株式会社renue
建設業界におけるAIの活用と可能性
近年、人工知能(AI)の進化により、多くの業界で業務効率化が進んでいます。その中でも、生成AI(Generative AI)は特に注目されており、建設業界においても設計から施工、管理に至るまで幅広い分野で活用が進んでいます。本稿では、生成AIを含むAIが建設業界に与える影響、その活用と関連するデジタル化の16事例、そして将来の可能性について詳しく解説します。画像認識・予測・自動制御と、文章や画像を生成する生成AIは区別し、BIMなどの関連技術も扱います。

生成AIとは何か?
生成AIは、膨大なデータをもとに新しい情報やデザインを生成する技術を指します。従来のAIはデータの分析や予測に重点を置いていましたが、生成AIは自律的に新しいデータやアイデアを生み出すことができます。これにより、文章や画像の作成、設計案の検討などを支援できます。シミュレーションや最適化には生成AI以外の技術も用いられ、建設業界においても従来の枠を超えたアプローチが実現されています。
建設業界におけるAIの活用
1. 設計業務の効率化
建設プロジェクトの初期段階では、建物やインフラの設計が重要な役割を果たします。生成AIや設計支援AI、シミュレーション技術を組み合わせることで、以下のような効率化が図れます。
・迅速な3Dモデル作成
生成AIが設計者の意図を理解し、基本設計を自動で3Dモデルに変換します。これにより、初期設計プロセスが大幅に短縮されます。
・複数案の自動生成
異なる要件を満たす複数の設計案を瞬時に生成し、比較検討が容易になります。
・シミュレーションの最適化
建物の形状や材質、配置などをAIやシミュレーションツールが解析し、風や光、熱の影響を考慮した最適な設計を提示します。
2. 工事計画の最適化
施工段階において、予測AIや最適化技術は工事計画の効率化とリスク軽減を支援します。
・資材調達と在庫管理
予測AIが過去のデータを分析し、必要な資材の最適な調達タイミングを提案します。
・施工フローのシミュレーション
作業順序やリソースの配置を最適化技術が提案し、無駄のない工事計画を実現します。
・リスク評価と対応策の提示
気象条件や地盤の影響などをAIが分析し、リスクの予測と対策案を提供します。
3. 工事現場での活用
工事現場では、多くの変数が関与するため、用途に応じて画像認識AI・自動制御・生成AIなどを使い分けます。
・リアルタイム監視とフィードバック
ドローンやセンサーで得た情報を画像認識AIなどが解析して現場の状況を監視し、進捗状況や安全性に関するフィードバックを提供します。
・自動施工のサポート
ロボットや建機に自動制御や経路計画などの技術を組み込むことで、精密で効率的な施工が可能になります。
・トレーニングと教育
新人スタッフに対する施工方法の指導を生成AIが支援し、短期間でスキル向上を図れます。
4. 保守・管理業務の高度化
建物やインフラの完成後、異常検知AIや予測技術、生成AIなどは保守や管理業務にも貢献します。
・予防保守の提案
センサーが収集したデータをもとに、異常検知AIが劣化や異常の兆候を検出し、早期のメンテナンスを提案します。
・修繕プランの作成
損傷箇所や劣化状況を解析し、効率的な修繕プランを自動生成します。
・データの可視化
保守履歴やセンサー情報を視覚的にわかりやすく整理し、管理者の意思決定をサポートします。
AIの導入によるメリット
1. 効率化とコスト削減
用途に合うAIや関連技術を導入することで、設計から施工、管理までの各段階で作業効率が向上し、コスト削減が可能です。
・設計時間の短縮:従来数週間かかっていた設計作業が数時間で完了。
・施工ミスの低減:AIによるシミュレーションでリスクを事前に特定。
・無駄なコストの削減:必要な資材量や作業時間の正確な見積もり。
2. 品質の向上
AIの分析能力により、品質を確保しながら効率化を図ることが可能です。
・高精度な設計:データに基づいた設計案で精度向上。
・一貫した施工品質:AIがリアルタイムで品質をチェック。
・持続可能な建設:環境負荷を抑える材料や工法の提案。
3. 人材不足への対応
少子高齢化が進む中、建設業界では人手不足が深刻な課題です。生成AIを含むAIや自動化技術は以下の方法でこの課題への対応を支援します。
・自動化技術の活用:作業の一部をロボットが代替し、効率を向上。
・新人教育の効率化:生成AIが個人に応じたトレーニングを提供。
・ベテラン技術者のノウハウ共有:AIが蓄積したデータを活用し、技術の継承を支援。
