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病院の診療情報管理部門の業務内容|電子カルテ・DPC・ICD-11とAI医療コーディングの全体像【2026年版】

2026/4/23

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病院の診療情報管理部門の業務内容|電子カルテ・DPC・ICD-11とAI医療コーディングの全体像【2026年版】

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2026/4/23 公開

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病院の診療情報管理部門の業務内容|電子カルテ・DPC・ICD-11とAI医療コーディングの全体像【2026年版】

病院の診療情報管理部門(診療情報管理室・医療情報管理室・医療情報部などと呼ばれる組織)は、診療録(カルテ)・看護記録・検査・画像・処方・手術記録・退院サマリー等の医療情報を、電子カルテ(EHR)・病院情報システム(HIS)上で管理し、DPCコーディング・ICDコーディング・統計・品質管理・研究利活用まで担う、病院の「情報インフラの要」となる専門部門です。診療情報管理士(日本病院会・医療研修推進財団が認定する資格)が中核人材として配置されます。2024年度診療報酬改定での「電子的診療情報連携体制整備加算」、2026年度冬頃を目指す電子カルテ情報共有サービスの本格運用、世界的なICD-11への移行、生成AIによる医療コーディング自動化、AIスクライブ(ambient AI)の実装が同時進行しており、診療情報管理部門の業務設計が過去10年で最も大きく変わる時期を迎えています。本記事では診療情報管理部門の業務範囲と、AIで変わる領域/変わらない領域を3階層で整理します。

診療情報管理部門の全体像

部門が担う主な機能

関連する主な制度・機関

診療情報管理士の資格と位置づけ

診療情報管理士は日本病院会・医療研修推進財団・全日本病院協会・日本医療法人協会が共同認定する民間資格で、2年制の専門教育または通信教育・認定試験を経て取得します。DPC対象病院・大学病院・大規模病院では、診療情報管理士の配置が実務的に必須となっており、統計・コーディング・研究データ整備の中核人材です。

診療情報管理部門の主要業務フロー

ステップ1:入院・外来診療情報の受領・点検

電子カルテに入力される医師の診療記録、看護記録、検査・画像・処方・手術・リハビリ等の記録を、退院時・定期時点で点検します。不完全な記載、誤記、必須項目漏れを検出し、医師・看護師に確認・修正依頼します。

ステップ2:ICDコーディング

医師が記載した傷病名を、ICD-10(現行)の標準分類に変換します。例えば「高血圧」はI10、「2型糖尿病」はE11といった階層コードに分類。複雑な症例では複数コーディング、主病名・副病名の区別、妊娠出産・新生児等の特殊ルールを適用します。

ステップ3:DPCコーディング

入院患者の主要診断・副病名・処置・手術をDPC(2,000以上の診断群分類)に適用し、在院日数・医療資源投入量に応じた1日当たり包括点数を算定します。DPCコードの誤りは病院収益に直結するため、退院時・月次で点検・修正を行います。

ステップ4:退院サマリー・品質監査

退院サマリー(退院時要約)の完全性を確認します。記載漏れ、医師署名、退院後の紹介先医療機関への情報提供体制を整備します。病院機能評価(JCI・JCI認定等)・学会認定施設要件にも関わります。

ステップ5:統計・経営データ作成

診療実績、DPC係数、在院日数、手術件数、紹介・逆紹介率、症例構成比、病床稼働率等の統計を作成します。病院経営会議・理事会・外部公表用データを提供します。

ステップ6:開示請求対応・研究利活用

患者・遺族・司法機関からの診療情報開示請求に対応します。次世代医療基盤法に基づく匿名加工医療情報の提供、臨床研究・治験への情報提供、学会発表用データ作成を実施します。

ステップ7:情報システム運用・ガイドライン対応

電子カルテ・HIS・PACS・RIS・検査システムの運用、マスター管理、更新対応、医療情報システム安全管理ガイドラインへの準拠、サイバーセキュリティ対策を継続します。

