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鋳造品の図面が切削加工品と異なる理由
鋳造品(鋳物)は、溶かした金属を型(鋳型)に流し込んで凝固させて作る部品です。切削加工品とは製造プロセスが根本的に異なるため、図面にも鋳造特有の指示事項が必要になります。
- 抜き勾配:鋳型から模型(木型)を抜くためのテーパーが必要
- 鋳造丸み(R):角部の応力集中と鋳造欠陥を防止するための丸み
- 均一肉厚:冷却速度の差による変形・引け巣を防ぐ設計
- 削り代(仕上げしろ):機械加工面に付ける鋳造時の余肉
- CT公差:鋳造品専用の寸法公差体系(JIS B 0403)
鋳造品の抜き勾配
砂型鋳造では鋳型から木型(模型)を抜き取るため、金型鋳造やダイカストでは製品を金型から取り出すために、垂直面に勾配(テーパー)を設けます。
抜き勾配の目安
| 鋳造方法 | 外面 | 内面(中子側) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 砂型鋳造 | 1°~3° | 2°~5° | JIS B 0403に基づく。高さに応じて変動 |
| 金型鋳造 | 1°~2° | 2°~3° | 砂型より精度が高い分、小さな勾配で可 |
| ダイカスト | 1°~3° | 2°~5° | 深いリブは5°~10°推奨(英語文献データ) |
図面への指示:断面図上にテーパー角度を記入するか、注記で「鋳造抜き勾配は1/30~1/200とする」と一括指示。JIS B 0403には寸法Lの範囲ごとの勾配基準値Aが規定されています。
鋳造丸み(R)の設計と指示
鋳造品の角部や隅部には必ず丸み(R)をつけます。これには以下の理由があります。
- 鋳造応力の緩和:角部への応力集中を防ぎ、割れ・変形を抑制
- 引け巣の防止:角部に溶湯が十分に回り、健全な鋳造組織を形成
- 鋳型の保護:鋳型の角部が欠けにくくなり、砂落ちを防止
鋳造丸みの目安
| 部位 | 推奨R | 根拠 |
|---|---|---|
| 内側の隅R | R3~R5(肉厚の1/3~1/2) | JIS推奨。応力集中緩和に効果的 |
| 外側の角R | R1~R3 | 鋳型保護と外観品質 |
| リブの付け根R | 肉厚の0.2~0.4倍 | 中国語技術文献のデータ。引け巣防止 |
図面への指示:「指示なき鋳造丸みはR3とする」と注記で一括指示。機械加工する面の丸みは削り代に含まれるため、加工後にRがなくなる設計とします。
肉厚設計のルール
鋳造品の肉厚は品質に直結する最重要パラメータです。肉厚が不均一だと、冷却速度の差により以下の欠陥が発生します。
- 引け巣(ひけす):厚肉部の中心に空洞ができる
- 変形・反り:冷却速度差による残留応力で変形
- 割れ:薄肉部と厚肉部の接続部に応力集中
材質別の最小肉厚目安
| 材質 | 砂型鋳造 最小肉厚 | ダイカスト 最小肉厚 |
|---|---|---|
| ねずみ鋳鉄(FC) | 4~6mm | - |
| 球状黒鉛鋳鉄(FCD) | 3~5mm | - |
| 鋳鋼(SC) | 6~8mm | - |
| アルミ合金鋳物(AC) | 3~5mm | 1.0~2.5mm |
| 亜鉛合金ダイカスト | - | 0.6~1.5mm |
英語文献データ:ダイカストの肉厚は一般的に1.0~5.0mm(0.040~0.200インチ)の範囲で、合金・部品形状・サイズ・用途によって最適値が異なります。
肉厚の遷移ルール
肉厚が変化する部分は急激に変えず、テーパー状に緩やかに遷移させます。
- 遷移勾配:1:4~1:5(厚い側から薄い側へ)
- T字接合部:接合部のRを大きくし、肉厚差を吸収
- 十字接合の回避:4本のリブが1点で交差すると厚肉部が発生。ずらして配置
削り代(仕上げしろ)の指示
鋳造品の鋳肌面(黒皮)は寸法精度・表面粗さが低いため、機械加工する面には「削り代」として余分な肉を付けます。
