株式会社renue
renueについて
renueは、AIで業務を実装する会社です
AIコンサルティングから図面AI・広告運用エージェント・コールセンターAIまで、実際に動いているサービスをご覧いただけます。renueが何をしている会社か、まずはサービス一覧からご確認ください。
LTV(顧客生涯価値)は、顧客との関係全体で得られる価値の推計です。売上ベースか粗利ベースか、どの解約率と期間を使うかで値が変わります。SaaSでは、顧客数の解約と、既存顧客の売上の増減を分け、推計値と実際の継続・費用回収を照合します。2026年10月24日に確認した公式資料を基に、計算方法と改善の進め方を整理します。
LTVと解約率の関係:簡易式の前提と売上・粗利を確認する
LTVは将来を含む推計と、すでに実現した売上・粗利を区別して使います。簡易式では、1顧客当たりの平均月額売上と、正の月次顧客解約率を用います。以下は単価、粗利率、各月の顧客解約率が一定で、拡張・縮小、将来の割引や追加費用などを単純化したモデルです。利用者単位か契約企業単位かもそろえます。ARPUとARPAという名称だけで同じ単位と判断しないようにします。
売上ベースLTV=平均月額売上÷月次顧客解約率
粗利ベースLTV=平均月額売上×粗利率÷月次顧客解約率
ChartMogulのLTV解説は粗利を考慮した簡易式と、その限界を説明しています。一方、同社の製品レポートでは、各期間のARPAを、当月を除く過去6か月の顧客解約率平均で割る売上ベースの定義を使っています。解説記事の式と、ダッシュボード上の値を同じものと決めず、分子・分母と平均する期間を確認します。
仮に、平均月額売上5万円、粗利率80%、月次顧客解約率2%なら、売上ベースは5万円÷0.02=250万円、粗利ベースは5万円×0.8÷0.02=200万円です。単価と粗利率を固定して解約率だけを1%へ変えると、粗利ベースの推計は400万円になります。これは計算上の仮定例で、実際に200万円分の利益や現金が増えた結果ではありません。粗利ベースも、営業・管理の全費用を差し引いた最終利益ではありません。
同じ一定率のモデルでは、平均継続月数を1÷月次顧客解約率と置けます。2%なら50か月ですが、すべての顧客が50か月継続するという意味ではありません。利用開始直後と長期顧客で解約の発生傾向が違う、プランや価格が変わる、顧客構成が変わる場合は、単一の平均率だけでは表せません。解約率がゼロなら割り算を行えず、負のネット収益解約率を寿命の式に入れることもできません。
こうした場合は、獲得時期等をそろえた顧客群で、経過月ごとの継続率、売上、粗利と費用を確認します。将来をどこまで見積もるか、観測できていない期間をどう仮定するかを明示し、複数の条件で結果がどれほど変わるかを比べます。海外製品の説明は各社の管理指標の定義として参照し、日本の会計・税務上の収益や利益の計上と同じ基準として扱わないようにします。
解約率の計算:顧客数・グロス収益・ネット収益を分ける
顧客の数が減ることと、売上が減ることは異なります。高単価顧客の解約、既存顧客の利用縮小、上位プランへの移行などがあるためです。以下は期間と対象群をそろえるための基本的な整理です。新規顧客の売上は既存顧客の収益維持と分け、再開、期間中の加入・解約、プラン間の移動の扱いを決めます。MRRは月額へ正規化した継続収益で、請求月の入金額そのものとは区別します。
| 指標 | 計算・確認する範囲 |
|---|---|
| 顧客数解約率 | 期初の顧客群のうち期間中に解約した顧客数÷期初顧客数。再開等をどう数えるかを明示します。 |
| グロス収益解約率 | (解約MRR+縮小MRR)÷期初MRR。拡張による増加を損失から差し引かずに見ます。 |
| ネット収益解約率 | (解約MRR+縮小MRR−拡張MRR−再開MRR)÷期初MRR。ここでは再開を含む定義を示し、新規顧客MRRは含めません。 |
例えば、別の仮定例として期初100社・MRR500万円から、期初顧客の2社が解約し解約MRR10万円、縮小MRR5万円、拡張MRR20万円、再開なしだったとします。顧客数解約率は2%、グロス収益解約率は15万円÷500万円=3%、ネット収益解約率は−5万円÷500万円=−1%です。新規顧客MRR50万円が加われば全体の期末MRRは555万円ですが、この50万円を既存顧客のネット率に混ぜません。
ネット率が負になる「ネガティブチャーン」は、定義した範囲で拡張・再開が解約・縮小を上回る状態です。顧客数の解約やグロスの損失がなくなったこと、利益が増えたことは意味しません。ChartMogulのネットMRR解約率も、再開や縮小を除く設定、プランを絞った場合の移動の扱いで計算が変わると説明しています。比較時には数値と設定を一緒に残します。
製品間でも分母等が違います。ChartMogulの標準の顧客解約率は、期間中の加入・解約や解約・再開を除く調整があります。一方、Stripe Billingの説明は、過去30日の解約者数を、30日前のアクティブ購読者数と過去30日の新規購読者数の合計で割ります。名称が似ていても、そのまま同じ率として比較できません。