生成AI導入の課題
生成AIの導入には多くのメリットがありますが、同時に課題も存在します。
1. 初期コストの高さ
AIシステムの開発や導入には高額な初期投資が必要です。また、継続的なメンテナンスやアップデートも考慮する必要があります。
2. データの質と量
生成AIの精度は、利用するデータの質と量に依存します。不完全なデータや偏ったデータが与えられると、適切な結果が得られない可能性があります。
3. 技術者の育成
AI技術を活用するためには、現場での技術者がAIに精通している必要があります。教育や研修の仕組みを整えることが求められます。
4. セキュリティとプライバシー
生成AIを活用するためには、多くのデータがクラウド上で管理されます。そのため、セキュリティやプライバシー保護の強化が重要です。
活用事例
1.大林組:設計支援AI「AiCorb」
取り組み内容: 2022年3月の発表では、スケッチや3Dモデルからファサードデザインを自動生成。
成果: 設計プロセスの効率化とデザインの多様性向上。
技術の特徴: 生成デザイン技術を活用し、要件に応じた複数案を迅速に生成。
参考: https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20220301_3.html
2.竹中工務店:構造設計AIシステム
取り組み内容: 蓄積した構造設計結果をAIに学習させ、類似建物の探索、断面推定、部材設計を支援。
成果: 構造設計の計算・繰り返し検討に要する時間を削減し、顧客とのプラン検討や提案に使える時間を確保。
技術の特徴: AI建物リサーチ・AI断面推定・AI部材設計を、構造設計システム「BRAINNX」に実装。
参考: https://www.takenaka.co.jp/solution/disaster/designai/
3.建設会社の事例:AIによるメンテナンス最適化
取り組み内容: 建物の劣化予測と修繕プランをAIが自動生成。
成果: 保守コストの削減と迅速な対応。
技術の特徴: センサーから取得したデータを活用して劣化状況を可視化。
参考: https://www.takenaka.co.jp/news/2023/07/01/
4.日本工営:地形解析と斜面防災
取り組み内容: 数値地形情報に基づく判読図を教師データに、深層学習で地すべり・侵食地形を抽出。
成果: 地形判読の効率化・自動化を進め、土砂災害リスクの把握や予防措置・事後対応を支援。
技術の特徴: 空中写真や地形図などから技術者が判読する特徴をAIに学習させる、画像の認識・推論技術。
参考: https://www.id-and-e-hd.co.jp/performance/landslide-topography/
5.鹿島建設:自動化施工システム「A4CSEL」
取り組み内容: 自動化施工システム「A4CSEL」を導入し、造成工事へ適用。
成果: 2024年12月発表では、岡崎市の造成工事に自動振動ローラ2台を導入。連携作業で安全性と効率を高め、現場で課題を抽出し改善を進める。
技術の特徴: 施工計画システムから作業領域・経路・軌道を作成し、重機管理システムを介して自律自動運転に連携する。引用発表で扱うのは造成工事の自動化で、VR・生成AIによる作業員教育とは別の用途。
参考: https://www.kajima.co.jp/news/press/202412/24c1-j.htm
6.大成建設: 建設機械の協調運転制御システム(T-iCraft®️)
取り組み内容: 建設機械の自律走行をサポートする制御システムの開発。
成果: 2021年2月の発表では、造成現場で4機種の自動建機の協調運転を実証し、有人建機との連携や他社製自動建機にも対応できることを確認。
技術の特徴: GNSSによる位置情報と作業進捗を監視し、各建機の自動運転の実行・停止を指示する協調制御システム。
参考: https://www.taisei.co.jp/aboutus/wn/2021/2102095072.html
7.鹿島建設: 危険予知活動AI「鹿島セーフナビ(KSAFE®︎)」
取り組み内容: AIを使用して危険予知活動を強化。
成果: 類似作業で過去に発生した災害傾向を提示し、作業前の危険予知活動を支援。事故件数の減少を測定した数値とは区別する。
技術の特徴: 厚生労働省のデータをAIが解析し、災害事例を見える化するシステム。
参考: https://www.kajima.co.jp/tech/cict/safetyeco/index.html#!body_05
