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保険会社にはどんな部署がある?生保・損保の8部門と業務内容を解説
保険会社の組織は、「保険を売る」営業部門だけでなく、商品を設計する数理部門、リスクを評価する引受査定部門、事故対応を行う損害サービス部門など、高度に専門化された部署で構成されています。
本記事では、生命保険会社・損害保険会社に共通する主要8部署の業務内容を具体的に解説し、各部署におけるAI活用の可能性を分析します。三井住友海上では保険金支払業務で通話をリアルタイムテキスト化・自動要約するシステムを構築しており、保険業界のAI活用は実用段階に入っています。SAS社は2025年12月のプレスリリースで、保険業界におけるAIを「新しいオペレーティングシステム」と位置づけ、引受・査定・顧客対応などのコア業務でAIが標準的に活用される時代が到来したと発表しています(出典:SAS 2025年12月プレスリリース)。
保険会社の組織構造|製販分離と3つの機能
保険会社の部署は大きく3つの機能に分類できます。
- 商品・数理機能:商品開発、アクチュアリー(数理)など、保険商品の設計と価格決定を行う部門
- 営業・販売機能:代理店支援、直販営業、マーケティングなど、保険を販売する部門
- 引受・保全・支払機能:引受査定、保険金支払(損害サービス)、契約管理など、保険の運営を担う部門
保険会社の主要8部署と業務内容
1. 商品開発部門
業務内容
商品開発部門は、新しい保険商品を設計し、金融庁の認可を取得する部門です。アクチュアリー(数理専門職)と連携して商品の収益性とリスクを設計します。
- 保険商品の制度設計:補償内容、支払条件、免責事項などの商品スキームを設計
- 約款の作成:法的に有効な保険契約の条件を定義する文書の起草
- 料率算出:アクチュアリーと連携し、リスクに見合った保険料率を算出
- 金融庁認可申請書類の作成:新商品の認可取得に必要な申請書類一式の準備と折衝
- 収益検証:商品発売後の収益性をモニタリングし、必要に応じて料率改定を検討
AI化の可能性
- 約款ドラフトの自動生成:既存約款テンプレート+新商品の補償設計からLLMがドラフトを作成
- 認可申請書類の作成支援:過去の認可事例とLLMを組み合わせ、申請書類の骨子を自動生成
- 競合商品の比較分析:各社の商品パンフレットをLLMが読み込み、補償内容の差分を表形式で整理
2. 営業部門(代理店支援・直販)
業務内容
保険会社の営業は、自社の営業職員による直販と、代理店を通じた販売の2チャネルがあります。特に損保は代理店経由の販売が中心です。
- 代理店研修資料の作成:新商品の販売ポイント、事務手続きの変更点などを解説する資料
- 販売実績分析:チャネル別・商品別・地域別の販売データの集計と分析
- キャンペーン企画:販売促進施策の企画と効果測定
- 募集文書の作成・審査:保険業法に準拠した広告・パンフレットの作成と法令チェック
AI化の可能性
保険営業のAI化では、単なる効率化を超えて、顧客一人ひとりのリスクプロファイルに基づいた最適な保障設計をAIが提案するアプローチが注目されています。ある保険AIエージェントの開発では、トップ営業パーソンの提案ロジック(保障と資産形成の優先順位判断、顧客説得手法)をAIに実装し、支店営業では実現困難な高度な提案を自動化する取り組みが進んでいます。
- 研修資料の自動生成:新商品情報+改定ポイントからLLMが代理店向け研修コンテンツを作成
- 販売実績のインサイト抽出:販売データをLLMが分析し、好調/不調の要因と改善提案を自動レポート
- 募集文書の法令チェック:保険業法の禁止表現をLLMが自動検出し、修正案を提示
3. 引受査定部門(アンダーライティング)
業務内容
引受査定部門は、保険の申込みを受け付ける際に、リスクを評価して引受の可否・条件を判断する部門です。
- リスク評価:申込者の健康状態(生保)、物件・事業内容(損保)に基づくリスク判定
- 医的査定(生保):診断書、健康診断結果、告知書の内容を精査し、引受条件を決定
- 企業審査(損保):法人の事業リスク、損害履歴、安全対策を評価
- 再保険手配:自社で引き受けるリスクを分散するため、再保険会社への出再条件を交渉
- 提出書類の審査:申込書類の不備チェック、告知内容の整合性確認
AI化の可能性
