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はじめに:残業代は正しく計算されていますか?
「残業代の計算方法がよくわからない」「割増率25%と50%の違いは?」「自分の残業代が正しいか確認したい」——残業代は労働基準法で支払いが義務付けられていますが、その計算方法を正確に理解している方は多くありません。
2023年4月以降、月60時間超の残業に対する割増率が全企業で50%に引き上げられ、残業代の計算はより複雑になりました。本記事では、残業代の基本的な計算式から割増率の種類、月給制・時給制での計算例まで解説します。
第1章:残業代の基本計算式
計算式
時間外労働分の賃金 = 1時間あたりの基礎賃金 ×(1+割増率)× 対象の労働時間数
通常の時間給・月給等の時間外労働分は、基礎賃金を時間額に換算して計算します。25%割増なら倍率は1.25です。法定休日は原則1.35、時間外でも休日でもない深夜勤務で通常賃金を既に支払う場合は、追加の深夜割増分を基礎賃金×0.25×時間数で計算します。出来高払のように計算方法が異なる賃金もあり、給与形態の名称だけで一律には扱いません(大阪労働局の計算方法)。
1時間あたりの基礎賃金の算出方法
月給制の場合
1時間あたりの基礎賃金 = (月給 − 除外手当) ÷ 月平均所定労働時間
基礎賃金から除外する対象は、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)の7種類です。ただし名称ではなく支給の実質で判断し、この名称の手当をすべて除くわけではありません。例えば扶養家族数に関係なく一律に支払う家族手当は算入します。この7種類に該当しない賃金も算入します(厚生労働省の対象区分、大阪労働局Q7の実質による判断)。
月によって所定労働時間数が異なる場合は、1年間の月平均所定労働時間数で割ります。平年で各労働日の所定時間が一定という例では、月平均所定労働時間 =(365日 − 年間休日数)× 1日の所定労働時間 ÷ 12か月です。日ごとの所定時間が異なる場合などは、年間の実際の所定時間を合計して平均を求めます(大阪労働局Q8)。
計算例:月給30万円(手当除外後)、年間休日120日、1日8時間勤務の場合。月平均所定労働時間 =(365−120)×8÷12 = 163.3時間。1時間あたりの基礎賃金 = 300,000 ÷ 163.3 = 約1,837円。
時給制の場合
時給だけが算入対象の賃金なら、その時給が基礎賃金になります。時給1,200円だけの例では基礎賃金は1,200円です。別に算入対象の月額手当等を支給する場合は、その部分も所定の方法で時間額へ換算して合計します(異なる支払形態を組み合わせる場合)。
第2章:割増率の種類
割増率一覧
- 法定時間外労働(原則1日8時間・週40時間超):25%以上
- 月60時間超の時間外労働:50%以上(2023年4月〜中小企業を含め適用。法定休日労働はこの月60時間に算入しません)(適用時期、月60時間の算定区分・3頁)
- 深夜労働(22:00〜5:00):25%以上
- 法定休日労働(毎週1日、または4週間で4日という法定休日の労働):35%以上
重複する場合の割増率
- 時間外+深夜:25% + 25% = 50%以上
- 休日+深夜:35% + 25% = 60%以上
- 月60時間超+深夜:50% + 25% = 75%以上
法定内残業と法定外残業の違い
通常の労働時間制で、法定休日・深夜に当たらず、週の法定労働時間も超えていない場合、所定7時間に対して8時間働いた日の7〜8時間目は「法定内残業」で、法律上の時間外割増なしで通常賃金を支払います。就業規則等で上乗せを定めていれば、その定めも確認します。1日8時間以内でも週の法定時間を超えた部分は時間外割増の対象です。一部の小規模事業場の週44時間特例や、変形労働時間制・フレックスタイム制では判定方法が異なります。また、法定休日の35%に時間外の25%は重ねず、深夜に及んだ場合に25%を加算します(労働時間・休日と割増の重複、変形・フレックスの扱い、法定内残業の条件)。
第3章:具体的な計算例
例1:月給制の時間外労働
条件:月給30万円(除外手当後)、月平均所定労働時間を163.3時間とした例で、今月の法定時間外労働20時間。深夜・法定休日労働はなく、割増率を法定最低の25%とします。
1時間あたり基礎賃金 = 300,000 ÷ 163.3 ≒ 1,837円。以下は1時間の基礎賃金の円未満を50銭未満切捨て・50銭以上切上げして1,837円とする例です。残業代 = 1,837 × 1.25 × 20 = 45,925円。実際は所定時間数と端数処理方法を確認してください(厚生労働省の端数処理)。
例2:時給制の深夜残業
条件:時給1,200円、22:00〜24:00まで2時間勤務(法定時間外+深夜)。
残業代 = 1,200 × 1.50 × 2 = 3,600円(時間外25%+深夜25%=50%割増)。
例3:月60時間超の残業
条件:月給30万円(算入対象額)、例1の基礎賃金1,837円で、今月の法定時間外労働70時間。深夜・法定休日労働はなく、60時間以内を25%、超える部分を50%とし、労使協定による代替休暇への充当はないものとします。
60時間まで:1,837 × 1.25 × 60 = 137,775円。60〜70時間(10時間):1,837 × 1.50 × 10 = 27,555円。合計残業代:165,330円。
第4章:よくある疑問と注意点
固定残業代(みなし残業)の場合
固定残業代は通常賃金の部分と割増賃金の部分を判別できるようにし、実際の対象労働について法定の方法で計算した額が固定額を上回れば差額を支払います。例えば「月30時間分の固定残業代5万円」で35時間働けば超過分の確認が必要ですが、30時間以内でも必要な金額に5万円が足りなければ追加支払が必要です。時間外・休日・深夜のどの賃金を固定額が対象とするかも確認します(厚生労働省の固定残業代Q&A)。
管理職は残業代が出ない?
