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表面処理とは?図面で指示する目的
表面処理とは、金属部品の表面に防錆・耐摩耗・装飾などの機能を付与する加工の総称です。めっき・アルマイト・塗装・化成処理などが代表的です。
図面で表面処理を正しく指示しないと、以下の問題が発生します。
- 耐食性不足:適切な防錆処理がされず、短期間で錆びる
- 寸法不良:めっき膜厚分の寸法変化を考慮せず、嵌合不良になる
- 外観不良:色・光沢・均一性が要求と異なる仕上がりになる
- コスト超過:過剰な仕様指定で不要なコストが発生する
表面処理のJIS記号表記法
JIS H 0404(めっき)やJIS H 8602(アルミニウム陽極酸化)などで、表面処理の記号表記が規定されています。
めっきのJIS記号構成(JIS H 0404)
めっきの記号は以下の順序で構成されます。
素地の種類 / めっきの種類 めっきの厚さ めっきタイプ / 後処理 : 使用環境
各要素の説明
| 要素 | 記号例 | 意味 |
|---|---|---|
| 素地の種類 | Fe(鉄鋼)、Cu(銅合金)、Al(アルミ) | めっきを施す母材の種類 |
| めっきの種類 | Ep-Zn(電気亜鉛)、Ep-Ni(電気ニッケル) | めっき方法と金属種 |
| めっきの厚さ | 8(8μm)、20(20μm) | 最小膜厚(μm単位) |
| めっきタイプ | b(光沢)、s(半光沢) | 外観仕上げ |
| 後処理 | CM3(三価クロメート) | めっき後の化成処理 |
JIS記号の表記例
| JIS記号 | 読み方 |
|---|---|
| Fe/Ep-Zn 8/CM3 | 鉄素地に電気亜鉛めっき8μm、三価クロメート処理 |
| Fe/Ep-Ni 10b | 鉄素地に電気ニッケルめっき10μm、光沢仕上げ |
| Fe/Ep-Cu 10/Ep-Ni 15b/Ep-Cr 0.3 | 鉄素地に銅下地10μm+ニッケル15μm+クロム0.3μm(装飾クロムめっき) |
主要な表面処理の図面指示方法
1. 亜鉛めっき(ユニクロ・三価クロメート)
鉄鋼部品の最も一般的な防錆処理です。
| 処理名 | 図面注記例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 三価クロメート(白) | 亜鉛めっき 三価クロメート 膜厚8μm以上 | RoHS対応。銀白色。現在の主流 |
| 三価クロメート(黒) | 亜鉛めっき 三価黒色クロメート 膜厚8μm以上 | RoHS対応。黒色 |
| ユニクロ(六価) | 亜鉛めっき ユニクロメート | 虹色光沢。RoHS非対応で廃止傾向 |
注意:六価クロムを含むユニクロ・クロメートはRoHS指令で規制対象です。新規設計では三価クロメートを指定しましょう。
2. 無電解ニッケルめっき
| 図面注記例 | 用途 |
|---|---|
| 無電解ニッケルめっき 膜厚10~15μm | 均一な膜厚が必要な精密部品 |
| 無電解ニッケルめっき 膜厚25μm以上 HV500以上 | 耐摩耗性が必要な場合 |
3. 硬質クロムめっき
| 図面注記例 | 用途 |
|---|---|
| 硬質クロムめっき 膜厚20~30μm | シリンダーロッド、摺動面 |
| 硬質クロムめっき 膜厚50μm 研削仕上げ | 高耐摩耗が必要な軸 |
4. アルマイト(陽極酸化処理)
アルミニウム部品の代表的な表面処理です。JIS H 8602で規定されています。
| 種類 | 図面注記例 | 膜厚目安 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 普通アルマイト(白) | アルマイト処理 膜厚10~15μm | 5~25μm | 一般防食・装飾 |
| 黒アルマイト | 黒色アルマイト処理 膜厚10~15μm | 10~20μm | 光学機器・電子機器カバー |
| 硬質アルマイト | 硬質アルマイト処理 膜厚30~50μm | 25~100μm | 摺動面・耐摩耗面 |
| カラーアルマイト | アルマイト処理 赤色 膜厚10μm以上 | 10~20μm | 意匠部品・識別用 |
アルマイトのJIS記号例
AA 10 S(A) = アルマイト処理、膜厚10μm、封孔処理あり、A級(一般屋内用)
5. 黒染め(四三酸化鉄被膜)
| 図面注記例 | 特徴 |
|---|---|
| 黒染め処理 | 膜厚1~2μm。寸法変化がほぼゼロ。安価な防錆処理 |
