株式会社renue
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「Vertex AIとは何か」「Gemini APIとどう違うか」「Bedrock/OpenAI/Azure OpenAIとどう使い分けるか」「企業導入はどう始めるか」――この4つは、2026年現在Google Cloud上でAI導入を検討する企業のCTO/CIO/AI責任者が必ず通る論点です。Vertex AIはGoogle Cloudが提供する統合AI開発プラットフォームで、Gemini 2.5 ProなどのGoogleの基盤モデル、Anthropic Claude、Meta Llama、Mistral等のサードパーティモデル、独自MLパイプラインまでを1つのプラットフォーム上で扱えます。本記事では、Vertex AIの基本・主要機能・料金・他クラウドAIとの使い分け・5フェーズ導入ロードマップ・renueの実装現場視点を整理します。
Vertex AIとは――2026年版の定義
Vertex AIはGoogle Cloudの統合機械学習プラットフォームです。生成AI(Gemini系)から従来の機械学習(AutoML・カスタムモデル学習)、エージェント基盤(Vertex AI Agent Builder)、MLOps基盤(Pipelines・Model Registry・Endpoints)までを1つのプラットフォームで提供します。
以下はVertex AIの名称で知られる機能の説明です。2026年9月確認時点のGoogle公式資料では、統合基盤をGemini Enterprise Agent Platformの名称で案内しています(Google公式資料)。モデルの提供期間・リージョン・機能は個別に確認してください。
2026年時点の主要特徴:
- Gemini 2.5 Pro対応:最大入力1,048,576トークン、推論・エージェント型タスクに対応。公式資料の提供終了予定日は2026年10月20日(モデル仕様)
- マルチモーダル:テキスト・コード・画像・動画を1モデルで処理
- マルチモデル対応:Gemini系に加えてClaude・Llama・Mistral等もVertex AI内で呼べる
- データ主権:保存先と処理地域はモデル・エンドポイント・機能ごとの条件を確認します。グローバルエンドポイントは処理地域を限定しません(データ所在地の公式条件)。
- Agent Builder:エンタープライズ向け自律エージェント基盤
- MLOps統合:学習→評価→デプロイ→監視を一気通貫
Vertex AIの主要機能
1. Vertex AI Studio
プロンプト設計・テスト・管理の統合UI。コードを書く前にGeminiの動作を確認できます。マルチモーダル入力(テキスト・画像・動画)にも対応。
2. Generative AI on Vertex AI
Gemini系の基盤モデル群を呼び出すサービス。Gemini 2.5 Pro/Flashなどを用途別に選択できます。Gemini NanoはAndroidのAICore上で動く端末向けモデルであり、このクラウドAPIとは提供形態が異なります(Gemini 2.5 Pro、Gemini Nano)。
3. Model Garden
Google・サードパーティの基盤モデルを発見・選択・デプロイできるカタログ。ClaudeやLlama等もここから利用可能です。モデルごとにマネージドAPIまたは自己デプロイなどの利用形態と提供条件を確認します(公式モデル案内)。
4. Vertex AI Agent Builder
エンタープライズ向け自律エージェント開発プラットフォーム。社内データに基づいたエージェントを構築・スケール・統治できます。Bedrock Agentsに対応するGoogle側のソリューションです。
5. Vertex AI Search(旧Discovery Engine)
エンタープライズ検索・RAG基盤。社内ドキュメントから自動でセマンティック検索を構築できます。
6. AutoML
機械学習の専門知識がなくても、画像・表データから自動でモデルを作成できる機能。AutoML Textは2025年6月15日に提供が終了し、テキスト分類等はGeminiのプロンプトやチューニングへの移行が案内されています(提供終了の公式案内)。
7. カスタム学習・MLOps
独自モデルの学習・パイプライン管理・モデルレジストリ・エンドポイント運用までフルスタックで対応。
8. Vector Search
大規模ベクトルDBサービス。RAG基盤の中核として利用できます。
Vertex AI vs Gemini API(直接利用)
Geminiを使う方法は2つあります。
| 項目 | Gemini API(AI Studio) | Vertex AI |
|---|---|---|
| 提供元 | Google AI for Developers | Google Cloud |
| 対象 | プロトタイプから本番運用まで | 本番運用・Google Cloudの企業向け統制が必要な用途 |
| 無料枠 | あり | 限定的 |
| データ主権 | 無料・有料でデータ利用条件が異なる(利用規約) | 保存先と処理地域をモデル・エンドポイント別に確認(公式条件) |
| SLA・サポート | 適用されるAPIの利用条件を確認 | 対象サービス・構成ごとのSLAと契約サポートを確認(SLA) |
