株式会社renue
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溶接記号とは?図面で使う目的
溶接記号とは、図面上で「どこに」「どのような方法で」「どのような形状・寸法で」溶接を行うかを指示するための記号体系です。JIS Z 3021:2016(ISO 2553:2013を修正採用、System B)で規定されています。以下の基線の上下関係は、このSystem Bを前提に説明します。
溶接記号を正しく使うことで、以下のメリットがあります。
- 設計意図の明確な伝達:溶接の種類・寸法・仕上方法を図面だけで正確に指示できる
- 品質管理の基準:溶接検査の合否判定基準として機能する
- コスト最適化:過剰な溶接指示を防ぎ、加工時間と材料費を削減できる
溶接記号の基本構成
溶接記号は以下の要素を組み合わせて構成します。補助記号や尾などは必要に応じて付けるもので、すべてを常に記入するわけではありません(日本溶接協会の解説)。
1. 矢(矢印)
溶接する継手の位置を指し示します。矢印の先端が溶接部を指します。
2. 基線(基準線)
矢印から水平に引いた実線です。この基線の上下に溶接記号を配置します。
- 基線の下側(矢の側):矢印が指す側の溶接を指示
- 基線の上側(矢の反対側):矢印の反対側の溶接を指示
3. 基本記号
溶接の種類(すみ肉、突合せ等)を表す記号。基線の上下に配置します。
4. 寸法表示
脚長・開先深さ・ルート間隔・開先角度などの数値情報。
5. 補助記号
仕上方法・全周溶接・現場溶接などの追加指示。
6. 尾(テール)
基線の矢印と反対側の端を二股に開いた部分。現場溶接を示す旗とは別のものです(日本溶接協会・図2)。溶接方法(TIG、MIG等)や検査方法を記載する場合に使用します。
基本記号一覧:溶接の種類と記号
突合せ溶接の記号
| 記号形状 | 名称 | 説明 | 用途 |
|---|---|---|---|
| I型 | I形突合せ | 開先なし。板厚が薄い場合 | 薄板など、開先なしで必要な溶込みを確保できる突合せ(TWIの継手解説) |
| V型 | V形突合せ | 片側からV字に開先を取る | 片側から開先を設ける突合せ。適用板厚は材質・溶接法・施工条件で決定 |
| レ型 | レ形突合せ | 片側のみ斜めに開先 | 片側からしか溶接できない場合 |
| X型 | X形突合せ | 両側からV字に開先 | 厚板などで両側から施工する突合せ。板厚だけで一律に選定しない |
| K型 | K形突合せ | 両側からレ形に開先 | T継手での両面溶接 |
| U型 | U形突合せ | U字形の開先 | 厚板で溶接量を減らしたい場合 |
| J型 | J形突合せ | 片側のみJ字形の開先 | T継手でU形と同等の効果 |
すみ肉溶接の記号
| 記号形状 | 名称 | 説明 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 直角三角形 | すみ肉溶接 | L字・T字の角部を溶接 | ブラケット、補強リブ、構造物全般 |
すみ肉溶接は代表的な溶接形式で、建築鉄骨・機械構造物・配管支持金物など幅広い場面で使われます。
その他の溶接記号
| 記号 | 名称 | 用途 |
|---|---|---|
| フレア記号 | フレア溶接 | 丸棒や管の接合部 |
| 円形など(適用規格・溶接法で表記を確認) | スポット溶接(CADのJIS記号ライブラリ例) | 薄板の点溶接(自動車ボディ等) |
| 円と平行な2本線を組み合わせた形など(適用規格・溶接法で表記を確認) | シーム溶接(記号ライブラリ例) | 薄板の連続点溶接 |
| 2つの弧を並べた形(CADのクラッド記号例) | 肉盛溶接 | 摩耗面の補修、耐食層の形成 |
溶接記号の寸法指示方法
すみ肉溶接の寸法指示
すみ肉溶接で最も重要なのが脚長(きゃくちょう)の指示です。
- 脚長:すみ肉溶接の断面における直角二辺の長さ。記号の左側に数値で記入
- 溶接長さ:溶接を行う長さ。記号の右側に記入
- ピッチ:断続溶接の場合、溶接部の中心間距離
寸法指示例:すみ肉溶接で脚長6mm、溶接長さ50mm、ピッチ100mmの場合、脚長は基本記号の左側に、溶接長さ・個数・中心間隔は右側に記載します。数字だけを一列に並べず、基本記号との位置関係を含めて指示してください(日本溶接協会・図2の記入位置)。
突合せ溶接の寸法指示
- 開先深さ:基本記号の左側に記入
- 開先角度:基本記号内に角度を記入
- ルート間隔:基本記号内の下部に記入
- ルート面:開先の底部の平面部分の寸法
補助記号の種類と使い方
| 補助記号 | 意味 | 図面での配置 |
|---|---|---|
| ○(丸) | 全周溶接 | 矢と基線の交点に配置。部品の全周を溶接する場合 |