求められる専門性とキャリアパス

必要な知識領域

  • 医学・医療用語:基礎医学、臨床医学、解剖生理、薬理、検査
  • ICDコーディング:ICD-10、ICD-11、JLAC10/11、分類規則、コーディングガイドライン
  • DPC制度:診断群分類、入院基本料、加算、包括範囲、出来高併用
  • 診療報酬制度:レセプト、保険点数、施設基準、加算算定要件
  • 医療情報システム:電子カルテ、HIS、PACS、RIS、LIS、HL7 FHIR、JAHIS標準
  • 統計学・疫学:臨床指標、QI、疫学、集計・分析
  • 法令・個人情報保護:医療法、個人情報保護法、次世代医療基盤法

キャリアパス

  • 縦の深化:診療情報管理士→主任→副主任→室長→医療情報部長。DPC専門・ICD専門・システム運用専門・統計分析専門等の分岐
  • 横の拡張:病院経営企画、医事課、看護部、事務長、医療情報ベンダー、健保組合、PMDAなどへの転身
  • 学術・教育:診療情報管理士養成課程の講師、医療情報学会・病院会での活動、大学院進学(医療情報学・公衆衛生学)
  • AI・DX特化:医療AI・電子カルテベンダー・メドテックスタートアップへの転身、AI医療コーディング専門職

診療情報管理部門でのAI活用の設計観点:3階層で整理する

観点1:日本の診療報酬×電子カルテ情報共有サービス×AI医療コーディングのレイヤー

日本の診療情報管理部門でAIを導入する際の第一階層は、日本独自の診療報酬制度・DPC制度・電子カルテ情報共有サービス・個人情報保護法制に適合した業務設計です。

  • AI医療コーディング支援:退院サマリー・診療記録・手術記録をLLMで解析し、ICD-10・ICD-11候補、DPC診断群候補を自動提示。診療情報管理士が最終確認し修正する「human-in-the-loop」設計
  • 電子カルテ品質点検AI:必須項目の記載漏れ、矛盾する記載、用語の標準化、医師署名の確認等を自動検出
  • AIスクライブ(ambient AI):医師の音声を自動で構造化された診療記録に変換。医師の記載負担軽減と記録品質向上
  • DPC最適化分析AI:過去のDPCコーディング実績から、より適切な主病名選定・処置コーディングを提案(不適切なコーディングは保険監査リスクにつながるため、医師・診療情報管理士・医事課レビューが必須)
  • 統計・経営レポート自動生成:DPC指標、在院日数、症例構成比等の経営ダッシュボード、部門別レポート、学会・厚労省向け報告書のドラフト生成
  • 匿名加工医療情報の生成支援:次世代医療基盤法に基づく匿名加工データ作成の品質担保
  • 医療情報システム運用の文書化・FAQ:電子カルテ操作マニュアル、FAQ、院内問合せ対応の自動化

日本特有の注意点として、2026年度冬頃から本格運用予定の「電子カルテ情報共有サービス」が診療情報管理部門の業務に大きなインパクトを与えます。医療機関間・患者本人との情報共有が標準化される中で、AIによる品質点検・コーディング支援が「加算算定の前提」となる構図が進みます。また、医療情報の機微性から、AIが単独で確定する設計は避け、診療情報管理士・医師・医事課が最終判断する「human-in-the-loop」を制度的に担保する必要があります。

観点2:グローバル医療AI×ICD-11×EHR統合のレイヤー

グローバルでは、ICD-11への移行とAI医療コーディングの本格実装が2026年の業界標準になりつつあります。My Billing Provider「AI Medical Coding 2026: Preparing for ICD-11」HelpSquad「The 2026 Guide to AI in Medical Coding: Accuracy, Compliance, and the Human-in-the-Loop」等が、2026年のAI医療コーディング標準を整理しています。

日本の診療情報管理部門への示唆は、ICD-11移行・電子カルテ情報共有サービス本格運用・AI医療コーディング本格実装が2026〜2028年に重なるという点です。欧米では既にAI医療コーディングが実装フェーズに入っており、日本もキャッチアップが必要です。一方で、日本は診療報酬制度・DPC制度・言語(日本語医療用語)の独自性があり、海外ベンダーのAIをそのまま使うのは困難で、日本特有のコーディングルール・制度知識に合わせたAI設計が必要です。

観点3:中国病院×AI電子病歴×ICD編碼のレイヤー

中国は国家衛生健康委員会主導で「AI+病案」「AI+電子病歴」が急速に進み、国家標準・応用シーンガイドが整備されています。

中国事例の示唆は、国家標準・国家政策のもとで大規模にAI医療コーディング・電子病歴AIが展開されるスピード感です。日本は医療制度・言語・保険制度が異なるため同じスケールは困難ですが、国家標準化・業界標準化を前提としたAI設計の方向性は参考になります。

