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「コードを書いて保存する」時代の終わり——それでも残る、人間の仕事とは

公開日: 2026/2/17

AIによってコードが「その場で生成し使い捨てる」存在になる未来。定常業務は消え、毎日がアドリブになる世界で、人間がやる意味とは何か。

「コードを書いて保存する」時代の終わり——それでも残る、人間の仕事とは

「生産性N倍」の先にある、本当の問い

2025年後半から2026年にかけて、AIによるソフトウェア開発の生産性向上を謳う発表が相次いでいます。大手SIerが「全工程をAIで自動化し生産性100倍」と発表すれば、テック企業は「AIペアプログラミングで開発速度55%向上」と報告し、コンサルファームは「生成AIで業務効率40%改善」とレポートを出す。数字の大小こそ違えど、メッセージは共通しています——AIで生産性が上がる、と。

しかし、私たちrenueが注目しているのは、その先にある問いです。

生産性が100倍になるのは素晴らしい。1000倍でも10000倍でも結構。だが、そもそも「生産性」を測る前提となるプロセス自体が消滅したらどうなるのか?

コードを書いて保存するという概念の消滅

現在のソフトウェア開発は、「コードを書き、保存し、管理し、保守する」ことを前提としています。GitHubにコミットし、バージョン管理し、レビューし、デプロイする。この一連のプロセスがソフトウェアエンジニアリングの根幹です。

しかし、トークンコストが下がり続ける未来を想像してみてください。

コードが十分に安く、十分に速く生成できるようになったとき、コードは「書いて保存するもの」から「その場で生成し、使い捨てるもの」に変わります。骨子——つまり「何を実現したいか」という意図さえあれば、実装は毎回その場で生成すればいい。保存する必要も、バージョン管理する必要も、保守する必要もない。

動画に例えると分かりやすいかもしれません。今のYouTubeは、人間が編集した動画ファイルを保存・配信するプラットフォームです。しかし、動画が「骨子から即時生成」できるようになれば、ファイルとして保存する意味がなくなります。骨子さえあればいい。YouTubeという概念すら不要になる世界が来ると言われている。

ソフトウェアも同じ道を辿る可能性がある。要件定義、設計、実装、テスト、保守——この工程そのものが、概念ごと消滅するかもしれないのです。

これは「生産性が無限大になる」という話ではありません。「生産性」という尺度そのものが意味を失うという話です。

定常業務は残るのか

ここで、より切実な問いが生まれます。

コードが即時生成される世界で、定常業務は残るのか?

現在の仕事の多くは、繰り返しの上に成り立っています。毎朝メールを確認する。毎週定例会議を行う。毎月レポートを作成する。四半期ごとに計画を見直す。これらの「定常」が組織を安定させ、品質を担保し、予測可能性を生んでいます。

しかし、AIがあらゆるタスクを即時に遂行できる世界では、「定常的に同じことを繰り返す」こと自体に価値がなくなります。レポートは聞かれた瞬間に生成すればいい。会議のアジェンダはその場で最適化すればいい。計画は常にリアルタイムで更新され続ければいい。

つまり、毎日がアドリブになる。

昨日と同じ仕事を今日もする、という概念が消える。毎朝、その日の状況に応じて最適な行動をゼロから組み立てる。ルーティンワークという安全地帯がなくなる。

これは可能なのか?

技術的には、可能です。AIが状況を分析し、最適なアクションを提案し、実行を支援する。人間はそれを判断し、方向を決め、実行する。毎日が白紙のキャンバスであっても、AIという道具があれば対応できる。

しかし、本当に問うべきは「それを人間がやる意味はあるのか?」です。

人間のコミュニケーションとは何か

AIがすべてのタスクを遂行できる世界で、人間に残る固有の価値とは何か。

この問いに対する私たちの仮説は、「ノンバーバル(非言語的)な文化」にあるというものです。

現在のAIは、言語を操ることに長けています。文章を書き、コードを生成し、データを分析する。しかし、人間のコミュニケーションの大部分は、実は言語以外のところで成り立っています。

  • 会議室に入った瞬間に感じる空気の変化
  • クライアントの表情から読み取る本音と建前のギャップ
  • チームメンバーの声のトーンから察する疲労やストレス
  • 沈黙が語る、言葉以上の意味

これらは言語化しにくく、したがってAIが代替しにくい領域です。そして、ビジネスにおける重要な意思決定は、往々にしてこの非言語的な情報に基づいて行われます。

「あの案件、数字上は問題ないけど、先方の反応がどうも引っかかる」
「プレゼンの内容は完璧だったが、場の空気が噛み合わなかった」
「データは賛成を示しているが、直感的に違和感がある」

こうした判断こそが、人間に残る仕事の核心です。

オペレーションという人間の仕事

もうひとつ、AIが代替しにくい領域があります。それはオペレーション——現場の運用です。

コードが即時生成される世界でも、そのコードが動く現場は物理的に存在します。クライアントのオフィスがあり、ユーザーがいて、組織があり、文化がある。技術がどれだけ進化しても、この現場で実際に物事を動かす——人を巻き込み、合意を取り、変化を定着させる——のは人間の仕事です。

renueの会社ガイドラインには「コンサルの仕事は徹底力」という項目があります。難しい戦略を考えることではなく、当たり前のことを当たり前にやり切る。タスクを漏れなく管理し、即レスし、報連相を徹底する。これは言い換えれば、人間同士の信頼関係を日々の行動で積み上げるという、極めて非言語的な営みです。

AIがすべての分析と提案を行える世界でも、目の前のクライアントの顔を見て仕事をすること。相手の課題を自分ごと化して最後までやり切ること。これはAIには代替できない。

renueが考える、AI時代の組織

こうした未来像を踏まえて、renueは組織を設計しています。

私たちはPM・エンジニア・コンサルタントという役割を分けません。少人数が全領域を横断するからこそ、一人ひとりが「スーパー個人」として機能できる。AIが技術的なタスクを支援し、人間はコミュニケーションと意思決定に集中する。

保守契約も取りません。コードが使い捨てになる世界で、保守で食いつなぐビジネスモデルは成立しません。顧客が自走できる状態をゴールに置き、常に最新の技術で最善の実装を提供する。

中長期DX計画も立てません。半年で前提が変わる世界で、3年計画は砂上の楼閣です。今この瞬間のベストを実装し続ける。

ビジョンは「人間が生み出す付加価値を増やす」こと。AIが作業を代替した先に、人間にしかできない価値——顧客との対話、現場のオペレーション、信頼関係の構築——に集中できる世界を目指しています。

問われているのは、人間そのもの

「コードを書いて保存する」時代が終わるとき、私たちに問われるのは技術力ではありません。

人間として、何を感じ、何を判断し、何を伝えるか。

定常業務がなくなり、毎日がアドリブになる世界で、拠り所になるのは「自分は何のために仕事をしているのか」という問いへの答えです。ルーティンに隠れていた本質的な問いが、むき出しになる。

コードは即時に生まれ、即時に消える。プロセスは溶け、組織の壁は薄れる。残るのは、人と人との間に生まれる信頼、非言語的な共感、そして「目の前の一人を満足させる」という覚悟。

AI時代に本当に必要なのは、生産性を何倍にするかではなく、人間としてのコミュニケーションを問い直すことなのかもしれません。

renueは、その問いにまず自分たちの実践で答えようとしています。同じ問いに向き合いたい方は、ぜひ一度お話しさせてください。