| MLOps統合 | × | ◎ |
| マルチモデル | Geminiのみ | Gemini+Claude+Llama等 |
Gemini APIでも本番運用は可能です。Vertex AIはGoogle Cloudのデータ所在地やアクセス制御、MLOps連携など、必要な企業向け統制に応じて選びます(Google公式の選択指針)。
Vertex AI vs Bedrock vs Azure OpenAI
| 項目 | Vertex AI | Amazon Bedrock | Azure OpenAI |
|---|---|---|---|
| 提供元 | AWS | Microsoft | |
| 主モデル | Gemini系 | Claude/Llama/Nova | GPT-4/5系 |
| マルチモデル | Geminiと各社モデルを選択 | Claude・Llama・Nova等を選択 | Azure OpenAIはOpenAIモデル。Microsoft Foundryでは他社モデルも提供 |
| マルチモーダル | 例:Gemini 2.5 Proはテキスト・画像・音声・動画入力 | モデルによる。例:Claude Opus 4.6はテキスト・画像入力 | モデルによる。例:GPT-5はテキスト・画像入力 |
| 長文文脈 | 例:Gemini 2.5 Proは最大入力1,048,576トークン | 例:Claude Opus 4.6は100万トークンの文脈 | 例:GPT-5は40万トークンの文脈(入力最大27.2万・出力最大12.8万) |
| 適性 | GCP中心、Google Workspace連携 | AWS中心、マルチモデル運用 | Microsoft 365中心 |
表はモデルごとの例で、各プラットフォームの全モデルに共通する上限ではありません(出典:Google、AWS、Microsoft)。
「自社のクラウドエコシステムに合わせて選ぶ」のが基本。GCP中心の組織は Vertex AI が自然な選択です。
Vertex AIの料金体系
- Generative AI:入力・出力トークン従量課金(モデルごとに単価が異なる)
- カスタム学習:使用したコンピュート時間(GPU/TPU)に応じた課金
- Vertex AI Search:クエリ数・インデックス容量に応じた課金
- Agent Builder:利用する構成要素ごとに課金。Agent Engineの実行基盤ではコンピュート(vCPU時間)・メモリ(GiB時間)の使用量、モデル呼び出しではトークン等を確認(公式料金表)
- 関連サービス:Cloud Storage / BigQuery / Cloud Run 等の通常料金
具体料金はGoogle Cloud公式料金ページで最新情報を確認。スモールスタートはオンデマンド従量課金、本番運用は予算アラート設定が必須です。
5フェーズ導入ロードマップ
STEP 1: GCPプロジェクト準備とAPI有効化(1〜2週間)
Google Cloudプロジェクトを作成し、Vertex AI APIを有効化、課金設定を行います。
STEP 2: Vertex AI Studioでプロトタイピング(2〜4週間)
Geminiの動作確認、プロンプト設計、業務との適合性を検証します。
STEP 3: Vertex AI Search/Agent Builderで業務統合(1〜2か月)
社内ドキュメントを取り込み、RAG基盤・エージェントを構築します。
STEP 4: ガードレール・監査ログ整備(1か月)
Safety Settings・監査ログ・データ主権設定を整備して本番化準備。
STEP 5: MLOps連携・本番運用(継続)
Pipelines・Model Registry・Endpointsで本番運用、コスト・レイテンシを最適化します。
Vertex AI導入で陥る5つの落とし穴
- Gemini APIとVertex AIの契約・機能条件を混同して始めてしまう:Gemini APIも業務・本番利用が可能です。データ利用条件や必要な統制を比較して選びます(選択指針、利用規約)
- 料金試算を後回しにする:マルチモーダルや大量実行でコストが跳ねる
- Safety Settingsを未調整で本番化:社内データに対して不要な検閲が走る
- Vertex AI Searchのデータ整備を軽視:ゴミデータからは良いRAG出力は出ない
- GCP外のシステムとの接続を忘れる:自社業務システムとの統合設計が必要
renueから見たVertex AI実装現場
私たちrenueは、AIコンサル・図面AI・社内DXの実装現場で、Vertex AI・Bedrock・Azure OpenAI・OpenAI APIを業務に応じて使い分けてきました。実装現場の知見から見えるポイントは次の3点です。
- Geminiの100万トークン文脈を長文業務に活用:契約書一括レビュー・大量議事録要約などが用途です。他モデルとの比較は同じ文書・指示で精度、漏れ、費用を評価します(対応する入力上限)
- Vertex AI SearchでGCP上のRAGプロトタイプを構築:BigQuery・Cloud Storageからデータを取り込めます。構築時間はデータ整備や権限設計に左右されます(公式のデータ取り込み手順)
- マルチクラウドAI時代は「ハブ&スポーク」発想が現実解:1つの内製ゲートウェイ経由で複数クラウドAIを呼び分ける構成が標準化しつつある




