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保育士の平均年収は406万8,100円(厚労省 令和6年賃金構造基本統計調査)— 数字を分解する
「保育士の年収」を調べると、出典によって250万円から500万円まで幅広い数字が出てくる。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和6年(2024年実施分)によると、保育士(正社員)の月額決まって支給する給与・年間賞与等を年収換算した平均値は 406万8,100円。一方で公立保育園・私立保育園・認可外施設・年齢・地域で年収レンジが大きく分かれており、また2025年度から処遇改善等加算が一本化され、2026年度はさらに5.3%の賃上げが予定されている過渡期にある。
本記事では、(a) 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和6年公表分)、(b) こども家庭庁が所管する処遇改善等加算制度の最新整理、(c) 内閣府「子ども・子育て支援新制度」関連資料、を一次ソースとして保育士の年収構造を分解する。これから保育士を目指す人、既に保育園で働いていてキャリアを考えている人、を主な想定読者にしている。
引用する一次データはすべて公開されているので、自分で再確認できる:
- 賃金構造基本統計調査 一覧(厚生労働省)
- 賃金構造基本統計調査 保育士関連統計表(e-Stat)
- こども家庭庁 公式サイト(処遇改善等加算所管)
- 内閣府 公式サイト(子ども・子育て支援新制度)
- 厚生労働省 子ども・子育て関連政策ページ
2026年度に5.3%賃上げ — 過去2番目の処遇改善幅
政府は保育士の処遇改善を継続的に進めており、こども家庭庁所管の制度上、2024〜2025年度にかけて10.7%(過去最大)の人件費引き上げが実施され、2026年度はさらに約5.3%の追加引き上げが予定されている(過去2番目の幅)。これにより常勤保育士の平均年収はおおむね420万円台に到達する見通しが各種解説で示されている。
賃上げの財源は内閣府「子ども・子育て支援新制度」とこども家庭庁の処遇改善等加算で、保育園を経由して職員に分配される。厚生労働省 賃金構造基本統計調査の年次推移を追うことで、制度改正の成果が実数値で確認できる。
処遇改善等加算の制度改正:2025年度から区分①〜③に一本化
2025年度(令和7年度)から、これまでの「処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」が廃止され、新たに区分①(すべての職員の底上げ)・区分②(役職・経験に応じた改善)・区分③(専門性の向上支援)の3区分に整理された。所管はこども家庭庁。
- 区分①:すべての保育士・職員に対する基本処遇の底上げ。経験年数や役職に関わらず適用される。
- 区分②:副主任・専門リーダー・職務分野別リーダー等の役職に応じた加算。経験年数の長い保育士の処遇を高める。
- 区分③:研修修了・キャリアアップ研修等の専門性向上支援。資格取得や継続学習にインセンティブを設計。
これは旧制度(加算Ⅰ=勤続年数、加算Ⅱ=キャリアアップ、加算Ⅲ=月額9,000円相当の一律支給)の複雑さを解消し、施設運営者が活用しやすい形に整理したもの。詳細はこども家庭庁の処遇改善等加算ページで公開されている。
公立保育園 vs 私立保育園:年収差の構造
同じ「保育士」でも、公立保育園(市区町村運営)と私立保育園(社会福祉法人・株式会社等)では年収構造が異なる。厚生労働省 賃金構造基本統計調査の経営母体別集計が一次ソースとなる。
- 公立保育園(地方公務員):自治体の給与表に従い、勤続年数ベースで安定的に上昇する。退職金・年金制度も含めて生涯収入は高水準。厚生労働省 賃金構造基本統計調査令和6年公表分では、私立保育園より平均年収が高い傾向。
- 私立保育園(社会福祉法人):補助金水準と運営法人の方針で給与体系が決まる。処遇改善等加算で公立との差は縮小傾向。
- 株式会社運営の保育園:賃金水準は法人ごとに大きな差がある。賞与の有無や昇給ペースは法人規模に依存。
- 認可外保育施設:処遇改善等加算の対象外(一部の施設を除く)で、認可施設より平均年収は低い傾向(こども家庭庁の認可外指針参照)。
