株式会社renue
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工程表の遅れを数値化するとき、予定出来高が60%、実績出来高が40%なら、週次報告にはどう書けばよいだろうか。「20%遅れ」「4日遅れ」と言い換える前に、分母と単位を確かめたい。同じ数字でも、全体に対する進捗率の差と、今週までの予定に対する不足割合では答えが変わる。
本稿では、各担当者から集めた進捗を工程表の全体欄へ集計するPMO担当者に向けて、出来高の定義、集計単位、差分の読み方を計算ドリルで整理する。結論は、仕事量の不足を同じ物差しで求め、その不足が納期にどう響くかを工程表で確かめることだ。
問1:三つの作業の進捗率を平均してよいか
出来高とは、どれだけ仕事ができたかを、あらかじめ決めた重みで評価した量である。EVMでは、予定していた仕事の予算上の価値をPV、実施した仕事の予算上の価値をEVとして比較する。日本の国土技術政策総合研究所の出来高・工程管理の解説でも、出来高計画、出来高実績、コスト実績を区別している。費やした時間だけを出来高に置き換えないことが出発点になる。
次は、設備導入準備を題材にした計算用の仮定である。顧客事例や標準工数を示す数値ではない。全体の予算工数を20人日とし、第1週末の締め時点で、次の計画率と実績率が確定したとする。実績率は担当者の感覚ではなく、事前の条件に照らして認定した値を使う。
| 末端の作業 | 予算工数 | 予定率 | 実績率 | PV | EV |
|---|---|---|---|---|---|
| 仕様票の確定 | 4人日 | 100% | 100% | 4人日 | 4人日 |
| 検査手順書の作成 | 8人日 | 100% | 50% | 8人日 | 4人日 |
| 試運転の確認 | 8人日 | 0% | 0% | 0人日 | 0人日 |
| 合計 | 20人日 | ― | ― | 12人日 | 8人日 |
予定率の単純平均は約66.7%、実績率の単純平均は50%になる。しかし、この平均では4人日の作業と8人日の作業を同じ重さで数えている。全体を表すには、各行の予算工数に率を掛け、出来高を足してから全体の予算工数で割る。予定は12÷20=60%、実績は8÷20=40%だ。集計する率の分母をそろえるだけでは足りず、作業ごとの重みも必要になる。
率の認定方法も先に決める。例えば、仕様票は確定時に全量を計上し、検査手順書は「検査項目の確認」と「判定方法の確認」に半分ずつ重みを付ける。後者の50%は前半の確認が済んだ状態であり、「半分くらい書いた」という申告とは区別する。短い作業の完了時計上や、長い作業の節目ごとの計上は、GAOの出来高測定方法の整理にも示されている。
数量で測れる作業なら、完成数量を使う方法もある。この例の試運転は、同じ重みの確認項目を四つ設け、各項目の確認完了で4分の1ずつ認めることにする。難易度や必要工数が大きく異なる項目は同じ重みにしない。集計表では作業分解の末端行だけを足し、親行は集計結果の表示に使う。親と子の両方を合計すると、同じ成果が重複する。
問2:予定12人日・実績8人日の差をどう表すか
予定出来高は、締め時点までに完成しているはずだった仕事量である。実績出来高は、同じ時点までに完成したと認定できる仕事量を、同じ予算工数で評価したものだ。検査手順書に実際は多くの時間を使っていても、認定率が変わらなければEVは増えない。投入した実工数は別欄で管理する。
差を表す基本式は、SV=EV-PV。予定に対する比率はSPI=EV÷PVで求める。これらの式と、全体予算に対する予定率・実績率の定義は、米国科学財団のEVM指標一覧で確認できる。今回の仮定を代入すると、次のように整理できる。
- 出来高の差:8-12=マイナス4人日。
- 予定に対する比率:8÷12=約0.67。
- 全体に対する率の差:40%-60%=マイナス20ポイント。
- 予定出来高に対する不足割合:(12-8)÷12=約33.3%。
「20ポイント」と「約33.3%」は両立する。前者の分母は全体予算20人日、後者の分母は締め時点の予定12人日だからだ。「20%遅れ」だけではどちらの意味か伝わらない。週次報告では「予定60%に対して実績40%、差はマイナス20ポイント。予定していた仕事量の約3分の1が未達」と書けば、分母を追いやすい。
海外の公開例として、NASAのEVM教材は、ある時点の予定10万ドルに対し、実績出来高6万ドルなら差はマイナス4万ドルと説明している。これは教材上の計算例である。米国の公的事業向け資料と日本の民間業務では契約や報告制度が異なるため、制度上の義務を移すのではなく、予定と実績を同じ基準で評価する考え方を参照する。
