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S45Cの焼入れ・調質・硬度 完全ガイド|熱処理条件(水冷/油冷)・焼戻し温度別硬度表・SCM440との使い分け【2026年版】

2026/4/14

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S45Cの焼入れ・調質・硬度 完全ガイド|熱処理条件(水冷/油冷)・焼戻し温度別硬度表・SCM440との使い分け【2026年版】

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株式会社renue

2026/4/14 公開

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S45Cとは?機械構造用炭素鋼の代表格

S45Cは、JIS G 4051で規定される機械構造用炭素鋼鋼材で、炭素含有量が約0.42~0.48%の中炭素鋼です。「S=Steel、45=炭素量0.45%、C=Carbon」の意味で、焼入れ焼戻しにより幅広い硬度に調整できることから、軸・ピン・歯車・カムなどの機能部品に最も多く使われる材質です。

S45Cの国際規格対応

規格体系対応記号
JIS(日本)S45C
AISI/SAE(米国)1045
DIN/EN(欧州)C45 / 1.0503
GB(中国)45#(45号鋼)

S45Cの基本物性

項目条件
密度7.85 g/cm³
引張強さ≧570 MPa(焼ならし)JIS G 4051
降伏点≧345 MPaJIS G 4051
伸び≧20%JIS G 4051
硬度(素材)HB 160~220圧延・引抜のまま
硬度(調質後)HB 200~270(HRC 20~30)焼入焼戻し後
溶接性やや劣る(予熱推奨)炭素量0.45%のため

S45Cの熱処理の種類と条件

1. 焼入れ焼戻し(調質)

S45Cで最も一般的な熱処理。全体を均一に硬化させます。

工程温度冷却方法達成硬度
焼入れ820~860°C水冷HRC 50~60
焼入れ820~860°C油冷HRC 43~53
焼戻し(調質)550~660°C空冷HRC 20~35

英語文献データ:AISI 1045の焼入れ後の硬度はHRC 55~58が一般的で、最大HRC 62に達します。ただし水焼入れは割れのリスクが高いため、油焼入れが推奨されています。保持時間の目安は断面25mmあたり10~15分です。

調質硬度の目安

焼戻し温度達成硬度(HRC)引張強さ(MPa)目安用途イメージ
200°C50~551700~1900高硬度が必要な耐摩耗面
400°C35~421100~1400中程度の強度と靭性のバランス
550°C25~32800~1000標準的な調質(最も汎用的)
650°C20~25650~800靭性重視の調質

2. 高周波焼入れ

表面のみを硬化させる局所的な熱処理。摺動面・歯面に使用。

項目条件
表面硬度HRC 50~58
有効硬化層深さ1.0~3.0mm(用途により調整)
心部硬度HRC 15~25(素材のまま)

図面指示例:「高周波焼入れ 表面硬度 HRC 50~55 有効硬化層深さ 1.5~2.5mm」

3. 焼きならし

組織の均一化・機械的性質の改善。鍛造後や溶接後に行います。

項目条件
加熱温度840~880°C
冷却方法空冷
硬度HB 170~220

4. 焼きなまし

軟化・被削性の改善。切削加工前の前処理。

項目条件
加熱温度830~860°C
冷却方法炉冷(ゆっくり冷却)
硬度HB 137~170

S45Cの図面指示パターン

パターン1:調質材として使用

  • 表題欄の材質:S45C(調質 HRC 25~30)
  • JIS記号:S45C ○H(○の中にH = 焼入焼戻し)

パターン2:高周波焼入れ部品

  • 表題欄の材質:S45C
  • 注記:「破線部 高周波焼入れ HRC 50~55 有効硬化層深さ 1.5~2.5mm」
  • 図面上に二点鎖線で焼入れ範囲を囲む

パターン3:素材のまま使用

  • 表題欄の材質:S45C(熱処理指示なし)
  • 用途:中程度の強度で十分な部品。焼入れ不要だがSS400より強度が欲しい場合

S45Cと他の材質の比較

項目SS400S45CSCM440
分類一般構造用鋼機械構造用炭素鋼クロムモリブデン鋼
炭素量不定(低め)0.42~0.48%0.38~0.43%
焼入れ不可可(水冷/油冷)可(油冷推奨)
焼入れ後硬度-HRC 43~60HRC 48~55
焼入れ性-小径部品のみ均一硬化大径でも均一硬化(Mo添加効果)
価格安いやや高い高い
用途架台・フレーム軸・ピン・歯車高強度軸・大型歯車

