販管費とは|内訳から効果的な管理・削減方法をわかりやすく解説 |株式会社renue(リノイ)

公開日: 2025/4/20

企業が営業活動をするために必要な販管費(販売費及び一般管理費)とは具体的に何を指すのか、どのように管理・削減すればよいのか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
販管費を適切に管理し、無駄な費用を特定・削減することは、経営効率や企業の収益力向上に欠かせません。商品やサービスの販売活動や企業全体の管理業務にかかる費用を効率的にコントロールし、コスト管理を行いましょう。
本記事では、わかりやすく販管費について解説します。あわせて、具体的な管理・削減方法を紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
販管費とは

販管費は、企業の営業活動に必要な費用のうち、売上原価に直接関連しない費用を指します。
企業の営業活動に欠かせない費用であり、収益性を向上させるためにも適切に管理し、削減することが求められます。販管費を適切に管理することで、無駄なコストを削減し経営効率を向上させられるでしょう。
なお、企業の利益を示す営業利益は、売上総利益から販管費を差し引くことで算出できます。
販売費と一般管理費に分けられている理由
販売費と一般管理費はそれぞれ異なる性質を持つため、2つの要素に分けられています。しかし、お互いに関連している要素もあることから、会計処理上では「販売費及び一般管理費」として、損益計算書に統合されて計上されます。
性質 | 特徴 | |
---|---|---|
販売費 | 商品やサービスの販売・提供活動に関わる費用 | 月によって費用変動が激しい |
一般管理費 | 企業全体の運営業務や管理業務などに関わる費用 | 月による費用変動が少ない |
また、損益計算上では統合されていますが「戦略費」として販売費を捉える企業も多く、経営分析や効果的なコスト管理には、それぞれの費用を個別に把握し、管理することが重要です。
売上原価と販管費の違い
どちらも売上発生に関連する費用ですが、売上原価と販管費は売上関与に違いがあります。
性質 | |
---|---|
販売費 | 商品やサービスの製造に直接的に関与しない費用 |
売上原価 | 商品やサービスの製造に関する費用 |
具体的には、黒字の部分で商品やサービスを製造するための製造コストを売上原価、企業の営業活動にかかる費用を販管費と区分します。
人件費の扱い方
人件費は従業員の給与や賞与、各種手当、福利厚生費などを指します。損益計算書では「人件費」として計上されますが、対象となる従業員によって費用区分が異なります。
一般的に、販売費や一般管理費として処理されるケースが多いですが、売上原価として計上されるケースも。人件費は、従業員の業務内容や部門、企業の業種によって扱いが異なるので注意しましょう。
たとえば、製造業の場合、製品を製造するために従業員が直接的に関与する場合、その従業員の人件費は製品の製造原価に含められ、売上原価として処理されます。製造原価に含まれる人件費は「労務費」と呼ばれます。
勘定科目 | 内訳 |
---|---|
販売費 | 販売担当者や営業スタッフなど営業部門に在籍する従業員の人件費 |
一般管理費 | 企業全体の管理活動を行う経理・総務部門などに在籍する従業員の人件費 |
売上原価 | 製造部門に在籍する従業員の人件費 |
役員報酬 | 取締役など役員に支払われる報酬 |
【販管費】勘定科目の内訳