検算では、各行の実績率が全量を超えていないか、出来高の合計が全体予算を超えていないかを確かめる。PVがゼロの週はSPIを割り算できないので、「算出対象外」と表示する。実績の回答がない行も、ゼロと確認未了を区別する。未回答を含む合計を使うなら暫定値と明記し、その行と重みを添えておく。
問3:マイナス4人日を4日遅れと読めるか
人日は仕事量の単位であり、工程表の経過日数とは違う。今回のマイナス4人日は、予算工数で評価した出来高が予定に足りないことを表す。作業の並行性や必要な担当者、後続作業の開始条件が分からないまま、納期が4日動くとは判断できない。単純に人数で割って遅延日数にするのも避けたい。
GAOの工程差異に関する説明も、EVMの工程差異は時間ではなく金額単位で表すこと、遅れがクリティカルパス上にあるかを評価することを指摘している。本稿の人日による集計でも、仕事量の差を求めた後に、納期を左右する作業のつながりを調べる必要がある。
例題で未達なのは検査手順書の4人日分だ。この行を開き、「試運転の開始に手順書の最終確認まで必要か」「未確定部分を残して着手できる項目はあるか」「予定開始までの余裕を使い切るか」を確認する。全体では差が小さくても、次工程を止める成果物の未達は個別に見る。別の作業の前倒しによって、重要工程の停滞が集計上見えにくくなることがある。
原因欄は、次のように作業の状態で分類すると確認先を決めやすい。これは原因を整理するための記入例である。
| 原因の分類 | 確かめる内容 |
|---|---|
| 入力待ち | 判定条件など、作成に必要な情報が届いているか |
| 作業の未完成 | 残っている記述や確認項目は何か |
| 確認待ち | 作成済みの内容を誰がいつ確認するか |
| 手戻り | 差戻し箇所と再確認の条件は何か |
| 計画条件の変更 | 対象範囲や必要な判定が変わったか |
原因別にも不足量を合計するなら、一つの未達分に主因を一つ割り当てる。入力待ちと確認待ちが連鎖していても、同じ4人日をそれぞれに足すと総量が膨らむ。分けられる根拠がある場合は作業を分割し、不明なら主因未確認として残す。
海外の実際の報告上の問題も参考になる。GAOが米海軍の造船計画を扱った事例では、一部の差異分析が問題を大まかに説明するだけで、根本原因や軽減策を十分に示していなかったとされる。数値に「作業が遅れている」と添えるだけでは、次に何を変えるかは決まらない。
翌週の答え合わせ:不足量が縮んだ理由を確かめる
同じ例を第2週末まで進めよう。計画では仕様票と検査手順書が完了し、試運転は半分まで終わるのでPVは16人日。実績では前二つが完了し、試運転の四項目中一項目が確認済みなら、EVは14人日になる。この場合のSVはマイナス2人日で、前週のマイナス4人日から不足量が2人日分縮まった。
この週に増えた出来高は、予定が16-12=4人日、実績が14-8=6人日だ。実績の増分が予定の増分を2人日上回ったため、累積の不足が縮んだと検算できる。累積値の差と一週間の増分を並べると、「進んだ」という報告が追い上げを意味するのか、予定どおりの増加なのかを区別できる。
ただし、計画を下げただけでも差は縮む。週次で保存するのは、締め日時、計画の版、行ごとの予算工数・予定率・実績認定率とその根拠、PV・EV・SV・SPIである。範囲変更を承認した場合は、変更前後の差と適用日を残す。過去週の予定を上書きして、遅れが解消したように見せない。
差が出た行を見つけやすくする表示は、数値や状態に応じて管理表の行を色分けする方法と組み合わせられる。率や符号の意味を決めてから表示条件を設定すると、色の解釈もそろえやすい。
AI化・効率化を進める際も、まず集計担当者が一行を更新する過程をたどりたい。どの記録を開き、誰に確認し、何が満たされたら率を認めるのかを言葉にする。前工程の確認を飛ばして率だけ自動入力すると、根拠が欠けた数字が集まる。計算は表の数式で再現し、AIには報告文からの根拠候補の抽出や原因候補の整理を任せる設計から始める。認定と計画変更は担当者が確認し、保存した過去週を再計算して集計結果を照合する。
PMIが2026年8月31日に公開したEVM解説も、計算だけでなく、指標を解釈して意思決定につなげることを重視している。周辺の報告から兆候を拾う設計は、進捗データから遅延の兆候や論点を抽出する方法で補える。関連するサービス情報には、タスク・進捗・課題管理へのAI活用の対応範囲がある。
工程表に残したいのは、単独の進捗率よりも、同じ基準で比べた不足量と、その不足が止めている次の仕事である。週次報告で分母・単位・計画版をそろえれば、数字の説明から、どの未達を解消するかの判断へ進める。
