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幾何公差とは?寸法公差との違い
幾何公差とは、部品の「形状」「姿勢」「位置」「振れ」に関する許容範囲を、図面上で明確に指示するための規格です。JIS B 0021(ISO 1101に対応)で定められています。
寸法公差が「長さや直径の許容範囲」を指定するのに対し、幾何公差は「面の平らさ」「穴の位置ずれ」「軸の傾き」など、形状そのものの精度を規定します。
なぜ幾何公差が必要なのか
- 寸法公差だけでは不十分:寸法が公差内でも、面が歪んでいたり穴位置がずれていれば組み付け不良になる
- 設計意図の明確化:「どの面を基準にして、どの方向にどれだけのずれを許容するか」を曖昧さなく伝達できる
- グローバル対応:ISO/JIS準拠の幾何公差は国際的に通用し、海外調達時の品質トラブルを防ぐ
- 3DA(3D単独図)への移行:3Dモデルに直接公差を付与する3DA化では、幾何公差の活用が前提となる
幾何公差の4分類と記号一覧
幾何公差は大きく4つのカテゴリに分類され、合計で14~16種類の特性記号があります(JIS B 0021:1998準拠)。
1. 形状公差(単独形体 ― データム不要)
部品単体の形の正しさを規定します。基準(データム)を必要としません。
| 記号 | 公差の種類 | 意味 | 使用例 |
|---|---|---|---|
| ―(横線) | 真直度 | 線が真っ直ぐであること | 長尺シャフトの軸線、レール面 |
| □ | 平面度 | 面が平らであること | シール面、取付面、基準面 |
| ○ | 真円度 | 断面が真円であること | 軸受嵌合部、シリンダボア |
| ⌭ | 円筒度 | 円筒全体が理想円筒に近いこと | 精密軸、油圧シリンダ |
| ⌒ | 線の輪郭度 | 線の形状が理論輪郭に近いこと | カム曲線、タービンブレード断面 |
| ⌓ | 面の輪郭度 | 面の形状が理論輪郭に近いこと | 金型キャビティ面、自由曲面 |
2. 姿勢公差(関連形体 ― データム必要)
基準面・基準軸に対する傾きや向きを規定します。
| 記号 | 公差の種類 | 意味 | 使用例 |
|---|---|---|---|
| ∠ | 傾斜度 | データムに対して指定角度であること | テーパ面、V溝 |
| ⊥ | 直角度 | データムに対して90°であること | フランジ面と軸、取付穴と基準面 |
| ∥ | 平行度 | データムに対して平行であること | スライド面、ガイドレール |
3. 位置公差(関連形体 ― データム必要)
理論的に正確な位置(TED)からのずれの許容値を規定します。
| 記号 | 公差の種類 | 意味 | 使用例 |
|---|---|---|---|
| ⊕ | 位置度 | 理論的正確位置からのずれ | ボルト穴ピッチ、コネクタピン位置 |
| ◎ | 同心度/同軸度 | 中心点・軸線が一致していること | 段付き軸、同心穴 |
| ≡ | 対称度 | 中心面がデータム中心面と一致 | キー溝、スリット |
4. 振れ公差(関連形体 ― データム必要)
データム軸線まわりに1回転させたときの変動量を規定します。
| 記号 | 公差の種類 | 意味 | 使用例 |
|---|---|---|---|
| ↗ | 円周振れ | 1断面での回転時変動量 | 歯車のピッチ面、プーリ外周 |
| ↗↗ | 全振れ | 全長にわたる回転時変動量 | 研削スピンドル、主軸 |
データムとは?設定方法と優先順位
データム(Datum)とは、幾何公差を評価するための基準となる形体(面・軸線・点)のことです。姿勢公差・位置公差・振れ公差の指示にはデータムの指定が必須です。
データムの図面指示方法
- データムにしたい形体に▲記号(データムターゲット記号)を配置
- 大文字アルファベット(A, B, C...)でデータムを識別
- 公差記入枠の3番目以降のセルにデータム文字を記入
データムの優先順位(第1・第2・第3)
複数のデータムを指定する場合、記入枠の左から順に優先度が高くなります。
- 第1データム(プライマリ):最も重要な基準。通常は最大の接触面や主軸
- 第2データム(セカンダリ):第1データムに直角な方向の基準
- 第3データム(ターシャリ):残りの自由度を拘束する基準
注意:データムの順序を入れ替えると測定結果がまったく変わります。組立時にどの面が最初に接触するかを考慮して順序を決定してください。
幾何公差の図面記入方法
公差記入枠の構成
幾何公差は長方形の枠(公差記入枠)に情報を記入します。枠は左から以下のセルに分かれています。
| セル位置 | 記載内容 | 記入例 |
|---|---|---|
| 第1セル | 幾何特性記号 | ⊥(直角度) |