労働基準法上の「管理監督者」に該当する場合は、時間外・休日労働の割増賃金が適用されません。ただし、「名ばかり管理職」(管理職の肩書きだけで実態は一般社員と変わらない)は管理監督者に該当せず、残業代の支払い義務があります。深夜割増(25%)は管理監督者にも適用されます。
残業代の時効
2020年4月1日以降に支払期日が到来する残業代等の賃金請求権は、支払期日から5年に延長されましたが、当分の間は3年です。労働した日ではなく各賃金の支払期日から数えるため、未払いがあれば明細・勤務記録と支払期日を確認して早めに相談します(厚生労働省の時効の説明)。
サービス残業は違法
労働時間に対して残業代を支払わない「サービス残業」は労働基準法違反です。タイムカードの記録と実際の退勤時間が異なる場合や、持ち帰り残業を黙認している場合も問題となります。
renueでは、AIを活用した勤怠管理・給与計算の自動化を支援しています。残業代の自動計算、労働時間の可視化、36協定の遵守チェックなど、労務DXを伴走型でサポートします。
第5章:残業代を確認する方法
- 給与明細を確認:「時間外手当」「深夜手当」「休日手当」の欄を確認
- 就業規則を確認:所定労働時間、割増率、固定残業代の有無を確認
- タイムカードと照合:実際の残業時間と給与明細の時間を比較
- 労働基準監督署に相談:未払い残業代の疑いがある場合は、最寄りの労基署に無料で相談可能
よくある質問(FAQ)
Q1: 残業代の割増率は何%?
法定時間外は原則25%以上、月60時間を超える部分は50%以上、深夜は25%以上、法定休日は35%以上です。時間外と深夜は50%以上(60時間超なら75%以上)、法定休日と深夜は60%以上ですが、法定休日と時間外の割増は重ねません。法定休日は月60時間にも算入しません(割増の重複、月60時間超の率、算定区分・3頁)。
Q2: アルバイトにも残業代は出る?
はい。アルバイトも割増賃金の対象です。通常の労働時間制では原則1日8時間・週40時間を超える法定時間外が対象ですが、週44時間特例や変形労働時間制・フレックスタイム制などは適用条件に沿って判定します。所定時間を超えただけの法定内残業と区別し、管理監督者の例外は第4章も確認してください(雇用形態を問わない適用、原則と変形の制度、フレックス等の扱い)。
Q3: 月60時間超の割増50%はいつから?
2023年4月1日から中小企業にも適用され、月60時間を超える法定時間外労働の割増率は50%以上です。通常の法定休日労働とは区分して集計します(厚生労働省の雇用労働相談資料)。
Q4: 残業代が支払われていない場合は?
まず給与明細・勤務記録・賃金支払期日を確認し、会社に問い合わせてください。改善されない場合は労働基準監督署等へ相談します。2020年4月1日以降に支払期日が到来する賃金の請求権は、支払期日から5年に延長され、当分の間は3年です。発生月から一律に過去3年と数える説明にはしません(厚生労働省の時効Q&A)。
Q5: 年俸制でも残業代は発生する?
はい。年俸制という給与形態だけで法定時間外・休日・深夜の割増賃金が不要になるわけではありません。管理監督者の条件等は別に確認します。固定残業代を含む場合は通常賃金と割増賃金の部分を区別し、実際の労働について計算した必要額が固定額を上回れば、対象時間内でも差額の支払が必要です(年俸制と割増賃金、固定額を下回らない支払)。
Q6: 1分単位で残業代は計算される?
毎日の時間外労働は原則1分単位で集計し、日々15分・30分単位で端数を切り捨てて未払いを生じさせることはできません。事務簡便のための例外として、その月の時間外労働の合計に生じた1時間未満の端数について、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間へ切り上げる処理が認められます。日ごとの切捨てと区別します(大阪労働局Q11)。
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