ソフトウェア開発において、バグは避けて通れない存在です。しかし、バグの正体を正しく理解し、デバッグの基本プロセスを身につけることで、問題解決の精度とスピードは大きく向上します。
本記事では、エンジニアだけでなくプロジェクトに関わるすべての人が知っておくべきデバッグの基礎知識を、体系的に解説します。
バグとは何か
「バグ」とは、機能要件のうち、発注者が「作りたいもの」が「仕様書」として文書化されており、実装も認識齟齬なくされているにもかかわらず、想定通りの入出力を行わないものを指します。
ソフトウェアの要件は大きく「機能要件」と「非機能要件」に分かれます。機能要件は「何を入出力するか」という具体的な振る舞い。非機能要件は以下のような、機能以外の品質に関する要件です。
- 性能(速度・容量)
- セキュリティ
- 運用・保守性
- 可用性
- 移行の容易さ
実際のプロジェクトでは、「作りたいもの」と「仕様書」の間に仕様漏れが生じたり、「仕様書」と「実装したもの」の間に実装漏れが生じたりします。さらに、リリース後にクライアントから追加要望が出ることもあります。これらすべてが混在する中で、純粋な「バグ」とは仕様通りに作ったはずなのに正しく動かない部分を指すのです。
デバッグとは
デバッグとは、バグの原因を特定し、修正する一連のプロセスです。単にエラーを見つけるだけでなく、根本原因を解決することが重要です。
単にエラーが消えれば良いのではなく、当初の設計や顧客要望に対して正しい実装になっているのかを影響範囲全体まで見て修正します。

デバッグの基本サイクルは以下の通りです。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| S. 不具合の検知 | バグの存在に気づく |
| 1. 影響範囲の切り取り | どこまで影響しているかを把握する |
| 2. あるべき姿の定義 | 正しい動作を明確にする |
| 3. 外れた値の検出 | 具体的にどこがズレているか特定する |
| 4. 外れる原因の仮定 | なぜズレが生じているか仮説を立てる |
| 5. 原因の操作 | 仮説に基づいて修正を試みる |
| 6. 変化の観測 | 修正後の挙動を確認する |
| G. 修正完了 | 正しい動作が確認できたら完了 |
このプロセスで大切な3つの原則があります。
1. 仮説ドリブン
得られた情報を元にして、原因となる箇所を仮定して少しずつ操作します。闇雲に修正するのではなく、「ここが原因ではないか」という仮説を立てて検証するアプローチが効率的です。
2. 決めつけず事実を大事に
仮説が外れることもあるので、「どこにバグ」ではなく、「どんなエラー文」など表示されている事実を何よりも重視します。思い込みは最大の敵です。
3. 徐々に絞り込む
「少なくともここは影響を受けない」など、検証範囲を少しずつ減らすことで調査スコープを削っていくアプローチが大切です。
エラーとは
エラーとは、システムが期待された動作をしない状態です。しかし、エラーは単なる問題ではなく、システムからの重要な情報源でもあります。エラーがあることで、バグの原因を知ることができます。
エラーにはさまざまなパターンがあります。
| パターン | 具体例 | エラーメッセージ例 |
|---|---|---|
| 構文・形式エラー | JSON形式ミス、必須項目未入力、文字数制限超過 | 400 Bad Request、Validation Error |
| 認証・認可エラー | ログイン失敗、権限不足、セッション切れ | 401 Unauthorized、403 Forbidden |
| リソース・データエラー | 存在しないページ、削除済みデータへのアクセス | 404 Not Found、410 Gone |
| システム・インフラエラー | サーバー停止、メモリ不足、CPU過負荷 | 500 Internal Server Error、503 Service Unavailable |
| ネットワーク・通信エラー | API接続失敗、タイムアウト、DNS解決失敗 | 502 Bad Gateway、Connection Timeout |
