ゼロトラストとは?基本的な意味と定義
ゼロトラスト(Zero Trust)とは、「社内ネットワーク内にいるユーザーでも自動的に信頼しない」というセキュリティの考え方・モデルです。「Never Trust, Always Verify(決して信頼せず、常に検証せよ)」を原則とし、全てのアクセスに対して常に認証・認可を要求します。
2010年にForrester Research社のアナリスト、ジョン・キンダーバグ氏が提唱したこの概念は、クラウド活用・リモートワーク・モバイル端末の普及により、2026年現在では企業セキュリティの新標準モデルとして世界中で採用が進んでいます。
renue社でも、業務委託メンバーが個人端末から社内システムにアクセスする際のセキュリティ強化として、ゼロトラストベースのSASE(CATO Networks等)の導入検討が進められています。
従来の境界型セキュリティとの違い
従来の境界型セキュリティモデル(城壁モデル)
従来のセキュリティモデルは「社内ネットワーク(境界内)は安全、境界外は危険」という前提に基づいていました。VPNやファイアウォールで社内ネットワークの「城壁」を作り、一度その中に入れば基本的に信頼するというモデルです。
この方式の弱点は、内部の不正(内部犯行・不正端末)、VPN経由での感染拡大、クラウドサービス・リモートワークに対応しにくいという点です。
ゼロトラストモデル
ゼロトラストでは「境界の内外に関わらず、すべてのアクセスを検証する」ことが前提です。社内ネットワークからのアクセスでも、モバイル・自宅・カフェからのアクセスでも、同じように厳格な認証・認可が求められます。
| 比較項目 | 境界型セキュリティ | ゼロトラスト |
|---|---|---|
| 信頼の前提 | 社内ネットワーク内は信頼 | 場所を問わず常に検証 |
| 認証方式 | ネットワーク入口での認証 | ユーザー・デバイス・アクセス毎に認証 |
| リモートワーク | VPN経由が必要(遅い・複雑) | デバイスとIDで直接認証・アクセス |
| 内部脅威 | 対応が難しい | 最小権限で被害範囲を限定 |
ゼロトラストの6つの構成要素
1. IDとアクセス管理(IAM)
「誰がアクセスしているか」を厳格に検証します。多要素認証(MFA)、シングルサインオン(SSO)、特権アクセス管理(PAM)などが含まれます。最小権限の原則(必要最小限のアクセス権のみ付与)が基本です。
2. デバイス管理
「どのデバイスからアクセスしているか」を確認します。MDM(モバイルデバイス管理)やEDR(エンドポイント検出と応答)でデバイスの健全性を評価し、セキュリティポリシーに非準拠のデバイスはアクセス拒否します。
3. ネットワーク制御(マイクロセグメンテーション)
ネットワークを細かく分割し、各セグメント間の通信を個別に制御します。万一侵害されても横移動(ラテラルムーブメント)による被害拡大を防止します。
4. アプリケーション・ワークロード保護
アプリケーションへのアクセスを「アプリケーション単位」で制御します。必要なアプリへのアクセスだけを許可し、不要なアプリへのアクセスはブロックします。
5. データ保護
データの分類・ラベリング、DLP(データ損失防止)により、機密データへの不正アクセスや外部持ち出しを防止します。
6. 可視化・分析・自動化
全てのアクセスログをリアルタイムで収集・分析し、異常を検知・対応します。AIを活用した異常検知により、人手では発見できない脅威も迅速に対応できます。
ゼロトラストの導入事例
事例1:テレワーク環境のVPN廃止
従来のVPN接続に替えて、SDP(Software Defined Perimeter)やSASE(Secure Access Service Edge)を導入することで、テレワーク時の接続速度改善とセキュリティ強化を同時に実現した事例です。Cato Networks、Zscaler、Prisma Accessなどが代表的な製品です。
事例2:クラウド・マルチクラウド環境のセキュリティ統合
Azure・AWS・GCPを横断するマルチクラウド環境で、統一したIDベースのアクセス管理を実現。Microsoft Entra ID(旧Azure AD)をIdP(Identity Provider)として、全クラウドサービスへのシングルサインオンとMFAを実現した事例です。
事例3:サプライチェーン・業務委託管理
外部のパートナー・業務委託先が社内システムにアクセスする際のセキュリティ管理にゼロトラストを適用した事例です。デバイス証明書とMFAの組み合わせで、個人端末からのアクセスも安全に管理できます。renue社でもSASEを活用した同様のセキュリティ強化を検討しています。
ゼロトラスト導入のステップ
- 現状把握とリスク評価:保護すべき資産・データ・ユーザーを特定し、リスクを評価
- IDとアクセス管理の強化:MFA・SSO・PAMを導入し、最小権限を徹底
- デバイスの健全性管理:MDM・EDRの導入とポリシー準拠の確認
- ネットワークの可視化・セグメンテーション:トラフィックの可視化とマイクロセグメンテーション
- 継続的なモニタリングと改善:ログ分析・AIによる異常検知・ポリシーの継続改善
AIを活用したセキュリティ強化を支援します
renue社はAIコンサルティングを通じて、ゼロトラストベースのセキュリティ設計からAI活用による異常検知まで、企業のセキュリティ強化を支援します。
ゼロトラスト・セキュリティ相談をするよくある質問(FAQ)
Q1. ゼロトラストとVPNはどう違いますか?
VPNは社内ネットワークへのトンネルを作り、一度接続すれば「社内にいる扱い」になります。ゼロトラストはVPNのような「一括接続」ではなく、各アプリ・リソースへのアクセスをユーザー・デバイス・コンテキストごとに個別認証・認可します。ゼロトラストは「VPN廃止」の流れと連動して普及しています。
Q2. ゼロトラスト導入にかかるコストは?
導入規模・既存環境・採用製品によって大きく異なります。クラウドベースのSASEやIDaaSを活用することで、大規模なインフラ投資なしに段階的に導入できます。まずMFA・SSO強化など低コストで効果が高い施策から始め、リスクが高い領域から順次強化するアプローチが現実的です。
Q3. SASEとゼロトラストの関係は?
SASE(Secure Access Service Edge)は、ネットワーク機能(SD-WAN)とセキュリティ機能(CASB、SWG、ZTNA等)をクラウドで統合したアーキテクチャです。ゼロトラストの考え方をネットワーク・クラウドアクセスの領域で実現するための手段の一つがSASEです。Cato Networks、Zscaler、Palo Alto Prisma Accessなどが代表的なSASE製品です。
Q4. 中小企業でもゼロトラストは必要ですか?
はい、中小企業もサイバー攻撃の標的になっています。むしろリモートワークや業務委託の多い中小企業ほど、従来の境界型セキュリティが機能しにくく、ゼロトラストの考え方が有効です。Microsoft 365 + Entra ID + MFAの組み合わせは比較的低コストで始められるゼロトラストの入口です。
Q5. ゼロトラストとAIの組み合わせとは?
AIを活用した「アダプティブ認証」や「ユーザー行動分析(UEBA)」が進化しています。AIが正常なアクセスパターンを学習し、通常と異なる行動(例:深夜の大量データダウンロード)を検知したら自動でアクセスをブロックするといった高度な脅威検知が実現します。
Q6. ゼロトラスト導入で最初に着手すべきことは?
最初のステップは「ID管理の強化」です。全ユーザーに多要素認証(MFA)を適用するだけで、不正アクセスリスクを大幅に低減できます。次に、特権アカウントの管理強化(PAM)とデバイス管理(MDM)に取り組みます。この2ステップがゼロトラストの土台となります。