| 旗(フラグ) | 現場溶接 | 矢と基線の交点に配置。工場ではなく現場で溶接する場合 |
| 凸型 | 余盛り仕上げ | 基本記号の上に重ねて配置 |
| 凹型 | へこみ仕上げ | 基本記号の上に重ねて配置 |
| 平型 | 平坦仕上げ | 基本記号の上に重ねて配置 |
仕上方法の記号
| 記号 | 仕上方法 |
|---|---|
| G | グラインダー仕上げ |
| M | 機械仕上げ |
| C | チッピング仕上げ |
| F | 仕上げ方法を指定しない(SOLIDWORKSのJIS設定での説明)。平坦な表面形状の指示とは区別 |
矢の側と反対側の見分け方
溶接記号を読む上で注意したいのが「矢の側」と「矢の反対側」の区別です。
基本ルール
- 基線の下側に記号がある → 矢印が指す側(矢の側)の溶接指示
- 基線の上側に記号がある → 矢印と反対側の溶接指示
- 上下両方に記号がある → 両側溶接の指示
注意:JIS Z 3021:2016のSystem BとAWS方式は、いずれも矢の側を基線の下、反対側を上に示します。ISO 2553には異なる表示のSystem Aもあります(JISの方式、AWSの配置説明、ISOの2方式)。海外図面を読む際は方式の確認が必須です。
実務で頻出する溶接記号パターン
パターン1:両側すみ肉溶接
T継手やL継手の両側にすみ肉溶接を施す指示です。基線の上下に三角形記号を配置し、それぞれの脚長を記入します。
パターン2:全周すみ肉溶接
パイプの差込み溶接や、プレートに溶接する管台など、部品の全周に溶接が必要な場合。矢と基線の交点に○記号を付けます。
パターン3:V形突合せ+裏波溶接
配管の突合せ溶接で、片側からの溶接で裏側まで完全溶込みを得る場合。V形記号に裏波の補助記号を組み合わせます。
パターン4:断続すみ肉溶接
長い継手で全長溶接が不要な場合、溶接長とピッチを指定して断続的に溶接します。コスト削減と歪み低減に有効です。
溶接記号のよくある間違いと対策
間違い1:矢の側と反対側を逆に読む
基線の上に記号がある=矢の反対側であることを忘れ、溶接位置を誤認する。
対策:矢印の向きを常に確認し、「矢印が指す部材側」=「基線の下側」と対応付ける習慣をつけましょう。
間違い2:脚長の過大指示
強度に不安があるため脚長を大きくしがちですが、板厚だけで適否を一律には決められません。設計上必要な寸法を超える過大な溶接は、材料・時間の増加や歪みの原因になります(TWIの過大なすみ肉溶接の解説)。
対策:脚長は荷重・材質・継手条件・適用規格に基づいて決定します。設計基準書や溶接構造設計便覧を参照しましょう。
間違い3:溶接記号と溶接方法の混同
溶接部の基本記号は主に継手・開先の形状や溶接の種類を示し、溶接方法(TIG、MIG、被覆アーク等)の指定は尾(テール)部に別途記載します。
対策:形状と方法を分けて指示する習慣をつけましょう。
間違い4:JIS方式とAWS方式の混在
海外製機器の図面ではAWS方式やISO 2553のSystem Aが使われることがあります。AWS方式の上下配置はJISのSystem Bと同じですが、ISOの方式を含め、図面が採用する規格・表示方式を確認します。
対策:図面の表題欄で適用規格を確認し、JISのSystem B、ISOのSystem A/B、AWSのいずれが適用されているかを判別してから読みましょう。
溶接記号とAI図面解析
溶接記号は基本記号・補助記号・寸法値が複雑に組み合わさるため、紙図面からの自動読み取りは高い技術を要する領域です。
AI-OCRによる読み取りを検討する際は、以下の項目を対象図面で確認します。
- 溶接記号の構造解析:矢・基線・基本記号・補助記号の位置関係をAIが認識し、構造化データに変換できるかを確認
- 脚長・開先寸法の自動抽出:記号に付随する数値情報の読み取り精度を、正解データと比較して確認
- 溶接検査との連携:読み取った溶接指示と検査結果を照合する仕組みや、人が確認する工程を設計し、品質記録をデジタル化できるかを検討
renueの図面AIをご検討の際は、対象図面を確認した上で、溶接記号を含む読み取り・データ化の適用範囲をご案内します。お気軽にご相談ください。
まとめ
溶接記号は、製造業・建設業の図面で溶接の指示を伝える記号体系です。
- 溶接記号は矢・基線・基本記号・寸法・補助記号・尾の6要素を必要に応じて組み合わせて構成
- 基本記号は突合せ溶接(I・V・レ・X・K・U・J形)とすみ肉溶接が主要
- 基線の下側=矢の側、上側=反対側のルールが重要(JIS Z 3021:2016のSystem B)
- すみ肉溶接の脚長、突合せ溶接の開先角度・ルート間隔が主な寸法指示項目
- 全周溶接(○)、現場溶接(旗)、仕上方法(G/M/C、方法を指定しないF)の表示も確認。表面形状の記号とは区別
