株式会社renue
renueについて
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寸法公差とは?なぜ図面に必要なのか
寸法公差とは、図面で指示された寸法に対して許容される誤差の範囲です。どんなに精密な加工機械でも、指示寸法ぴったりに仕上げることは物理的に不可能です。温度・湿度・工具の摩耗・素材の状態などにより、必ずばらつきが生じます。
寸法公差を図面で指示する目的は以下の通りです。
- 組立の保証:相手部品と確実に嵌合・組み付けができる寸法範囲を規定する
- 品質の安定:加工者によるばらつきを一定範囲に収め、品質を均一化する
- コストの最適化:必要以上に厳しい公差を避け、加工コストを適正に抑える
寸法公差の基本用語
| 用語 | 意味 | 例(φ50 +0.025/0 の場合) |
|---|---|---|
| 基準寸法 | 図面で指示する理想的な寸法 | 50mm |
| 上の許容差 | 基準寸法に対する許容最大値の偏差 | +0.025mm |
| 下の許容差 | 基準寸法に対する許容最小値の偏差 | 0mm |
| 最大許容寸法 | 基準寸法 + 上の許容差 | 50.025mm |
| 最小許容寸法 | 基準寸法 + 下の許容差 | 50.000mm |
| 公差(公差幅) | 最大許容寸法 − 最小許容寸法 | 0.025mm |
寸法公差の指示方法:3つのパターン
パターン1:数値で直接指示
寸法値の後ろに上下の許容差を記入する方法です。最も一般的な指示方法です。
| 表記例 | 意味 |
|---|---|
| 50 ±0.1 | 49.9~50.1mmの範囲で仕上げる(両側対称公差) |
| 50 +0.1/-0.05 | 49.95~50.1mmの範囲(片寄り公差) |
| 50 +0.025/0 | 50.000~50.025mm(穴基準のH7等) |
| 50 0/-0.025 | 49.975~50.000mm(軸基準のh7等) |
パターン2:はめあい記号で指示
穴と軸の組み合わせ精度が重要な場合、はめあい記号を使います。
- 穴:φ50H7(上の許容差 +0.025、下の許容差 0)
- 軸:φ50g6(上の許容差 -0.009、下の許容差 -0.025)
φ50のH7・g6・h7の数値は、ミスミの穴の許容差表と軸の許容差表を参照しています。はめあい記号の詳細は当サイトの「はめあい公差 完全ガイド」をご覧ください。
パターン3:普通公差(一般公差)で一括指示
個別に公差を指示しない寸法に対して、図面の注記で一括指定する方法です。
普通公差(JIS B 0405)完全解説
普通公差は、図面等で適用規格・等級を指定した場合に、個別に公差指示がない対象寸法へ適用する公差です。JIS B 0405:1991は、金属の除去加工または板金成形による部品の寸法を対象としています。
適用方法
図面の表題欄または注記欄に以下のように記載します。
- 「普通公差 JIS B 0405-m」(中級を適用する場合)
- 「一般公差 JIS B 0405 精級(f)」(精級を適用する場合)
公差等級の種類
| 等級 | 記号 | 適用場面 |
|---|---|---|
| 精級 | f (fine) | 精密機械部品。高精度が求められる場合 |
| 中級 | m (medium) | 一般機械部品などで、要求機能と加工能力に合う場合 |
| 粗級 | c (coarse) | 比較的大きな許容差を認められる除去加工・板金成形の対象寸法 |
| 極粗級 | v (very coarse) | 大きな許容差を認められる除去加工面など。鋳造面の公差は別規格・仕様を確認 |
長さ寸法の普通公差一覧表
| 基準寸法の区分 | 精級(f) | 中級(m) | 粗級(c) | 極粗級(v) |
|---|---|---|---|---|
| 0.5以上~3以下 | ±0.05 | ±0.1 | ±0.2 | − |
| 3超~6以下 | ±0.05 | ±0.1 | ±0.3 | ±0.5 |
| 6超~30以下 | ±0.1 | ±0.2 | ±0.5 | ±1.0 |
| 30超~120以下 | ±0.15 | ±0.3 | ±0.8 | ±1.5 |
| 120超~400以下 | ±0.2 | ±0.5 | ±1.2 | ±2.5 |
| 400超~1000以下 | ±0.3 | ±0.8 | ±2.0 | ±4.0 |
| 1000超~2000以下 | ±0.5 | ±1.2 | ±3.0 | ±6.0 |
| 2000超~4000以下 | − | ±2.0 | ±4.0 | ±8.0 |
(単位:mm。面取り部分を除く長さ寸法の表です。0.5mm未満は個別に許容差を指定します。出典:ミスミのJIS B 0405:1991抜粋表)
角度寸法の普通公差一覧表
| 対象角度の短い方の辺の長さ区分(mm) | 精級(f) | 中級(m) | 粗級(c) | 極粗級(v) |
|---|---|---|---|---|
| 10以下 | ±1° | ±1° | ±1°30' | ±3° |
| 10超~50以下 | ±0°30' | ±0°30' | ±1° | ±2° |
| 50超~120以下 | ±0°20' | ±0°20' | ±0°30' | ±1° |
| 120超~400以下 | ±0°10' | ±0°10' | ±0°15' | ±0°30' |
| 400超 | ±0°5' | ±0°5' | ±0°10' | ±0°20' |
面取り・丸みの普通公差
角度および面取りの数値も、ミスミのJIS B 0405抜粋表に基づきます。以下はかどの丸み・面取り寸法の表で、寸法と許容差の単位はmmです。0.5mm未満は個別に許容差を指定します。
