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アルミ合金の選び方:なぜ種類が多いのか
アルミニウム合金は、添加元素の組み合わせで1000系~7000系に分類され、それぞれ強度・耐食性・加工性・溶接性が大きく異なります。「どのアルミを使えばいいか」は設計者が最も頻繁に悩む選定課題の一つです。
本記事では、実務で最も多く使われる3種(A5052・A6061・A7075)を中心に、定量データに基づく比較と選定フローを提供します。
A5052・A6061・A7075の定量比較表
| 項目 | A5052-H34 | A6061-T6 | A7075-T6 |
|---|---|---|---|
| 系統 | 5000系(Al-Mg) | 6000系(Al-Mg-Si) | 7000系(Al-Zn-Mg-Cu) |
| 引張強さ | 260 MPa | 310 MPa | 570 MPa |
| 耐力(0.2%) | 193 MPa | 276 MPa | 505 MPa |
| 伸び | 10% | 12% | 11% |
| 硬度 | HV 68 | HV 107 | HV 175 |
| 密度 | 2.68 g/cm³ | 2.70 g/cm³ | 2.80 g/cm³ |
| 耐食性 | ◎ 優秀(海水にも強い) | ○ 良好 | △ やや劣る(Zn含有) |
| 溶接性 | ◎ 優秀 | ○ 良好(溶接後に強度低下あり) | × 非推奨(割れやすい) |
| 切削加工性 | △ やや劣る(粘りがある) | ◎ 優秀(脆性的に削れる) | ○ 良好 |
| 板金加工性 | ◎ 優秀(曲げ・絞りに強い) | ○ 良好 | △ 割れやすい |
| 熱処理 | 不可(加工硬化のみ) | 可(T6処理で強度UP) | 可(T6処理で最大強度) |
| 価格(相対) | 安い(1.0倍) | やや高い(1.2倍) | 高い(1.8~2.5倍) |
A5052:板金加工の定番
特徴
- マグネシウム(Mg)を約2.5%含有する非熱処理型合金
- 耐食性と板金加工性のバランスが最も良い
- 海水・塩害環境に強く、船舶・沿岸構造物に適する
- 溶接性が優秀。TIG・MIG溶接が問題なく可能
用途
板金カバー・筐体・タンク・パネル・船舶部品・自動車ボディパネル
図面での指定例
A5052P-H34 t=2.0(板材・加工硬化処理H34・板厚2mm)
A6061:切削加工の定番
特徴
- マグネシウム+ケイ素(Mg+Si)を含む熱処理型合金
- T6処理で強度が大幅に向上(耐力276 MPa)
- 切削加工性が最も優秀。CNCフライス・旋盤で精密部品に最適
- アルマイト処理との相性が良い
用途
構造材(フレーム・アングル)・治工具・機械部品・自転車フレーム
図面での指定例
A6061-T6(丸棒・角材。T6処理済み)
英語文献データ:A6061は切削時に「脆性的に」小さく清潔な切りくずが飛ぶため、加工精度が出しやすく、CNC加工の第一選択です。A5052は弾性的に削れるため、精密切削には不向きです。
A7075:超高強度の特殊材
特徴
- 亜鉛(Zn)+マグネシウム+銅を含む熱処理型合金
- アルミ合金中最高強度(引張強さ570 MPa ≒ SS400の鋼に匹敵)
- 「超々ジュラルミン」と呼ばれる
- 耐食性が劣る(Zn含有のため)。溶接は非推奨
用途
航空機構造材・レーシングカー部品・ロボットフレーム・スマートフォン筐体
図面での指定例
A7075-T6(T6処理済み。アルマイト指示を併記推奨)
英語文献データ:A7075は溶接すると熱影響部に割れが発生しやすいため、溶接は一般的に非推奨です。接合が必要な場合はボルト締結やリベットを使用します。
その他のよく使うアルミ合金
| 合金 | 系統 | 特徴 | 用途 |
|---|---|---|---|
| A1050 | 1000系(純アルミ) | 導電性・導熱性最高。強度は低い | 放熱板・反射板・電気部品 |
| A2017 | 2000系(ジュラルミン) | 高強度・切削性良好。耐食性劣る | 航空機リベット・機械部品 |
| A5083 | 5000系 | A5052より高強度。溶接構造物に最適 | 船舶・LNGタンク・圧力容器 |
| A6063 | 6000系 | 押出成形に最適。建材の定番 | サッシ・フレーム・レール |
アルミ合金の選定フロー
- 加工方法は?
- 板金加工(曲げ・絞り)→ A5052
- 切削加工(フライス・旋盤)→ A6061
- 押出成形 → A6063
- 必要な強度は?
- 中程度(200MPa級)→ A5052
- 高い(300MPa級)→ A6061-T6
- 最高(500MPa超)→ A7075-T6
- 溶接するか?
- Yes → A5052 または A5083
- No → A6061、A7075も選択可
- 海水・塩害環境か?
- Yes → A5052(海水耐食性最優秀)
- No → 用途に合わせて選択
調質記号の読み方
アルミ合金には材質記号の後ろに調質記号(テンパー)が付きます。
| 記号 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| O | 焼なまし(最も軟らかい) | A5052-O |
| H24 | 加工硬化+安定化処理(半硬質) | A5052-H24 |
| H34 | 加工硬化+安定化処理(3/4硬質) | A5052-H34 |
| T4 | 溶体化処理+自然時効 | A6061-T4 |
| T6 | 溶体化処理+人工時効(最高強度) | A6061-T6, A7075-T6 |
アルミ合金と図面AI
- 材質記号の自動認識:A5052P-H34やA6061-T6をOCRで読み取り、合金系・調質状態を自動判定
- 加工方法との整合性チェック:A7075に溶接指示がないかAIが自動検証
- 材料費の自動概算:合金種と部品体積から材料費を自動算出
renueでは、アルミ合金を含む材質情報のAI読み取り・構造化ソリューションを提供しています。
まとめ
- A5052:板金加工・溶接・海水環境の定番。耐食性◎、板金加工性◎
- A6061:切削加工・構造材の定番。T6処理で耐力276MPa。切削性◎
- A7075:超高強度(570MPa)の特殊材。溶接×、耐食性△。コスト高
- 選定は加工方法→強度→溶接→耐食性のフローで判断
- 調質記号(H34/T6等)は強度に直結する重要情報。図面に必ず併記