| データベース・ストレージエラー | DB接続エラー、容量不足、制約違反 | Database Connection Failed、Disk Full |
| 数値・データの不一致 | [売上-費用]と[利益]の値が一致しない | バグだがエラーは出ない |
| 表示・UIくずれ | スマホ表示で崩れる、文字化け | バグだがエラーは出ない |
| 期待を下回る推論 | 生成AIが欲しい回答をくれない | バグだがエラーは出ない |
下の3行のように、エラーメッセージは出ないがバグであるケースもあります。バグの発見にはエラー以外のチェックも必要です。
エラーコードの読み方
HTTP通信では標準のステータスコードが返されます。これらを把握することで「どこでエラーが起きているか」を素早く検知できます。
| コード範囲 | 意味 | 代表例 | 対処法 |
|---|---|---|---|
| 2xx | 成功 | 200: 成功 | 通信は成功。想定外の挙動がある場合は別の箇所を調査 |
| 3xx | リダイレクト | 301: URL引越済のため転送 302: 一時退避先に転送 | 3xx自体は問題ではないが、想定外の場合は転送先サーバーのログを確認 |
| 4xx | クライアントエラー | 400: 入力が不正 401: 認証されていない 403: 権限がない 404: URLが存在しない | HTTP通信の失敗が原因。エラーコードに応じた修正を行い通信を成功させる |
| 5xx | サーバーエラー | 500: サーバー側で処理失敗 502: 中継先から不正レスポンス 503: サーバーがダウン | 通信自体は到達している。送信先のバックエンドサーバーやDBのログを確認 |
エラーが発生する箇所を理解する
Webアプリケーションでは、エラーはさまざまな箇所で発生します。どこで問題が起きているかを把握することが、デバッグの第一歩です。

| パターン | 状況 | ステータス | 症状・見分け方 |
|---|---|---|---|
| フロントで失敗 | ブラウザ側(JS等)でエラー。バックエンドにリクエストが送られない | error | 画面が真っ白になる、ボタンが反応しない |
| バックエンドに届かない | リクエストを送信したが到達前に拒否される | 4XX | URLの間違い(404)、認証エラー(401/403) |
| バックエンドの先に届かない | バックエンドには届いたが、DBや外部APIへの接続が失敗 | 5XX | バックエンド側ログにDB接続エラー等が出ている |
| バックエンドが死んでいる | バックエンドサーバー自体がダウン | 5XX | すべてのリクエストが5xxエラーになる |
| 戻ってきた値の処理に失敗 | 通信は成功だがフロント側で返却値の処理に失敗 | 2XX | ステータスは正常だがブラウザコンソールにエラーが出る |
バグ修正作業の本質
バグの修正とは9割が「特定」作業です。どんな場合に発生するのかを絞り込んで、変数定義や特定の処理、環境変数、文字コードなど、あらゆる原因のうち本当に影響するものを特定します。
バグの原因は無数に存在します。大きく分類すると以下の3領域です。
| 領域 | 原因の例 |
|---|---|
| コード | タイポ、型定義、タイムアウト、並行処理、再試行、引数、文字コード、依存性、相対参照、拡張子 |
| インフラ・基盤 | 環境変数、接続設定、デプロイ設定、ランタイム、ロードバランサ、課金設定、DBスキーマ、インデックス、キャッシュ、キャパシティ |
| 外部・ネットワーク | CORS、WebSocket、レート制限、HTTPメソッド、HTTPヘッダ、URL登録、キー管理、証明書、クッキー、トークン管理 |
このように可能性は膨大ですが、バグの再現条件を絞り込むことで原因の特定が加速します。
| 再現条件 | 絞り込みのヒント |
|---|---|
| ローカルでも再現する | インフラやネットワークに依存していない → コードに原因がある可能性が高い |
| 特定の入力でのみ発生 | 入力内容によっては問題ない → その入力に関連する変数や関数に絞って調査 |
| 同一セッション内で複数回発生 | セッション状態やキャッシュの問題 → 状態管理まわりを調査 |