削り代の目安(JIS B 0403参照)
| 鋳造方法 | 削り代の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 砂型鋳造(小物~中物) | 3~5mm | 上面は多め(5~7mm) |
| 砂型鋳造(大物) | 5~10mm | 鋳物サイズに比例 |
| 金型鋳造 | 1.5~3mm | 砂型より寸法精度が高い |
| ダイカスト | 0.25~1mm | 英語文献:最小0.25mm(表面clean up用) |
中国語技術文献データ:砂型鋳造の一般的な加工余量は4~10mm。導轨面(ガイド面)や軸孔などの精密面には12mmの加工余量が推奨されています。
図面への指示方法
- 機械加工面を太い一点鎖線で囲い、加工面であることを示す
- 注記:「鋳造品の削り代は JIS B 0403 MAG-E(又は指定等級)とする」
- 個別指示:加工面ごとに「削り代 5mm」と記入
鋳造品の寸法公差(CT公差)
鋳造品にはJIS B 0405(一般機械部品の普通公差)ではなく、JIS B 0403で規定されるCT公差を使用します。
CT公差等級
| 等級 | 適用 | 代表的な鋳造方法 |
|---|---|---|
| CT1~CT4 | 高精度 | ダイカスト、精密鋳造(ロストワックス) |
| CT5~CT8 | 中精度 | 金型鋳造、低圧鋳造 |
| CT9~CT12 | 一般精度 | 砂型鋳造(機械造型) |
| CT13~CT16 | 低精度 | 砂型鋳造(手込め)、大型鋳物 |
図面への指示:注記に「鋳造品の寸法公差は JIS B 0403 CT10 とする」と記載。
鋳造品図面の注記テンプレート
- 材質:FC250(JIS G 5501)
- 鋳造寸法公差:JIS B 0403 CT10
- 削り代:JIS B 0403 MAG-E
- 指示なき鋳造丸みはR3とする
- 指示なき抜き勾配は1/50とする
- 鋳造欠陥(巣・割れ・砂噛み)は不可
- 機械加工面の鋳肌は除去加工必須記号で指示
- 鋳仕上面の表面粗さ:Ra 25以下(参考)
鋳造品図面でよくある間違い
間違い1:角部にRをつけない
切削加工品の感覚でピン角にすると、鋳造応力で割れが発生します。
対策:すべての角部に最低R3を指示。注記で一括指示が効率的。
間違い2:削り代を考慮しない寸法記入
完成品の寸法だけ記入し、鋳造品としての素材寸法(削り代込み)が不明確。
対策:加工面は太い一点鎖線でマーク。削り代の等級を注記に明記。
間違い3:肉厚の急激な変化
薄肉部と厚肉部が隣接すると、引け巣と変形の原因になります。
対策:肉厚変化は1:4~1:5の勾配で遷移させる。
鋳造品図面とAI
鋳造品の図面はCT公差・削り代・鋳造丸みなど固有の指示が多く、AIによる自動解析の効果が大きい領域です。
- 鋳造方案のレコメンド:過去の鋳造品図面データベースから、形状・材質が類似する鋳造方案を自動推薦
- CT公差・削り代の自動抽出:図面注記から公差等級と削り代を構造化データに変換
- 鋳造シミュレーション連携:図面から3Dモデルを生成し、湯流れ・凝固シミュレーションに接続
renueでは、鋳造品を含む製造図面のAI読み取り・見積自動化ソリューションを提供しています。お気軽にご相談ください。
まとめ
- 鋳造品の図面には抜き勾配・鋳造丸み・均一肉厚・削り代・CT公差の指示が必要
- 抜き勾配は砂型1°~3°、ダイカスト1°~3°(深いリブは5°~10°)
- 鋳造丸みは内隅R3~R5(肉厚の1/3~1/2)が標準
- 肉厚は均一に保ち、変化部は1:4~1:5の勾配で遷移
- 削り代は砂型3~10mm、金型1.5~3mm、ダイカスト0.25~1mm
- 寸法公差はJIS B 0405ではなくJIS B 0403のCT公差(CT1~CT16)を使用
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