公立保育園は採用枠が限られているため競争率が高く、私立保育園が日本の保育士雇用の大半を占める。キャリア初期に公立を目指すか、私立で経験を積んで処遇改善等加算で年収を上げるか、というのが基本的な分岐点。
年代別の年収カーブ:新卒350万円台 → 30代400万円台 → 40代以降450万円超
保育士の年代別年収カーブは、勤務先によらず勤続年数に応じてゆるやかに上昇する。e-Stat 賃金構造基本統計調査(令和6年公表分)の年齢階層別集計を年収換算した目安:
- 新卒〜20代前半(保育士1〜3年目):厚生労働省 賃金構造基本統計調査の20代前半・専門職帯。新卒保育士の初任給は概ね月額18〜20万円(年収換算で300万円台前半)。
- 20代後半(経験4〜7年):同統計の20代後半・専門職帯。年収350〜400万円帯が中心。
- 30代前半(経験8〜12年・主任候補):処遇改善等加算 区分②の対象になり始め、年収400万円台前半。
- 30代後半(経験13〜17年・主任・副主任):年収420〜460万円帯。こども家庭庁の処遇改善等加算 区分②が効く。
- 40代以降(主任・園長候補):年収450万円超〜600万円台。園長クラスで上振れ。
- 50代以降(園長・施設長):法人規模・園規模に応じて600万円超まで上振れする層もある。
このカーブは「同一施設で勤続したケース」の標準値で、転職での昇給は限定的。職場環境を変えたい場合でも、勤続年数に応じた処遇改善が前提のため、長く勤めるほど処遇が上がる構造になっている。
地域別の年収格差:東京・神奈川 vs 地方
保育士の年収は地域でも差がある。地域手当・住居手当・地方公務員給与の地域差が主因。厚生労働省 賃金構造基本統計調査の都道府県別集計を整理すると:
- 東京都・神奈川県・大阪府:地域手当が高く、私立認可保育園でも年収450万円超のケースがある。こども家庭庁の地域別配分でも上位。
- 愛知県・福岡県・北海道:全国平均並みの処遇水準。
- 地方都市・郡部:地域手当が低く、平均年収は350万円台が中心。生活コストの差を考慮すれば実質購買力は東京と大きく違わない。
東京都の私立保育園では、独自に保育士確保策として年額10〜30万円規模の住居手当・キャリア手当を上乗せする法人があり、若手保育士のリクルーティング競争が激化している。内閣府の少子化対策の一環として、保育士確保が政策アジェンダになっている。
キャリアアップ研修と専門性向上:処遇改善 区分③の活用
こども家庭庁の処遇改善等加算 区分③(専門性の向上支援)は、保育士のキャリアアップに直結する制度。厚生労働省 子ども・子育て関連政策ページでも、キャリアアップ研修の体系が整理されている。
- 乳児保育:0〜2歳児保育の専門研修。修了で月額4,000円の処遇改善対象(旧加算Ⅱ相当)。
- 幼児教育:3〜5歳児教育の専門研修。同上。
- 障害児保育:発達支援が必要な子どもへの保育研修。同上。
- 食育・アレルギー対応:食物アレルギー・離乳食支援の研修。同上。
- 保健衛生・安全対策:感染症対策・SIDS対策・事故予防の研修。同上。
- 保護者支援・子育て支援:保護者カウンセリング・地域子育て支援の研修。同上。
- マネジメント:副主任・専門リーダー候補のマネジメント研修。月額40,000円規模の処遇改善対象(区分②相当)。
これらの研修を計画的に修了することで、年収を体系的に引き上げられる。逆に研修を受けず勤続年数だけで処遇改善が止まると、年収カーブが平坦になる。
幼稚園教諭・認定こども園・小規模保育との違い
保育士と並列で語られる職種に、幼稚園教諭・認定こども園職員・小規模保育事業者がある。厚生労働省と文部科学省がそれぞれ所管している領域で、年収構造も異なる:
- 幼稚園教諭:文部科学省所管の幼稚園で勤務。年収は学校法人の規模で決まり、私立幼稚園は私立保育園より給与水準が高めの傾向。
- 認定こども園職員:保育士+幼稚園教諭の両資格が望ましい(保育教諭)。こども家庭庁が所管する給付金体系で年収が決まる。
- 小規模保育事業(A型・B型・C型):0〜2歳児中心の小規模施設。配置基準・処遇改善等加算は認可保育所と同等。
- 家庭的保育(保育ママ):自宅で少人数を保育する事業。年収は市区町村の補助単価に依存。