| 本番のみで発生 | ローカルで再現しない → インフラ・環境変数・ネットワークの差異を調査 |
何があればバグを修正できるのか
バグの修正を依頼する際に最も重要なのは、なるべく具体的に状況を説明し、画面やログに表示されているエラーコードをそのまま共有することです。非エンジニアが勝手な類推をせず、ありのままの事実を伝えることが重要です。
バグ報告に含めるべき要素は以下の通りです。
| 要素 | 例 |
|---|---|
| 端末/OS | 私物のiPhone14の最新iOS |
| ブラウザ | Safari |
| 時刻 | 本日 15:00 |
| 環境/ブランチ | Local / mainブランチ |
| 画面 | /settings/profile |
| 入力値・操作内容 | 漢字氏名を入力して「確定」ボタン押下 |
| 再現性 | たまに再現。ひらがなでは発生なし |
| エラー内容 | 画面がホワイトアウト。コンソールにエラー文無し |
エラー情報の取得先としては、ブラウザの開発者ツール(コンソールタブ)やターミナルのログ出力があります。画面のスクリーンショットだけでなく、エラーメッセージのテキストもコピーして共有すると、エンジニアの調査が格段にスムーズになります。
対照実験を意識する
バグの原因を見つけるためには、事実の積み重ねこそが重要です。原因を絞り込むために、変数を少しずつ変えて同一のバグが再現するか・エラーメッセージが変化するか等を調べる意識が大切です。
たとえば、名前入力でエラーが出る場合を考えてみましょう。
| 条件 | テストA(正常) | テストB(異常) |
|---|---|---|
| 端末/OS | iPhone14 最新iOS | iPhone14 最新iOS |
| ブラウザ | Safari | Safari |
| 環境 | Local / main | Local / main |
| 画面 | /settings/profile | /settings/profile |
| 入力値 | 「斉藤」と入力して確定 | 「齋藤」と入力して確定 |
| 結果 | 問題なく表示 | 画面がホワイトアウト |
この対照実験から、「常用でない漢字が含まれた際にエラーが出ているのでは?」という仮説が導き出せます。変えたのは入力する漢字だけ。他の条件がすべて同じだからこそ、原因を絞り込めるのです。
ログの取得方法
ログは各所から出ているので、適切に参照してバグの原因に到達します。適切なエラーが出ない場合には、コンソール出力などを追加する事で検証も行います。
| 場所 | 確認先 | 確認できること |
|---|---|---|
| ブラウザ | 開発者ツール / コンソール | JavaScriptのエラーやネットワーク通信の状況 |
| 画面出力 | UIに表示されるエラーメッセージ | |
| ローカル | ターミナル | サーバーログやコマンドの出力 |
| Docker | コンテナ内のログ(docker logsコマンド) | |
| サーバー | ログ機能 | アプリケーションが出力するログファイル |
| VMのCUI | サーバーに直接SSHして確認 | |
| デプロイログ | CI/CDパイプラインの実行ログ | |
| コンテナログ | Kubernetes等のコンテナオーケストレーションのログ |
まとめ
デバッグは特別なスキルではなく、正しいプロセスと心構えで誰でも精度を上げられる作業です。
| # | ポイント | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | バグの定義を正しく理解する | 仕様通りに動かない部分がバグ |
| 2 | 仮説ドリブンで絞り込む | 闇雲に探さず、仮説→検証のサイクルを回す |
| 3 | 事実を大事にする | 思い込みではなくエラーメッセージという事実に向き合う |
| 4 | 対照実験で原因を特定する | 変数を1つずつ変えて比較する |
| 5 | 正確な情報を共有する | 端末、ブラウザ、手順、エラー文を漏れなく伝える |
エンジニアも非エンジニアも、この基本を押さえることでプロジェクト全体の問題解決力が向上します。バグに遭遇したときは、ぜひこのガイドを参考にしてみてください。