8.竹中工務店: AI外壁調査システム「スマートタイルセイバー」
取り組み内容: ドローンと赤外線画像を使い、AIで外壁タイルの浮きを自動判定。
成果: 高所作業のリスク軽減と検査時間の短縮。
技術の特徴: 高層マンションでの法定点検に活用。
参考: https://www.takenaka.co.jp/solution/asset/smarttile/
9.清水建設: ガス圧接継手施工のAI画像認識
取り組み内容: 2019年11月に、ガス圧接継手の外観検査に画像認識AIを用いる現場トライアルを発表。実施予定期間は2020年1〜3月。
成果: 鉄筋継手1か所の外観検査の時間を短縮(従来5分→30秒)。この比較は個別の検査作業が対象で、施工全体の工期短縮率ではない。
技術の特徴: スマートフォンで撮影した継手の輪郭を画像認識AIで抽出し、所定の検査項目に基づいてOK/NGを判定。
参考: https://it.impress.co.jp/articles/-/18883(共同開発者の2019年発表、開発者による1か所当たり20〜30秒の紹介)
10.コマツ: 「スマートコンストラクション」
取り組み内容: 土木建築業界の生産性向上のため、AIを活用したプロセス見える化。
成果: 施工から土の運搬、測量などの作業最適化。
技術の特徴: エッジデバイス「EdgeBox」を活用して、クラウドよりも速い処理を実現。
参考: https://kcsj.komatsu/ict/smartconstruction
11.日本設計: BIMのデータ連携
取り組み内容: Autodeskとの包括契約を2024年10月に更新し、BIMとデータベースの連携、データを活用した設計を推進。
成果: 設計から維持管理・運用までBIMデータを活用し、分野間連携やデジタルツインの実運用を進めている。これはデータ基盤の取り組みであり、BIM自体が生成AIという意味ではない。
技術の特徴: 設計・施工後の維持管理や改修にも活用できるデータ連携。
参考: https://enterprisezine.jp/news/detail/20984(日本設計の2024年12月発表)
12.アイランドスケープ: AIリノベーションプランニングシステム
取り組み内容: 不動産会社向けにAIを組み込んだプランニングシステムを提供。
成果: 2016年10月の提供発表では、予算・間取りからプランや3Dパース、見積もりを作成し、その場での提案・修正が可能と紹介。
技術の特徴: 間取りや予算を入力すれば、AIが自動生成するリノベーション後のイメージ。
参考: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000021556.html
13.LIFULL: 不動産AIチャットボット
取り組み内容: 2023年8月、不動産会社のスタッフ向けに「接客サポートAI by FRIENDLY DOOR」のBETA版を提供開始。
成果: 高齢者・外国籍の方の住まい探しに関する接客知識を、スタッフが対話形式で調べることを支援。
技術の特徴: ChatGPTの技術を活用し、接客チェックリストの知識や行政情報を基に回答する。物件検索サービスや住宅ローン審査とは用途が異なる。
参考: https://lifull.com/news/34528/
14.mign: AI設計支援システム
取り組み内容: 設計プロセスにAIを導入し、業務効率化を実現。
成果: 設計作業の時間短縮と品質向上。
技術の特徴: AIが過去の設計データを学習し、新規プロジェクトに最適な設計案を提案。
参考: https://www.mign.io/(過去の内装画像を学習してイメージ画像を生成する公式事例)
15.iYell: AIによる住宅ローン書類業務の自動化
取り組み内容: 住宅ローンに必要な書類のデータ化・分類にAIを導入し、RPAと連携してファイル操作を自動化。
成果: 導入事例では、複数営業日かかっていた書類のデータ化が即日で可能になったと報告。融資承認までの審査時間の比較ではない。
技術の特徴: AI-OCRで文字を読み取り、人名・地名の抽出や文書分類を行い、Power Automateで名前変更やフォルダ移動を実行。金融機関による信用審査や融資条件の決定とは別の事務支援。
参考: https://www.ai-souken.com/case/378(導入支援者によるiYell事例)
16.清水建設: AI従業員サポートシステム