引受査定はAI化の効果が最も顕著に現れる領域です。Insurtechメディア「Vantage Point」の2026年トレンドレポートでは、AIによる引受のストレートスルー処理(人手を介さない自動完結)が急速に拡大し、査定のリードタイムが大幅に短縮されていると報告されています(出典:Vantage Point "Insurtech Trends 2026")。
- 診断書・告知書のAI読解:マルチモーダルAI+OCRで多種多様な書式の診断書を読み取り、リスク判定に必要な情報を構造化
- 引受判断の一次スクリーニング:告知内容と引受基準をLLMが照合し、「引受可」「条件付引受」「要精査」に自動分類
- 再保険条件の比較分析:再保険会社からの見積条件をLLMが比較表にまとめ、最適な出再案を提示
4. 保険金支払部門(損害サービス/クレーム)
業務内容
保険金支払部門は、事故や災害が発生した際に、保険金の支払いを行う部門です。損保では「損害サービス部門」、生保では「給付金・保険金支払部門」と呼ばれます。
- 事故受付:契約者からの事故報告を受け付け、案件情報を登録
- 損害調査報告書の作成:事故状況の調査、損害額の算定、過失割合の判断
- 支払可否の判断:約款の補償条件と事故内容を照合し、支払対象かを判定
- 不正請求の検知:過去の不正パターンとの照合、矛盾する証言・証拠の検出
- 示談交渉書類の作成(損保):相手方との示談に必要な書面の作成
AI化の可能性
三井住友海上火災保険では、保険金支払業務において顧客との通話がリアルタイムでテキスト化され、自動で要約・記録されるシステムを構築しています(出典:AI経営総合研究所)。
- 通話のリアルタイム要約:事故報告の電話内容をAIがテキスト化→要約→案件情報として自動登録
- 損害調査報告書のドラフト:事故写真+事故状況テキストからLLMが報告書の骨子を自動生成
- 不正請求の検知:過去の不正事例パターンとテキスト情報をAIが照合し、不審な点をフラグ
- 約款との照合自動化:事故内容と保険約款の補償条件をLLMが突合し、支払対象かを一次判定
5. 数理部門(アクチュアリー)
業務内容
数理部門は、統計学・確率論の専門家であるアクチュアリーが所属し、保険料の算出やリスクの定量評価を行う部門です。
- 責任準備金の計算:将来の保険金支払いに備えて積み立てるべき金額を算出
- 収益性分析:商品別・チャネル別の利益分析、EV(エンベディッド・バリュー)の算出
- 商品プライシング:死亡率・発生率のデータ分析に基づく保険料率の設定
- ERM(統合的リスク管理):保険引受リスクと資産運用リスクの統合管理
- 決算・予算策定:保険数理の観点からの決算見込み、予算策定、将来収益予測
AI化の可能性
アクチュアリー業務の多くの時間は、分散したデータソースからのデータ収集・加工に費やされています。生成AIによるこのボトルネックの解消は、数理業務の効率化において大きなインパクトをもたらします。
- データ収集・加工の自動化:分散したデータソースからLLMがデータを収集・整形し、分析可能な形式に変換
- 分析レポートのドラフト生成:計算結果と分析コメントをLLMが組み合わせてレポートを自動構成
- 規制報告書の定型部分自動化:ソルベンシー・マージン比率等の規制報告の定型セクションをLLMが作成
6. コンプライアンス部門
業務内容
- 保険業法対応:募集規制、情報提供義務、顧客本位の業務運営に関する法令遵守
- 募集文書審査:広告、パンフレット、提案書の法令準拠チェック
- 苦情分析:顧客からの苦情を分類・傾向分析し、業務改善に反映
- 内部監査対応:監査部門への資料提出と指摘事項への対応
AI化の可能性
- 募集文書の自動審査:保険業法の禁止表現リストとLLMを組み合わせた自動チェック
- 苦情の自動分類・傾向分析:大量の苦情テキストをLLMが分類し、増加傾向にあるテーマを検出
- 法令改正の影響分析:改正内容をLLMが要約し、自社の業務・規程への影響を自動評価
7. 契約管理部門(保全)
業務内容
- 契約内容変更処理:住所変更、受取人変更、特約の付加・解約
- 保全手続き:保険料払込方法の変更、契約の復活、解約返戻金の計算
- 満期管理:満期到来の通知、更新手続き、満期金の支払い
- 契約者通知の作成:各種案内文書、契約内容確認通知の作成・発送
AI化の可能性
- 変更手続きの自動処理:申請内容の読み取り→整合性チェック→システム反映の自動化
- 契約者通知の個別最適化:契約内容に応じたパーソナライズされた通知文面をLLMが生成
