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ボルトの強度区分とは?数字の意味
ボルトの強度区分は、JIS B 1051(ISO 898-1に対応)で規定される「ボルトの強さ」を表す分類です。「8.8」「10.9」「12.9」のように小数点を含む数字で表記され、この数字からボルトの引張強さと耐力(降伏点)が読み取れます。
数字の読み方
- 小数点の前の数字:呼び引張強さ(MPa)の1/100
- 小数点の後の数字:呼び耐力と呼び引張強さの比率の10倍
例:10.9 = 引張強さ 10×100 = 1000 MPa、耐力 = 1000×0.9 = 900 MPa
主要な強度区分一覧表
| 強度区分 | 引張強さ (MPa) | 耐力 (MPa) | 硬度 (HRC) | 材質の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 4.6 | 400 | 240 | - | 低炭素鋼(SS400相当) |
| 4.8 | 420 | 340 | - | 低炭素鋼 |
| 5.6 | 500 | 300 | - | 中炭素鋼 |
| 5.8 | 520 | 420 | - | 中炭素鋼 |
| 6.8 | 600 | 480 | - | 中炭素鋼 |
| 8.8 | 800(M16以下)/ 830(M16超) | 640 / 660 | 22~32 | 中炭素鋼 焼入焼戻し(SCM435等) |
| 9.8 | 900 | 720 | 28~34 | 中炭素鋼 焼入焼戻し |
| 10.9 | 1040 | 940 | 32~39 | 合金鋼 焼入焼戻し(SCM440等) |
| 12.9 | 1220 | 1100 | 39~44 | 合金鋼 焼入焼戻し(SCM440H等) |
8.8・10.9・12.9の使い分け
強度区分 8.8:中強度の標準ボルト
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 引張強さ | 800~830 MPa |
| 用途 | 自動車部品、産業機械、建設機械の一般的な締結 |
| 特徴 | 強度とコストのバランスが最も良い。最も広く使われる高力ボルト |
| SAE対応 | SAE Grade 5にほぼ相当 |
強度区分 10.9:高強度ボルト
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 引張強さ | 1040 MPa |
| 用途 | 橋梁・高層建築の構造接合、風力発電タワー、大型トラック、EVバッテリーパック |
| 特徴 | 高強度構造接合の標準。コスト-性能の最適バランス |
| SAE対応 | SAE Grade 8にほぼ相当 |
英語文献データ:10.9は高強度構造接合からEVバッテリーパック組立まで、幅広い分野で「デフォルト仕様」として採用されています。コスト-性能の最適バランスがその理由です。
強度区分 12.9:超高強度ボルト
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 引張強さ | 1220 MPa |
| 用途 | 航空機エンジン、レーシングカー、安全装置の重要接合部 |
| 特徴 | 最高強度だが水素脆化リスクが高い。選定には注意が必要 |
| SAE対応 | SAE Grade 8を超える |
英語文献からの重要警告:12.9ボルトは亜鉛めっきやカドミウムめっきを施すと水素脆化(水素ぜいか)のリスクが顕著に高まります。高強度ボルトの表面処理は慎重に選定してください。
強度区分の選定フロー
- 必要な締付力(軸力)を計算:被締結体の荷重・振動・安全率から必要軸力を算出
- ボルトサイズを仮決定:必要軸力を達成できるボルト径を選定
- 強度区分を選択:
- 一般的な機械 → 8.8
- 高荷重・構造接合 → 10.9
- 最高強度が必要な特殊用途 → 12.9(水素脆化リスクを評価した上で)
- ナットの強度区分を合わせる:8.8ボルトには8ナット、10.9ボルトには10ナット
ボルト頭部の識別マーク
強度区分は、ボルトの頭部に刻印されている数字で識別できます。
| 強度区分 | 頭部刻印 | 備考 |
|---|---|---|
| 4.6 | なし(又は4.6) | 無刻印は低強度品の可能性 |
| 8.8 | 8.8 | 最も見かける高力ボルト |
| 10.9 | 10.9 | 構造用高力ボルト |
| 12.9 | 12.9 | 超高強度。特殊用途向け |
図面への強度区分の指示方法
- パターン1:部品リスト(BOM)で指示
「M10×30 六角ボルト 強度区分10.9 三価クロメート」 - パターン2:注記で指示
「指示なきボルト・ナットの強度区分は 8.8/8 とする」 - パターン3:組立図の引き出し線で指示
個別のボルトに引き出し線で「M12×40 10.9」と記入
ナットとの組み合わせルール
| ボルト強度区分 | 対応ナット強度区分 | 備考 |
|---|---|---|
| 4.6, 4.8, 5.6, 5.8 | 5 | 低強度ボルト用 |
| 6.8 | 6 | 中強度用 |
| 8.8 | 8 | 最も一般的な組み合わせ |
| 9.8 | 9 | |
| 10.9 | 10 | 構造用高力ボルトの標準 |
| 12.9 | 12 | 超高強度。ナットも特殊品 |
重要:ボルトより強度区分が低いナットを使うと、ナット側のねじ山がせん断破壊します。必ず対応する強度区分のナットを使用してください。
よくある間違いと対策
間違い1:強度区分を指定せずにボルトを注文
強度区分未指定だと4.6や4.8の低強度品が納品される可能性があります。
対策:図面・BOMに強度区分を必ず明記。
間違い2:12.9を「念のため」で選定
12.9は水素脆化リスクが高く、めっき処理との組み合わせで突然破断する危険性があります。
対策:必要な強度を計算で確認し、10.9で足りるならそちらを選択。
間違い3:ボルトとナットの強度区分不一致
10.9ボルトに8ナットを使うと、ナットのねじ山がせん断破壊します。
対策:ボルトとナットの強度区分を必ず対応させる。
ボルト強度区分と図面AI
- BOMからの強度区分自動抽出:図面の部品リストから強度区分を自動読み取り
- ボルト-ナット整合性チェック:強度区分の不一致をAIが自動検出
- 発注リストの自動生成:図面全体のボルト・ナットを集計し、強度区分別に発注リストを生成
renueでは、ボルト仕様を含む図面情報のAI読み取り・BOM自動生成ソリューションを提供しています。
まとめ
- 強度区分の数字は「引張強さ(MPa)/100」.「耐力/引張強さ×10」
- 一般機械は8.8、高荷重構造は10.9、特殊用途は12.9
- 10.9がコスト-性能の最適バランスで多くの産業分野のデフォルト
- 12.9は水素脆化リスクが高い。めっき処理との組み合わせに注意
- ナットの強度区分はボルトに対応させる(8.8→8ナット、10.9→10ナット)
- 図面にはBOM・注記・引き出し線のいずれかで強度区分を明記
