売上原価に含まれる減価償却費とは?
減価償却費は、損益計算書上で「売上原価」と「販管費」のどちらにも計上される可能性がある費目です。その区分は、減価償却の対象となる資産が製品の製造に直接使用されるかどうかで決まります。
製造用の資産(工場建物、製造機械、金型など)の減価償却費は売上原価(製造原価)に含まれ、販売・管理用の資産(本社ビル、営業車両、事務用PCなど)の減価償却費は販管費に計上されます。
売上原価に含まれる減価償却費の具体例
| 資産 | 計上区分 | 理由 |
|---|---|---|
| 工場の建物 | 売上原価(製造原価) | 製品の製造に直接使用される施設 |
| 製造機械・装置 | 売上原価(製造原価) | 製品の加工・組立に使用される設備 |
| 金型・治具 | 売上原価(製造原価) | 特定製品の製造に使用される工具 |
| 工場内の運搬車両 | 売上原価(製造原価) | 製造工程内での材料・製品の運搬に使用 |
| 製造管理用ソフトウェア | 売上原価(製造原価) | 生産管理・品質管理に直接使用 |
販管費に計上される減価償却費(参考)
| 資産 | 計上区分 |
|---|---|
| 本社オフィスの建物・内装 | 販管費 |
| 営業車両 | 販管費 |
| 事務用PC・プリンター | 販管費 |
| 会計ソフト・CRMなどの業務ソフト | 販管費 |
製造原価報告書における減価償却費の位置づけ
製造業の決算書では、売上原価の内訳を示す「製造原価報告書」が作成されます。この中で、減価償却費は製造経費の一項目として表示されます。
製造原価は以下の3要素で構成されます。
- 材料費:原材料、部品、消耗品の購入費
- 労務費:製造ラインの作業員の人件費
- 製造経費:材料費・労務費以外の製造関連費用(減価償却費、電力費、修繕費、外注加工費など)
つまり、売上原価の中の減価償却費は「製造経費 → 製造原価 → 売上原価」というルートで損益計算書に反映されます。
仕訳例
製造用機械の減価償却(売上原価計上)
取得価額2,000万円、耐用年数10年、定額法の製造機械の年間減価償却:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 製造経費(減価償却費) | 2,000,000 | 減価償却累計額 | 2,000,000 |
この製造経費は、期末に仕掛品→製品→売上原価へと振り替えられます。
本社PCの減価償却(販管費計上)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費(販管費) | 75,000 | 減価償却累計額 | 75,000 |
業種別の考え方
製造業
工場関連資産が多いため、減価償却費の大部分が売上原価に計上されます。工場と本社が同一建物の場合は、床面積比で按分します。
小売業・サービス業
製造工程がないため、減価償却費はほぼ全額が販管費に計上されます。店舗の内装、什器、POS端末などが対象です。
IT・SaaS企業
サーバー・ネットワーク機器など、サービス提供に直接使用される資産の減価償却費は売上原価に計上するケースがあります。自社開発ソフトウェアの償却は、販売用なら売上原価、社内利用なら販管費が一般的です(キヤノンITソリューションズ)。
売上原価の減価償却費が経営分析に与える影響
粗利率への影響
製造設備の減価償却費が増えると、売上原価が増加し、粗利率が低下します。設備投資の多い製造業では、減価償却費の動向が粗利率を左右する重要なファクターです。
設備投資判断への影響
新規設備投資を行うと、翌期以降の減価償却費が増加し、売上原価が押し上げられます。設備投資の判断には、減価償却費の増加分を売上・効率改善でカバーできるかのシミュレーションが不可欠です。
よくある質問(FAQ)
Q. 減価償却費が売上原価に含まれると、粗利が減って不利ではないですか?
一見そう見えますが、製造原価を正確に把握するためには正しい区分が必要です。減価償却費を販管費に回すと粗利は高く見えますが、製品別の原価分析が不正確になり、誤った経営判断につながるリスクがあります。
Q. リース資産の減価償却費も売上原価に含めるべきですか?
はい、ファイナンスリースで取得した製造用資産の減価償却費は、自社所有資産と同様に売上原価(製造原価)に計上します。
Q. 減価償却方法(定額法・定率法)で売上原価への影響は変わりますか?
はい。定率法は初期に多額の減価償却費を計上するため、設備導入直後の売上原価が大きくなり粗利率が低下します。定額法は毎期均等に計上されるため、売上原価への影響が安定的です。
まとめ
売上原価に含まれる減価償却費は、製造に直接使用される資産(工場建物、製造機械、金型など)の減価償却費です。正しい区分は粗利率の正確な把握と製品別原価分析の精度に直結するため、会計方針に基づいて一貫した処理を行うことが重要です。
renueでは、AIを活用したデータ分析基盤の構築や、経営指標の可視化を支援しています。コスト構造の正確な把握と改善にご関心のある方は、お気軽にお問い合わせください。