S45CとSCM440の使い分け指針

  • 小径部品(φ30以下)→ S45Cで十分。焼入れが芯まで入る
  • 大径部品(φ30超)→ SCM440を検討。S45Cでは芯部が硬化しない可能性
  • 高い靭性が必要→ SCM440(Cr+Moで靭性向上)

S45Cの加工上の注意点

切削加工

  • 素材のまま(HB 160~220)は被削性良好。標準的な切削条件で問題なし
  • 調質材(HRC 25~30)は切削抵抗が上がる。超硬工具推奨
  • 焼入れ材(HRC 50超)は研削加工が必要。切削は不可

溶接

  • 炭素量0.45%のため、溶接性はやや劣る
  • 150~250°Cの予熱が推奨。低水素系溶接棒を使用
  • 溶接後は応力除去焼鈍(SR処理)が望ましい

S45Cでよくある設計ミス

ミス1:SS400で済む部品にS45Cを指定

焼入れしないのにS45Cを選ぶと、材料費が上がるだけです。

対策:焼入れが不要ならSS400を検討。

ミス2:大径部品にS45Cの全体焼入れを指示

φ50以上のS45Cでは芯部まで硬化しない(質量効果)。

対策:大径の全体焼入れにはSCM440を使用。S45Cなら高周波焼入れで表面のみ硬化。

ミス3:水焼入れによる割れ

S45Cの水焼入れは急冷による割れリスクが高い。特に形状が複雑な部品や断面変化部。

対策:油焼入れを基本とし、硬度不足の場合のみ水焼入れを検討。図面には「油冷」と明記。

S45Cと図面AI

  • 材質記号の自動認識:表題欄からS45Cを自動検出し、熱処理条件との整合性をチェック
  • 熱処理指示の自動抽出:「調質 HRC 25~30」「高周波焼入れ HRC 50~55」を構造化データに変換
  • 材質×熱処理の妥当性検証:SS400に焼入れ指示がある等の矛盾をAIが自動検出

renueでは、材質・熱処理情報を含む図面のAI読み取り・品質チェックソリューションを提供しています。

まとめ

  • S45Cは炭素量0.45%の中炭素鋼。焼入れにより幅広い硬度に調整可能
  • 焼入れ後硬度:水冷 HRC 50~60、油冷 HRC 43~53。油冷が割れリスク低く推奨
  • 標準的な調質:焼戻し550~660°C → HRC 25~32
  • 高周波焼入れ:表面 HRC 50~55、有効硬化層1.0~3.0mm
  • 大径部品(φ30超)では芯部が硬化しない。SCM440への切替を検討
  • 溶接時は予熱150~250°Cと低水素系溶接棒が必要

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FAQ

よくある質問

S45CはJIS G 4051で規定される機械構造用炭素鋼で、炭素含有量が約0.42〜0.48%の中炭素鋼です。焼入れ焼戻しにより幅広い硬度に調整できることから、軸・ピン・歯車・カムなどの機能部品に最も多く使われる汎用材質です。

820〜870度に加熱後、水冷または油冷で急冷するのが標準的な焼入れ条件です。水冷の方が硬度は高くなりますが、割れやすくなるリスクもあります。肉厚の大きい部品や形状が複雑な部品では油冷を選択し、焼き割れを防止します。

焼入れ後の焼戻し温度が高いほど硬度は低くなり靭性が増します。150〜200度ではHRC55〜60程度、400度ではHRC35〜40程度、600度ではHRC20〜25程度になります。使用条件に求められる硬度と靭性のバランスで焼戻し温度を選定します。

調質とは焼入れ後に高温焼戻し(550〜650度程度)を行う熱処理で、硬度と靭性のバランスが良い状態を作ります。S45Cの調質品はHRC20〜30程度の硬度で、機械部品の素材として最も一般的に使用される状態です。

S45Cは安価で入手性が良く一般的な機械部品に適しています。SCM440はクロムモリブデンを含む合金鋼で、S45Cより焼入れ性が高く、大型部品でも芯部まで均一に硬化します。高い強度や耐摩耗性が必要な場合や大型部品にはSCM440を選択します。

S45Cは中炭素鋼のため切削加工性は比較的良好です。調質前(生材)の状態が最も加工しやすく、調質後は硬度が上がるため切削速度の調整が必要です。焼入れ後の仕上げ加工には研削が必要になるケースが多く、加工手順を考慮した設計が重要です。

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