6. 塗装(焼付塗装・粉体塗装)
| 図面注記例 | 特徴 |
|---|---|
| 焼付塗装 マンセルN1.5(黒) 膜厚30~50μm | 色はマンセル値またはRAL番号で指定 |
| 粉体塗装 RAL 7035(ライトグレー) 膜厚60~80μm | 厚膜で耐久性が高い。屋外機器に最適 |
7. リン酸塩被膜(パーカーライジング)
| 図面注記例 | 特徴 |
|---|---|
| リン酸マンガン被膜処理 | 摺動面の初期馴染み改善。防錆油との相性良好 |
| リン酸亜鉛被膜処理(塗装下地) | 塗装密着性の向上。自動車ボディ等 |
表面処理と寸法の関係
表面処理は部品の寸法を変化させます。この影響を図面で正しく管理することが重要です。
膜厚による寸法変化の目安
| 表面処理 | 典型的な膜厚 | 寸法変化(片側) | 寸法変化(直径) |
|---|---|---|---|
| 亜鉛めっき | 8μm | +8μm | +16μm |
| 無電解ニッケル | 15μm | +15μm | +30μm |
| 硬質クロム | 30μm | +30μm | +60μm |
| 普通アルマイト | 10μm | 約+5μm | 約+10μm |
| 硬質アルマイト | 50μm | 約+25μm | 約+50μm |
| 黒染め | 1μm | ほぼゼロ | ほぼゼロ |
※アルマイトは膜厚の約半分が素地に浸透するため、寸法増加は膜厚の約50%です。
図面での寸法基準の明記
嵌合部や精密寸法では、寸法が表面処理前なのか後なのかを必ず明記します。
- 「図面寸法は表面処理後の仕上がり寸法を示す」 — 加工者が膜厚分を差し引いて加工
- 「図面寸法は表面処理前の素地寸法を示す」 — 加工者は図面通りに加工し、膜厚分だけ大きくなる
表面処理の図面指示テンプレート
注記欄に記載する標準的な指示テンプレートです。
全面処理の場合
- 表面処理:三価クロメートめっき(白) 膜厚8μm以上
- 表面処理:黒色アルマイト処理 膜厚10~15μm
- 表面処理:粉体塗装 RAL 7035 膜厚60~80μm
部分処理の場合
- A面:硬質クロムめっき 膜厚20~30μm(研削仕上)
- その他の面:無電解ニッケルめっき 膜厚10μm
- マスキング指示:ねじ部(M6タップ穴×4か所)はめっき不要
処理除外(マスキング)の指示
ねじ穴・嵌合面・導通面など、表面処理を施すと機能に支障が出る箇所は除外指示が必要です。
- 「ねじ穴内面はめっき不要」
- 「アース接点面はアルマイト処理不要(導通確保のため)」
- 「嵌合面φ50H7部はめっき後研削仕上」
表面処理指示のよくある間違いと対策
間違い1:RoHS非対応の六価クロムめっきを指定
ユニクロメートや有色クロメートは六価クロムを含み、RoHS指令の規制対象です。
対策:三価クロメートに切り替えましょう。性能面でも遜色ありません。
間違い2:膜厚指定なしのめっき指示
「亜鉛めっき」とだけ書くと、業者によって3μm~15μmまでばらつきが出ます。
対策:最低膜厚を必ず指定しましょう(例:膜厚8μm以上)。
間違い3:嵌合部の膜厚未考慮
H7/g6のはめあい面にめっきを施すと、膜厚分だけ寸法が変わり嵌合不良になります。
対策:嵌合面の寸法基準(処理前/処理後)を明記するか、めっき後研削を指示しましょう。
表面処理と図面AI
表面処理の指示は注記欄のテキスト情報として記載されるため、AI-OCRによる自動抽出の重要な対象です。
- 処理名と膜厚の自動抽出:「三価クロメートめっき 膜厚8μm」からめっき種類・膜厚を構造化データに変換
- コスト自動算出:表面処理の種類と部品サイズから処理コストを自動概算
- RoHS適合チェック:六価クロム系の指示を自動検出しアラートを出す
renueでは、表面処理指示を含む図面注記のAI読み取り・構造化ソリューションを提供しています。お気軽にご相談ください。
まとめ
- 表面処理の図面指示には処理名・膜厚・色・マスキング箇所を明記
- めっきのJIS記号は素地/めっき種 膜厚 タイプ/後処理の順で構成
- 三価クロメートが鉄鋼部品の標準防錆処理(RoHS対応)
- アルマイトは普通/黒/硬質/カラーの4種。膜厚の約50%が素地に浸透
- 嵌合面では寸法基準(処理前/処理後)を必ず明記。膜厚による寸法変化に注意
- ねじ穴・導通面はマスキング(処理除外)を忘れずに指示
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