- 院内保育・企業主導型保育:病院・企業内保育施設。こども家庭庁所管の企業主導型保育事業助成金が年収水準に影響。
幼稚園教諭資格と保育士資格を両方持つ「保育教諭」は、認定こども園・幼保連携型施設で需要が高い。資格を併せ持つことで転職市場での選択肢が広がる。
保育士不足と処遇改善の今後
内閣府の少子化対策およびこども家庭庁の保育人材確保政策により、保育士の処遇改善は政策アジェンダの上位にある。背景は (i) 待機児童解消政策で保育施設が増えた一方、(ii) 保育士の有効求人倍率が長年高水準で推移、(iii) 離職率も依然として高い、という構造的課題。
政策的には、(a) 処遇改善等加算の継続的拡充、(b) ICT・保育記録自動化による業務負担軽減、(c) 配置基準の見直し(4歳児・5歳児の配置改善)、が今後の主要テーマ。厚生労働省 子ども・子育て関連政策とこども家庭庁の政策動向を継続的にウォッチすることが、長期的なキャリア設計には欠かせない。
AI・ICT領域での保育士の新キャリア
本記事の最後に、AI・ICT領域における保育士の新キャリア展開について触れておく。
2024〜2026年にかけて、(i) 保育記録(連絡帳・午睡チェック・保育日誌)のデジタル化、(ii) 保育所運営管理SaaSの普及、(iii) 保護者連絡・登降園管理アプリの定着、により、保育園の業務環境は大きく変化している。こども家庭庁もICT化を補助対象として支援を継続。
- 保育SaaSのプロダクト責任者・PdM:保育士経験を活かして保育所運営SaaSの企画・開発に携わる職種。
- 保育園経営コンサルタント:処遇改善等加算の最適活用や運営改善を支援する職種。
- 子ども関連メディア・編集者:保育士向けメディアや子育てメディアの編集・記事制作。
- 子育て支援NPO・行政関連職員:地域子育て支援拠点や行政の子育て支援事業に従事。
- 企業内保育所の運営責任者:こども家庭庁所管の企業主導型保育事業の現場責任者。
renue でも、保育・教育領域の業務システム開発や、子育て世代の社員支援の文脈で保育・福祉領域の知見が求められるケースがある。保育士資格 × デジタル領域のスキルを持つ人材は、転職市場で希少性プレミアムが付きやすい。
キャリアの選択肢を整理する
本記事は保育士の年収を一次データで分解することを主題にしてきたが、最後にキャリアパスの選択肢を整理する:
(A) 公立保育園・公務員ルート。最も安定的な処遇パス。地方公務員給与表ベースで生涯収入は高水準。
(B) 私立保育園で主任・園長を目指す。処遇改善等加算 区分②・③を活用して年収450〜600万円帯へ。
(C) 認定こども園・幼保連携型施設。保育教諭として両資格を活かす。
(D) 企業主導型保育・院内保育。こども家庭庁所管の助成事業で、企業内のニーズに応える。
(E) 保育SaaS・教育テック領域。保育現場経験を生かしてプロダクト・コンサル領域に転身。
(F) 子育て支援NPO・行政の子ども関連部署。地域全体の子育て支援に関わる。
(G) 独立系(家庭的保育・ベビーシッター・保育コンサル)。働き方の自由度が高い反面、収入は事業規模に依存。
これら7つの選択肢を並べたうえで、自分のライフステージ・キャリアの軸・家族の合意と照らし合わせて、もっとも整合する道を選ぶのが健全な判断。年収だけでなく、業務内容・働き方・成長軸・将来の選択肢を全部テーブルに乗せて比較するのが大事。
保育・教育×AI領域のキャリアに興味がある方へ
renueでは、保育・教育・福祉の現場経験を活かして、業務システム・SaaS・AI実装領域でキャリアを伸ばしたい方とのカジュアル面談を実施しています。現場知見と技術領域を交差させる選択肢を率直にお話しできます。
まとめ
- 保育士の平均年収は406万8,100円(厚労省 令和6年賃金構造基本統計調査)。2026年度に5.3%賃上げ予定で420万円台到達見通し。
- 処遇改善等加算は2025年度から区分①〜③に一本化。こども家庭庁が所管。
- 公立保育園は地方公務員として安定処遇、私立保育園は処遇改善等加算で年収を引き上げる構造。
- キャリアアップ研修(乳児保育・幼児教育・マネジメント等)の修了で年収を体系的に引き上げ可能。
- 保育SaaS・認定こども園・企業主導型保育・行政・NPOなど、キャリアパスは7種以上。