AI化される領域と、AI化されない領域の切り分け

AI化が進む領域

  • 退院サマリー・手術記録からのICDコード候補提示
  • DPC診断群コード候補提示
  • 電子カルテの記載完全性・整合性チェック
  • AIスクライブによる診療音声の構造化記録
  • 医療用語・略語の標準化・マスター管理
  • 統計・経営ダッシュボードの自動更新
  • 学会・研究用データセットの抽出・匿名化支援
  • 情報開示請求対応のドラフト文書生成
  • 医療情報システム運用マニュアル・FAQの自動化
  • 不適切コーディングの予兆検知(保険監査リスク低減)

AI化されない・すべきでない領域

  • ICDコード・DPCコードの最終確定:保険請求・病院収益・臨床統計の基礎となるコーディングの最終責任は診療情報管理士・医師
  • 医師の診療判断・治療方針:AIは支援に留まり、診断・治療決定は医師の責任
  • 医療事故・訴訟対応時の記録対応:法的責任・証拠保全が伴う記録対応は専門職・弁護士
  • 患者・遺族への開示対応:感情面・法的面の配慮が必要な開示は人間が対応
  • 個人情報保護・サイバーインシデント対応:漏えい・不正アクセス事故への対応は責任者・CSIRT
  • 医療制度変更への対応設計:診療報酬改定・加算要件変更への組織対応は医療情報部長・病院経営層
  • ベンダー・システム選定・更新:数千万〜数億円規模の電子カルテ更新は経営判断
  • 地域医療連携・患者紹介関係:地元医療機関・開業医との信頼関係は人間同士の営みに依存

診療情報管理部門におけるAI活用の大原則は、「AIは候補提示・品質点検・記録支援で貢献、コード確定・診療判断・事故対応・患者対応は人間が担う」という切り分けです。医療は人命・法的責任・個人情報の機微性が高度に重なる領域で、AIの出力を鵜呑みにする設計は制度的にも倫理的にも許容されません。

診療情報管理部門の立ち上げ・強化のポイント

組織設計

  • 診療情報管理士・コーダー:ICD・DPCコーディング、退院サマリー点検
  • 統計・経営データ担当:DPC指標・QI・病院指標・研究データ
  • システム運用・DXチーム:電子カルテ・HIS・PACS・AI基盤運用
  • 情報開示・法務:開示請求、次世代医療基盤法、個人情報保護
  • セキュリティ・CSIRT:医療情報システム安全管理ガイドライン、サイバー対策
  • 臨床研究・治験連携:研究用データ提供、IRB対応
  • 診療報酬・加算対応:施設基準、加算算定、診療報酬改定

AI導入ロードマップ

  1. 第1段階(データ基盤):電子カルテ・HIS・PACS・レセプトのデータ統合基盤
  2. 第2段階(AI品質点検):記載漏れ・整合性チェックの自動化
  3. 第3段階(AIコーディング支援):ICD・DPCコード候補の自動提示
  4. 第4段階(AIスクライブ):診療音声の構造化記録
  5. 第5段階(統合エージェント):記録〜コーディング〜統計〜加算算定まで一気通貫のAI支援。診療情報管理士・医師・医事課が最終承認

各段階で「AIの影響範囲」「人間承認のライン」「個人情報保護・サイバーセキュリティ」を明確にし、医療法・医療情報システム安全管理ガイドライン・次世代医療基盤法との整合を取ることが必須です。

まとめ:診療情報管理部門は「医療情報の品質」とAI活用を両立させる中核

病院の診療情報管理部門は、医療情報の品質・コーディング・統計・研究利活用を担う情報インフラの要です。2026年はICD-11移行、電子カルテ情報共有サービス本格運用、AIスクライブ・AI医療コーディングの実装が同時進行し、AIによるコード候補提示・品質点検・記録支援・統計自動化が業界標準として広がる一方、コード最終確定・診療判断・事故対応・個人情報保護は人間の中核業務として残ります。

日本の診療情報管理部門がこの変化を勝ち抜くには、日本の診療報酬制度・DPC制度・日本語医療用語・電子カルテ情報共有サービスに最適化したAIの導入と、診療情報管理士・医師・医事課との役割分担の明確化を同時に進める必要があります。AIで節約した時間を、ICD-11移行準備・加算算定対応・地域医療連携・研究利活用といった付加価値業務に振り向ける設計が、病院の競争力を決めます。

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よくある質問

Q1. 診療情報管理部門と医事課はどう違いますか?