月次と年次も単純に12倍しません。期初の同じ顧客群に毎月3%の解約が一定に起き、再開等がない仮定なら、年間の解約割合は1−(1−0.03)の12乗で約30.6%です。これは当初の顧客群の計算例で、新規顧客を含む全体の増減や、年契約の更新率の実績ではありません。月ごとに率や更新対象が変わる場合は、その対象と経過を追います。
適正値を一律に置かず、コホートとCAC回収で評価する
解約率の比較では、顧客数か収益か、グロスかネットか、計上時点、プラン、価格帯、契約期間、顧客の継続期間をそろえます。月次3%以下、年次5〜7%などの数字を、母集団・期間を確認せず全SaaS共通の合格条件にはしません。特に月契約と年契約では更新の機会が異なり、同じ月の値が同じ意味を持つとは限りません。
コホート分析では、同じ時期に利用を始めた顧客などで群を作り、開始から何か月後の結果かをそろえます。新しい群は長期の観測ができていないため、未観測を解約や売上ゼロとして扱わないようにします。プラン・獲得経路・利用目的別に確認する場合も、件数が少ない群や条件の違いを併記します。全体の平均が改善したときは、各群の結果が変わったのか、顧客構成が変わったのかを確認します。
CACは顧客獲得費用を獲得顧客数に対応させた指標です。広告だけを含む値と、営業・マーケティングの人件費、手数料、ツールなどを含む値を同じ条件で比較しません。ChartMogulのCAC回収期間の説明は、CAC÷(ARPA×粗利率)という簡易式と、契約規模や営業サイクル等によって目安が変わる点を示しています。LTV/CACの3倍や回収12か月という経験則も、資金の回収や健全性を保証する条件ではありません。
冒頭の仮定例で、CACを60万円とすると、月の粗利は5万円×80%=4万円、簡易回収月数は60万円÷4万円=15か月、粗利ベースLTV/CACは200万円÷60万円=約3.3倍です。ただし、途中の解約、粗利の変化、獲得から課金までの時間、請求・入金の時期などは別に確認します。比率が高いだけで、現金がいつ戻るかや追加獲得へいくら使えるかは確定しません。
推計LTV、累積した売上・粗利、獲得・支援費、実際の入出金を分けて記録します。会計上の費用と管理上の配賦の違い、解約後に残る支援費なども必要に応じて確認します。原価範囲の整理にはCOGS・売上原価の考え方、投資の前提・期間と評価には費用対効果・ROIの計算も参考になります。予測だけで投資枠を固定せず、実績との差と未確認の条件を継続して見直します。
LTVや解約率を他の経営指標と並べる際は、同じ期間・顧客単位・費用範囲を保ち、MRRの増減、維持率、営業や製品の利用状況へつなぎます。SaaSメトリクス36項目の計算と定義の確認点では、再開分を含むMRR、NRR・GRR、CACの費用と時間差、初期行動と価値実現を整理しています。名称や比率だけで比較せず、元データと定義を揃えた指標から施策を判断する参考になります。
解約の原因を確認し、施策とデータ基盤を改善する
改善は、いつ、どの顧客群で、どのような解約・縮小が起きているかを調べるところから始めます。利用開始時の設定・導入支援、期待した機能との不一致、価格や契約条件、決済失敗などを分けます。解約アンケートや問い合わせの理由は確認材料ですが、未回答や複数の理由、担当者の分類の違いも残します。最も多い理由だけで優先順位を決めず、影響、対応できる範囲と費用を比較します。
オンボーディングの変更は、初期設定や必要な業務を完了できるかなど、自社で価値につながる行動を定めて評価します。全社共通の30日という期間や、支援を増やせば必ず解約を防げるという前提は置きません。ログインが少なくても業務目的を達成している場合があり、利用頻度や問い合わせ件数だけで解約意思を断定しないようにします。ヘルススコアを使う場合は、予測の見逃し・誤検知、確認や連絡にかかる作業と実際の結果を測ります。
値引きや年契約、アップセルを試す場合は、継続率に加えて単価、粗利、支援費、更新時の解約や顧客への価値を確認します。契約期間が長くなって当面の解約が見えにくくなったことと、満足度や長期の価値が上がったことは分けます。拡張による売上増がグロスの流出を隠していないかも確認します。対象群と実施内容、担当、評価期間を決め、可能な範囲で条件が近い群や変更前の状態と比較します。
集計の前提となるデータでは、顧客ID、契約・プラン、課金開始・終了、解約の申込日と有効日、請求・入金、利用や支援の履歴を対応づけます。法人と利用者、複数契約、無料期間、再開、割引、通貨、時刻の扱いをそろえ、集計結果から元の契約・請求の記録へ戻れるようにします。名寄せや正本の整理にはマスターデータ管理とデータ品質も参考になります。
AIは、匿名化した解約理由の分類案や確認が必要な記録の抽出などから検討できます。元の情報と推定を分け、送信先・利用目的・権限と保存、確認担当を決めます。契約・請求・CRM等のデータを連携し、定義をそろえた集計や確認画面、対応記録まで実装したい場合は、renueのFDEサービスへ相談できます。現場の要件整理から設計・実装・運用、KPI設計と成果の確認を扱い、利用中システムのAPI、データ形式や権限を確認して範囲を決めます。LTVの数値だけを上げるのでなく、何を変えてどの結果を確認するかが追える仕組みを整えます。