| 基準寸法の区分 | 精級(f) | 中級(m) | 粗級(c) | 極粗級(v) |
|---|---|---|---|---|
| 0.5以上~3以下 | ±0.2 | ±0.2 | ±0.4 | ±0.4 |
| 3超~6以下 | ±0.5 | ±0.5 | ±1.0 | ±1.0 |
| 6超 | ±1.0 | ±1.0 | ±2.0 | ±2.0 |
公差の決め方:実務的な指針
公差設定の基本原則
- 機能に必要な公差のみ個別指示:嵌合面・シール面・位置決め面など
- その他は普通公差に委ねる:適用する規格・等級を、必要な機能と加工能力に合わせて選ぶ
- 加工能力を考慮する:加工方法の標準精度を超える公差は不要にコストアップする
加工方法別の精度:公開資料にある条件付きの例
| 加工方法 | 加工会社・設備・対象を限定した公表値の例 |
|---|---|
| レーザー切断 | アサヒピー.エムの3Dパイプレーザー加工では±0.1mm程度。材質・加工形状で異なる |
| フライス加工 | ミスミのプラスチック金型用工作機械の例では、汎用フライス盤の一般加工精度±0.02mm、精密加工精度±0.01mm |
| 旋盤加工 | メイホーの設備公表値では、NC旋盤NLX3000の加工精度±0.01mm(加工範囲φ300×650mm) |
| 研削加工 | ミスミの金型用成形研削盤の例では、一般加工精度±0.01mm、精密加工精度±0.002mm |
| ワイヤーカット | ミスミの金型用ワイヤ放電加工機の例では、一般加工精度±0.01mm、精密加工精度±0.002mm |
| 板金曲げ | ミスミの板金加工品の仕様例では、基準寸法6mm超〜30mm以下の曲げ加工部が±0.5mm(一部型式は別条件) |
| 鋳造 | 昭和鉄工のロストワックス精密鋳造では、寸法50〜100mmの一般公差±0.50mm、特別公差±0.45mm |
これらは対象や設備が異なる公表例で、すべての加工品への保証値ではありません。個別公差は必要な機能から定め、材質・寸法・形状・数量・検査条件を伝えて、発注先と実現可能な範囲を確認しましょう。
寸法公差でよくある間違いと対策
間違い1:すべての寸法に個別公差を指示
機能に関係のない寸法にまで±0.05等の厳しい公差を指示すると、加工コストが大幅に上がります。
対策:機能と加工条件に合う普通公差を指定し、それでは要求を満たさない寸法に個別公差を指示しましょう。
間違い2:普通公差等級の記載漏れ
図面に普通公差の指示がないと、加工者が独自の判断で仕上げ、品質がばらつきます。
対策:表題欄に必ず「JIS B 0405-m」等の普通公差等級を記載しましょう。
間違い3:公差の積み重ね(公差チェーンの未考慮)
複数の寸法を積み重ねると、各寸法の公差も累積して最終的な誤差が大きくなります。
対策:基準面を設定し、そこからの寸法で指示する「基準面方式」を採用しましょう。
間違い4:片側公差と両側公差の使い分けミス
穴径に両側対称公差(±0.05)を使う場合も、相手軸の許容寸法との組み合わせを確認し、意図したすきま・しめしろになるようにします。
対策:基準穴Hはプラス方向(φ50H7の例:+0.025/0)、基準軸hはマイナス方向(φ50h7の例:0/-0.025)の片側公差です。他の公差域もあるため、必要なはめあいに応じて公差域と等級を選びます。
ISO普通公差との関係
JIS B 0405はISO 2768-1に対応しています。海外向け図面ではISO規格番号で記載することがあります。
| JIS規格 | ISO規格 | 対象 |
|---|---|---|
| JIS B 0405 | ISO 2768-1 | 長さ寸法・角度寸法の普通公差 |
| JIS B 0419 | ISO 2768-2:1989(廃止済み) | 幾何特性の普通公差 |
従来の海外向け図面には「ISO 2768-mK」のような表記があります(mは寸法公差の中級、Kは幾何公差の中級)。ISO 2768-2:1989は2021年に廃止され、後継はISO 22081:2021です。ISO 2768-1:1989とJIS B 0419:1991は2026年9月確認時点で有効です。新規図面では取引先と適用規格・版・指示方式を確認してください。
寸法公差と図面AI
寸法公差の情報は図面のAI解析において重要な抽出対象です。以下は活用を検討する項目であり、採用するシステムと対象図面で対応範囲・精度を検証します。
- 公差値の自動認識:「±0.1」「+0.025/0」などの公差表記をOCRで読み取り、数値データとして構造化
- 普通公差の自動適用:注記欄の規格・等級を検出し、寸法区分や適用対象を確認して、個別公差のない寸法への適用を支援
- 加工見積への活用:公差の厳しさと加工条件に基づく加工方法の検討・コスト見積を支援
renueの図面AIは、図面の読み取り・構造化に対応しています。寸法公差を含む図面情報の読み取りのような開発も可能ですので、お気軽にご相談ください。
まとめ
- 寸法公差は基準寸法に対する許容誤差の範囲。加工品質とコストのバランスを管理する
- 指示方法は数値直接指示・はめあい記号・普通公差の3パターン
- 普通公差(JIS B 0405)はf(精級)・m(中級)・c(粗級)・v(極粗級)の4等級
- 必要な機能と加工能力から等級を選ぶ。普通公差を適用する場合は図面等に規格と等級を記載する
- 個別公差は機能面のみに指示し、加工方法の達成精度を超えない範囲で設定
- 従来の海外図面にはISO 2768-mKの形式がある。新規図面は適用規格の現行状態を確認