診療情報管理部門は診療録の管理・品質・ICDコーディング・DPCコーディング・統計・研究利活用が中心、医事課はレセプト作成・保険請求・医療費計算・患者会計・未収金対応が中心です。両者はDPCコーディング・レセプト点検で密接に連携しますが、役割は異なります。小規模病院では兼任される場合もあります。

Q2. 診療情報管理士資格はどう取得しますか?

日本病院会・医療研修推進財団・全日本病院協会・日本医療法人協会が共同認定する民間資格で、2年制の指定専門学校または通信教育を修了し、年1回の認定試験に合格することで取得できます。DPC病院・大学病院では実務上必須の資格となっており、継続教育・更新制度も運用されています。

Q3. AI医療コーディングはどの程度信頼できますか?

業界メディアの公開値では、AI支援で一次コーディング精度が大幅に向上するとの報告があります(ベンダー自己申告、病院規模・専門科・言語で差が大きい)。一方、希少疾患、複合症例、医学的判断が必要な症例では人間コーダーのレビューが不可欠で、AIは「候補提示+品質チェック」、最終確定は「人間」という役割分担が基本です。

Q4. ICD-11移行は日本でいつから始まりますか?

WHOはICD-11を2022年に発効しており、各国で移行が進行中です。日本は厚労省・医療情報学会等で移行検討が進められており、診療情報管理部門はICD-10・ICD-11両方への対応準備が必要です。AIはICD-11の55,000超のコード・クラスター論理に対応する観点で特に有用と考えられます。

Q5. 電子カルテ情報共有サービスは何が変わりますか?

厚労省が2026年度冬頃の本格運用を目指す「電子カルテ情報共有サービス」は、医療機関間・患者本人の間で標準化された医療情報(6情報:傷病名・アレルギー・感染症・処方・検査・生活習慣病等)を共有する基盤です。診療情報管理部門は対応コード・マスター整備、AI品質点検、加算算定対応が求められる中核部門として、業務範囲が拡大します。

病院のAI活用・診療情報管理DXのご相談はrenueへ

renueは業務プロセスの深い理解に基づく汎用LLM活用を得意とする「自社実証型」AIコンサルティングファームです。医療機関向けAI活用(音声カルテ入力PoC検討等の実績)をもとに、AI医療コーディング・電子カルテ品質点検・統計自動化など、医療法・医療情報安全管理ガイドライン・個人情報保護法との整合を含めた設計から伴走します。

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renueは553のAIツールを自社運用する「自社実証型」AIコンサルティングファームです。

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FAQ

よくある質問

診療情報管理部門は診療録の管理・品質・ICDコーディング・DPCコーディング・統計・研究利活用が中心、医事課はレセプト作成・保険請求・医療費計算・患者会計・未収金対応が中心。両者はDPCコーディング・レセプト点検で密接に連携するが役割は異なる。

日本病院会等が共同認定する民間資格で、2年制の指定専門学校または通信教育を修了し年1回の認定試験に合格することで取得。DPC病院・大学病院では実務上必須、継続教育・更新制度も運用。

業界メディアの公開値では一次コーディング精度が大幅に向上するとの報告あり(ベンダー自己申告、病院規模・専門科・言語で差が大きい)。希少疾患・複合症例は人間コーダーのレビューが不可欠。AIは候補提示+品質チェック、最終確定は人間。

WHOはICD-11を2022年に発効、各国で移行が進行中。日本は厚労省・医療情報学会等で移行検討が進み、診療情報管理部門はICD-10・ICD-11両方への対応準備が必要。AIはICD-11の55,000超のコード・クラスター論理に対応する観点で特に有用。

厚労省が2026年度冬頃の本格運用を目指すサービスで、医療機関間・患者本人の間で標準化された6情報を共有する基盤。診療情報管理部門は対応コード・マスター整備、AI品質点検、加算算定対応が求められ業務範囲が拡大。

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