- 照会対応のAIチャットボット:契約内容に関する問い合わせにAIが24時間対応
8. メディカルアフェアーズ部門(生保)
業務内容
- 医学的知見の収集・分析:医学論文、疫学データ、治療ガイドラインの情報収集
- 査定基準の見直し:医療の進歩に合わせた引受基準・支払基準の更新
- 医事照会への回答:査定部門からの医学的な照会に対する専門的回答
AI化の可能性
- 医学文献のサーベイ自動化:PubMed等から関連論文をLLMが検索・要約・トレンド分析
- 査定基準の改定ドラフト:新しい医学知見に基づき、引受基準の改定案をLLMが提案
保険業界のAI活用|業界全体の動向
SAS社は2025年12月のプレスリリースで、保険業界におけるAIを「新しいオペレーティングシステム」と位置づけました(出典:SAS 2025年12月プレスリリース)。引受・査定・顧客対応といったコア業務でAIが標準ツールとなり、保険業界のオペレーション全体が変革されつつあります。
| 企業 | 取り組み内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 三井住友海上 | 保険金支払業務で通話リアルタイムテキスト化・自動要約(出典:AI経営総合研究所) | 応対記録の自動化 |
| グローバル先進事例 | 引受査定のストレートスルー処理拡大(出典:Vantage Point 2026) | 査定リードタイムの大幅短縮 |
| SAS | 保険AIを「新OS」と位置づけ(出典:SASプレスリリース) | 業界標準の変革 |
部署別AI化ポテンシャル一覧
| 部署 | AI化ポテンシャル | 最も効果的なAI活用 | 導入の難易度 |
|---|---|---|---|
| 商品開発 | ★★★ | 約款ドラフト・競合分析 | 中 |
| 営業(代理店支援) | ★★★★ | 研修資料・実績分析・法令チェック | 低〜中 |
| 引受査定 | ★★★★★ | 診断書AI読解・引受スクリーニング | 中 |
| 保険金支払 | ★★★★★ | 通話要約・報告書ドラフト・不正検知 | 中 |
| 数理(アクチュアリー) | ★★★ | データ加工・分析レポート | 中〜高 |
| コンプライアンス | ★★★★ | 募集文書審査・苦情分析 | 低〜中 |
| 契約管理(保全) | ★★★★ | 変更手続自動化・チャットボット | 低 |
| メディカルアフェアーズ | ★★★ | 文献サーベイ・査定基準改定 | 中 |
汎用LLMで保険業務を変革する|Renue視点
保険業界のAI活用では、「AIスコアリングモデル」や「不正検知エンジン」のような専用システムに注目が集まりがちです。しかし、保険会社の業務の実態を見ると、約款の作成、査定意見書の作成、損害調査報告書の執筆、規制報告書の作成など、「文書を書き、判断の根拠を記録する」業務が大きな割合を占めています。
これらの業務は、保険業専用のAIツールではなく、汎用LLMで十分に効率化できます。特に保険業界で効果が高いのは以下のアプローチです。
- トップ営業の暗黙知をAIに実装する:優秀な営業パーソンが持つ「この顧客にはまず保障を提案し、その後で資産形成を提案する」という判断ロジックをプロンプトとして構造化。AIエージェントが高度な提案を自動生成できるようになります
- 約款・法令をRAGで参照可能にする:保険約款と関連法令をRAGシステムに格納し、査定時に「この事故は約款のどの条項で補償されるか」をAIが即座に検索・回答
- 査定プロセスを言語化→LLMに委任する:「診断書のこの記載は引受拒否事由に該当する」という査定判断をルール化し、LLMによる一次スクリーニングを実現
保険業界はドキュメント量が膨大であるがゆえに、「業務の言語化→LLM実行→人間レビュー」のフレームワークの効果が特に高い業界です。
まとめ
保険会社は、商品開発からメディカルアフェアーズまで、8つの専門部署で構成されています。特にAI化のインパクトが大きいのは以下の3領域です。
- 引受査定:診断書のAI読解と引受スクリーニングの自動化(グローバルでストレートスルー処理が急速拡大)
- 保険金支払:通話テキスト化・損害報告書の自動生成(三井住友海上のリアルタイム要約事例)
- コンプライアンス:募集文書の自動法令チェック・苦情傾向分析
これらの部署における個別業務のAI化アプローチについては、今後の記事で掘り下げて解説します。