上述した通り、販管費は販売費と一般管理費と2つの要素に分けられます。ここでは、それぞれの勘定科目について紹介します。
勘定科目とは、取引における内容を分類・整理するために使用され「何に使用した費用なのか」わかりやすく示す見出しです。前章の「人件費の扱い方」などを踏まえて、自社の事業内容を参照してください。
販売費の内訳
販売費は、商品やサービスの販売・提供活動に関するさまざまな費用を含みます。
以下に、主な勘定科目と内訳を紹介します。
勘定科目 | 内訳 |
---|---|
人件費 | 販売担当者や営業スタッフの給与など |
広告宣伝費 | 広告や宣伝活動にかかる費用(広告媒体の料金・広告制作費・宣伝キャンペーンの費用など) |
支払運賃 | 商品の配送や輸送にかかる運賃 |
旅費交通費 | 営業活動や顧客訪問のための交通費や宿泊費 |
販売手数料 | 販売を委託した際に支払う手数料 |
販売促進費 | 販売促進活動やイベントにかかる費用(キャンペーン・サンプリングなど) |
一般管理費の内訳
一般管理費は、企業の運営業務や管理業務などに関連するさまざまな費用を含みます。
以下に、主な勘定科目と内訳を紹介します。
内訳 | 内容 |
---|---|
人件費 | 経理・総務部門など企業全体の管理業務を行う従業員の給与など |
役員報酬 | 企業の役員に支払われる報酬 |
福利厚生費 | 従業員の福利厚生に関わる費用 |
消耗品費 | 文具などのオフィス用品のうち、消耗性があり短期間の使用を想定された物を購入した費用 |
通信費 | インターネットや電話、郵便代などの費用 |
交際費 | ビジネス関係者との接待や会食に関わる費用 |
車両費 | 車両の維持管理費用(ガソリン代・洗車代・検査登録費用・車検費用など) |
減価償却費 | パソコンや社用車などの固定資産を、耐用年数庭せて計上する費用 |
支払い手数料 | 銀行振込手数料やクレジットカード手数料などの手数料 |
SaaS企業の例
日本国内では2つの要素に分けられる販管費ですが、欧米などのSaaS企業では、3つに分けて開示されています。
S&M(セールス&マーケティング)
R&D(リサーチ&デベロップメント)
G&A(ジェネラル&アドミニストレイティブ)
項目 | 特徴 |
---|---|
S&M | セールスとマーケティングに関連する費用 |
R&D | 研究開発に関連する費用 |
G&A | 一般的なオペレーションに関連する費用 |
また、SaaS企業の営業活動におけるコスト構造は、主に販管費と売上原価で構成されます。
SaaS企業における販管費・売上原価の内訳は、以下の通りです。
項目 | 内訳 |
---|---|
販管費 | 商品やサービスの販売や企業全体の管理業務に関わる費用 |
売上原価 | ソフトウェアの構築にかかる人件費や経費 |
ソフトウェアの構築にかかる人件費や経費は、「ソフトウェア仮勘定」として資産計上されるのが一般的。開発が完了し、サービス提供が開始される時点で「ソフトウェア」として振替えられ、減価償却費の計上が開始されます。
販管費を使用した3つの分析方法

販管費は、経営効率を上げ、企業が利益を追求するために必要な費用です。ただ削減するだけではなく、どれくらいコストがかかっているのか分析することが重要です。
ここでは、販管費を使用した3つの分析方法を見ていきましょう。
比率の分析
変動の分析
ベンチマーク分析
比率の分析
比率の分析では、販管費の割合を分析し経営効率を明確にします。
売上高販管費率は、企業が製品やサービスを販売するために売上高に対し、どのくらいのコストをかけているのかを示す値です。たとえば、比率が高い場合、企業は売上を増やすための営業活動に多くの費用を投資していると分析できます。一方、比率が低いほど、効果的なコスト管理を実施し、少ない営業活動で利益を上げていると言えるでしょう。
売上高販管費率の計算式
売上高販管費率 = (販売費 + 一般管理費)÷売上高×100
販管費の比率を分析することで、企業が販売活動や管理活動にどれだけの費用をかけているか把握でき、経営効率に役立ちます。
変動の分析
販管費の項目ごとに変動を比較することで、より具体的な削減策を立案できます。販売促進費が増加している場合、新しいマーケティングキャンペーンやイベントなどの実施が要因であると考えられるでしょう。
今期と前期を比較して、どの項目が変動しているのかを分析します。変動要因の分析結果をもとに、無駄な費用の削減や効率的な費用管理など、過去の変動要因に基づいた翌期以降の販管費削減施策の立案が可能です。
ベンチマーク分析
ベンチマーク分析では、同業他社や競合他社と比較することで、自社の販売費における適切な水準を把握できます。具体的な費用項目ごとに比較し、自社の営業活動にどれくらいコストがかかっているのか、競合他社との違いがあるのかを把握・分析します。比較結果をもとに、自社の販売費の妥当性や課題を明確にでき、改善策や経営戦略を見出せるでしょう。
その際、同じ業種や業務内容を持つ企業と比較することが重要です。販管費の割合は業種によって異なるため、安易に販管費が低い企業と比較することは避けましょう。
販管費を効果的に削減する5つの方法

