。
これらの業務は専用ツールに頼らずとも、汎用LLMと業務プロセスの構造化で効率化できます。
- 証憑→仕訳の自動化パイプライン:AI-OCRで原始証憑を読み取り→LLMが勘定科目を判定→仕訳データを自動生成→人間が異例事項のみレビュー
- 監査手続の構造化:「どの勘定科目に、どの監査手続を適用し、何を確認するか」を構造化してLLMに指示。調書のドラフトを自動生成
- 税務知識のRAG化:税法・通達・判例をRAGシステムに格納し、「この取引の税務上の取扱いは?」にLLMが即座に回答
会計・監査業務では「正確性」と「証拠の追跡可能性(トレーサビリティ)」が最重要です。AIが生成した結論には必ず根拠(参照した法令・証憑・計算過程)を明示させ、人間が検証できる仕組みが不可欠です。あるAIコンサルティング企業では、AIによるデータ処理の監査ログ(いつ、誰が、何の処理を実行したか)を自動記録する仕組みを構築しており、AI活用と監査品質の両立を実現しています。
まとめ
会計事務所・監査法人は、監査・税務・アドバイザリー・記帳代行の4部門で構成されています。特にAI化のインパクトが大きいのは以下の2領域です。
- 監査:証憑突合→調書作成の自動化(EY新日本がDocument Intelligence Platformを3,805社に展開)
- 記帳代行・BPO:AI-OCR+LLMによる仕訳自動生成(文字認識率95%超で実用レベルに到達)
これらの部門における個別業務のAI化アプローチについては、今後の記事で掘り下げて解説します。