取り組み内容: 2023年11月から生成AIサービス「法人GAI」を全従業員向けに提供。
成果: 2024年3月の発表では、調査・アイデア出し・文書生成・プログラミング補助・要約などに利用し、従業員から時間短縮や品質向上の声があったと紹介。
技術の特徴: ChatGPTを基にした法人向け生成AIサービス。社内データ学習機能は2024年2月から試行を始め、発表時点では全社展開に向け機能評価や利用ルール整備を進めていた。
参考: https://www.shimz.co.jp/information/others/20240326.html
今後の展望
生成AIは、建設業界における革新的な変化をもたらしていますが、その進化はまだ始まったばかりです。今後、以下のような方向性での発展が期待されます。
1. スマート建設の実現
IoT技術や生成AIを組み合わせることで、建設現場全体がデータ駆動型で最適化される「スマート建設」の実現が進むでしょう。
2. パーソナライズされた建設
生成AIが個々の顧客ニーズに応じた設計や施工方法を提案することで、よりパーソナライズされた建設プロジェクトが可能になります。
3. 環境負荷の低減
生成AIを活用してエネルギー効率の高い建物や再生可能エネルギーを活用する設計を推進し、環境負荷の軽減に貢献します。
4. グローバルな展開
生成AI技術の普及により、建設業界の国際化が進み、グローバルなプロジェクトにも柔軟に対応できるようになります。
まとめ
生成AIを含むAIは建設業界の業務改善を支える技術であり、効率化、品質向上、人材不足への対応など、さまざまな課題解決に寄与しています。しかし、導入には課題も伴うため、十分な準備と計画が必要です。これからの建設業界において、AIの生成・認識・予測などの機能を、業務に応じて使い分けることが重要になるでしょう。
あわせて読みたい
FAQ
よくある質問
建設業界では施工計画書の自動作成、図面からの数量拾い出し、安全書類の生成、現場写真の自動分類・報告書作成、設計段階でのシミュレーションなど多方面でAIが活用されています。文章・画像の生成は生成AI、写真の分類や異常検知は認識AIなど、用途と技術を区別します。特に人手不足が深刻な建設業では、書類作成業務の自動化による作業時間の短縮効果が注目されています。
導入するAIの種類や適用範囲により異なりますが、書類作成や施工計画の分野で時間短縮につながったとする事例が紹介されています。ただし、個別作業の所要時間と建設プロジェクト全体の工期は異なるため、そのまま全工期の短縮率としては扱えません。実務では全工程を一度にAI化するのではなく、効果の高い書類作成や検査業務から段階的に導入するアプローチが成功しやすいです。
建設業特有の専門用語や図面形式への対応精度、現場ごとに異なる施工条件への柔軟性、法規制や安全基準との整合性確認が重要です。また、現場作業員のITリテラシーを考慮したUI設計と、段階的な導入によるスムーズな定着が成功の鍵となります。
はい、OCR・画像認識などに、必要に応じて生成AIを組み合わせることで、図面からの寸法・材料・数量の自動読み取りが可能になっています。CAD図面だけでなく手書き図面にも対応する技術が進歩しており、積算業務の大幅な効率化に貢献しています。ただし精度は図面の状態に依存するため、人による最終確認は必要です。
可能です。近年はクラウド型のSaaSとして提供されるAIツールが増えており、初期投資を抑えて導入できます。まずは見積書作成や日報管理など定型業務から始め、効果を確認しながら適用範囲を広げるステップが推奨されます。
BIM(Building Information Modeling)との連携による設計から施工・維持管理までの一貫したAI活用、ドローンやIoTセンサーと連動したリアルタイム現場監視、BIMを活用した建築確認など、デジタル化が進んでいます。2026年4月1日に始まったBIM図面審査は、BIMから書き出した図書を使う申請・審査の方法です。BIMデータそのものを審査する仕組みは、国土交通省の2026年9月18日発表では2029年春の導入予定で、開始済みの図面審査や全申請へのAI適用と混同しないことが重要です。出典: 国土交通省・建築BIM推進会議 、 BIMデータ審査の基本構想 。
アウトソーシング効率化エージェント
アウトソーシング効率化エージェントで、この記事のテーマを実務に落とし込めます
renueが社内で運用しているシステムをサービス化したものです。何ができるか、どう動くかをサービスページでご覧ください。