販管費を効果的に削減する方法は、大きく5つに分けられます。
役員報酬を見直す
人件費を見直す
地代・家賃を見直す
広告宣伝費を見直す
諸費用を見直す
それぞれの項目について、順番に見ていきましょう。
役員報酬を見直す
役員報酬の見直しは、販管費の削減において比較的取り組みやすい方法のひとつです。役員報酬の額や役員の数などが企業の業績と比較して適正であるかを検討し、必要に応じて見直しましょう。
しかし、役員報酬の変更や減額は、事業年度の開始から3カ月以内に株主総会を経て決定するのが一般的です。従業員の給与とは異なり、原則として、理由なく役員報酬額を変更してはいけないルールがあります。
また、役員報酬は定期同額給与とも言い、毎月同じ金額を支払うことで損金算入が可能です。業績の著しい悪化や役員の昇格などのケースを除き、事業年度途中で役員報酬を変更・減額する場合は、一部の損金算入が認められず法人税額を上げてしまいかねません。
報酬の見直しをする場合は、適切なタイミングを選ぶ必要があります。
人件費を見直す
人件費は販管費の大部分を占めているケースが多く、効果的な見直し策によって費用削減が可能です。たとえば、リストラも販管費を削減するための施策のひとつです。企業が従業員に支払う給与や福利厚生、雇用形態などを効果的に管理し、販管費を削減します。
経理や人事業務など、特定の専門知識やスキルを必要とする業務を外部委託することで、コスト削減や効率化を図れるでしょう。
地代・家賃を見直す
企業によっては家賃なども大きな割合を占めるため、地代・家賃の見直しを行い、オフィスや店舗などの使用する場所の賃貸料金を適切に管理する必要があります。オフィスの家賃などの固定費は契約により金額が定まっているため、立地や賃貸契約を見直すことで、毎月決まった額の費用を抑えられるでしょう。
また、賃貸オフィスを利用している場合、一部の業務をテレワークとして実施することで、オフィスの面積を削減できます。
広告宣伝費を見直す
広告宣伝費は、商品やサービスなどの広告宣伝にかかる費用を、費用対効果を意識して見直す必要があります。たとえば、外注業者へ広告運用を丸投げしている場合、自社で広告施策の成果をチェックできていない場合があります。
広告費見直しはデータに基づいた客観的な判断が求められます。Web広告などを外注している場合でも、企業側で広告施策の成果を把握しましょう。社内で専門部署を設けたり、マーケティング知識を持つ人材を配置し、クリック率やCVR、ROIなどの指標をもとに、各広告施策を定量的に分析することが重要です。
諸費用を見直す
販管費は細かく分けられるため、無駄な費用がないか見直すことも重要です。売上に貢献しない費用や無駄な経費から削減を検討しましょう。
たとえば、オフィス内での備品や消耗品の購入では、適切な在庫管理をし、まとめ買いなどでコスト削減を図ります。他にも、照明のLED化や省エネグッズの導入により、コスト削減と社会貢献に貢献できるでしょう。
販管費をコントロールし企業利益を促進しよう

販管費の削減は単なる節約だけでなく、経営改善や収益力の強化に直結する重要な取り組みのひとつです。販管費は売上における大部分を占めており、企業と従業員の協力によってコントロールが可能です。
販管費を効果的に管理するためには、業務プロセスの効率化が欠かせません。たとえば、経理自動化や効率化のためのツールやサービスの活用などが挙げられます。ツールやサービスを活用することで、業務の手間や時間を節約し、生産性向上が期待できます。
コスト戦略には「SubFi for Business」がおすすめ

販管費は、企業の営業活動に関連する費用や管理業務に関連する費用を指します。具体的には、広告宣伝費や営業費などの販売活動に関連する費用と、オフィス維持費や人事費用など企業全体の管理活動に関連する費用が含まれます。
販管費の効果的な管理は、コスト戦略の重要な要素です。正確なデータ分析を通じて、費用の傾向やパターンを把握し、無駄な費用の特定や削減策の立案に役立てます。
「販管費を効率的に管理したい」など販管費について不安がある方は、ぜひ「SubFi for Business」をご検討ください。SubFi for Businessでは自社の支出を分析するだけでなく、同業他社の動向と比較してコスト戦略の提案が可能です。会計情報を連携することでコスト分析の自動化や最適化が可能です。定期的に費用データを分析し、予算と実績のギャップを把握することで無駄な費用の特定に役立つでしょう。