| 第2セル | 公差値(mm) | 0.05 |
| 第3セル | 第1データム | A |
| 第4セル | 第2データム(必要時) | B |
| 第5セル | 第3データム(必要時) | C |
指示線の引き方
- 面に対する指示:外形線(またはその延長線)に矢印を垂直にあてる
- 軸線・中心面に対する指示:寸法線と一直線上に配置する
- 指示線は公差記入枠の左端または右端から引き出す
追加記号
| 記号 | 意味 | 使用場面 |
|---|---|---|
| ⌀ | 公差域が円形・円筒形 | 位置度で円形公差域を指定する場合 |
| Ⓜ | 最大実体公差方式(MMC) | 組立性を重視し、サイズに応じて公差を緩和 |
| Ⓛ | 最小実体公差方式(LMC) | 最小肉厚を確保したい場合 |
| CZ | 共通公差域 | 複数の形体を一つの公差域で管理 |
実務でよく使う幾何公差の選び方
14種類以上ある幾何公差のうち、実務で頻繁に使用するのは以下の7種類です。
使用頻度の高い幾何公差TOP7
| 順位 | 公差の種類 | 典型的な使用場面 | 設定のコツ |
|---|---|---|---|
| 1 | 位置度 | ボルト穴のピッチ管理 | ⌀付きで指示し、MMC併用で組立性を確保 |
| 2 | 平面度 | シール面・取付基準面 | 面圧分布を考慮して値を決定 |
| 3 | 直角度 | フランジ面と軸の関係 | 組立後の振れに直結するため慎重に設定 |
| 4 | 平行度 | スライドガイド面 | 摺動精度に影響。平面度より大きい値にする |
| 5 | 円周振れ | 回転体の外周面 | 回転バランスと直結。動的バランスも考慮 |
| 6 | 同軸度 | 段付き軸の中心合わせ | 円周振れで代替できるケースも多い |
| 7 | 真円度 | 軸受嵌合部 | 軸受メーカーの推奨値を参照 |
幾何公差でよくある間違いと対策
間違い1:データムの優先順位を深く考えずに設定
A→B→CとC→B→Aでは測定結果がまったく異なります。
対策:組立時に最初に接触する面を第1データムとし、部品の拘束順序と一致させましょう。
間違い2:寸法公差と幾何公差の矛盾
寸法公差で±0.1mmとしながら、位置度で⌀0.05mmと指定するのは現実的に不可能です。
対策:幾何公差の値は寸法公差と整合性を持たせ、加工・測定の実現性を確認しましょう。
間違い3:不要な幾何公差の過剰指示
機能上不要な面にまで幾何公差を指示すると、加工コスト・検査コストが跳ね上がります。
対策:組立上のキー面のみに絞って指示し、一般面は普通幾何公差(JIS B 0419)に委ねましょう。
間違い4:同軸度と円周振れの混同
同軸度は中心軸のずれ、円周振れは回転時の変動量です。測定方法も異なります。
対策:回転体の品質管理であれば、実務的には円周振れのほうが測定が容易で実用的な場合が多いです。
普通幾何公差(JIS B 0419)の活用
個別に幾何公差を指示しない形体には、普通幾何公差(JIS B 0419 / ISO 2768-2)が適用されます。図面の注記欄に等級を記載することで、一括で幾何公差の基準を設定できます。
等級一覧
| 等級 | 記号 | 適用 |
|---|---|---|
| 精級 | H | 精密機械部品 |
| 中級 | K | 一般機械部品(最もよく使われる) |
| 粗級 | L | 溶接構造物、板金部品 |
図面注記の記載例:「普通幾何公差 JIS B 0419 - K」
幾何公差とAI図面解析:デジタル化への対応
幾何公差は記号体系が複雑なため、紙図面のデジタル化において特に読み取りが困難な領域です。近年のAI-OCR技術では以下の対応が進んでいます。
- 公差記入枠の自動検出:枠構造を認識し、特性記号・公差値・データム文字を個別に抽出
- データム記号の関連付け:図面上のデータム▲記号と公差記入枠のデータム文字を自動で紐付け
- 3Dモデルへの自動付与:読み取った幾何公差情報を3D CADモデルに自動反映し、3DA化を支援
renueでは、製造業・建設業向けの図面AI-OCRソリューションを提供しています。幾何公差を含む複雑な図面記号の自動読み取り・データ化について、お気軽にご相談ください。
まとめ
幾何公差は、寸法公差だけでは表現しきれない部品の「形の正しさ」を図面で明確に指示するための強力なツールです。
- 幾何公差は形状・姿勢・位置・振れの4カテゴリ、14~16種類の記号で構成
- データムの設定と優先順位が公差評価の鍵。組立順序と一致させる
- 実務では位置度・平面度・直角度の使用頻度が特に高い
- 個別指示しない面には普通幾何公差(JIS B 0419)を活用してコストを最適化
- 寸法公差との整合性確認と、不要な過剰指示の回避がコスト管理の要

