原価と販管費を分ける理由とは?企業の収益評価から運用レバレッジまで解説 |株式会社renue

原価と販管費を分ける理由とは?企業の収益評価から運用レバレッジまで解説 |株式会社renue

公開日: 2025/4/20

1. はじめに

経営者や投資家は、企業の財務状況を理解し評価するために、原価と販管費という2つのキーワードに注意を払います。これらの概念を理解することで、企業の財務パフォーマンスとそのビジネスモデルの持続可能性をより深く理解することが可能になります。

1-1. 概要と目的

企業の財務状態を理解するためには、原価と販管費の理解が重要です。これらのコストを理解することで、企業の収益性、営業効率、そして企業全体の健全性を評価することが可能となります。例えば、原価が高すぎれば、商品の価格設定が適切でないか、または生産プロセスの効率が低い可能性があります。一方、販管費が高すぎる場合、企業はその経費を削減する方法を探す必要があるかもしれません。

1-2. キーワードの解説(原価と販管費)

原価(COGS)とは、商品やサービスの生産に直接必要な費用のことで、原材料費や直接労働費などが含まれます。一方、販管費は、企業の一般的な運営に必要な経費で、これには販売費用や管理費用が含まれます。これらのコストは企業の利益性を評価するための重要な指標となります。例えば、アマゾンは2018年に全体の売上の約42%を原価に費やしましたが、これは大量の商品を高速で顧客に届けるための膨大な物流コストが原因でした。その一方で、同社は技術やマーケティングなどの販管費に大きな投資を行い、その結果、強固なブランドと顧客ロイヤルティを構築することができました。


2. 原価と販管費の基本的な違い

原価と販管費は、会社の収益を計算する際の重要な要素ですが、それぞれ異なる目的と役割を持っています。原価は、商品やサービスの生産に直接かかる費用を指し、一方、販管費は、商品やサービスの販売や一般的なビジネス活動を支えるための費用を指します。

2-1. 原価とは何か

原価は、商品やサービスの製造に直接かかる費用を指します。具体的には、原材料、直接労働、製造間接費などが含まれます。Netflixの例を見ると、2020年の原価(コストオブリベニュー)は$12,440ミリオンで、2021年には$14,616ミリオンに増加し、前年比+24.75%となっています。このように、原価は会社の売上高に大きく影響を与え、その結果として利益にも影響を与えます。

2-2. 販管費とは何か

販管費は、商品やサービスの販売活動や一般的なビジネス運営を支えるための費用を指します。これには、販売員の給与、広告費、オフィス賃料、管理部門の給与などが含まれます。販管費は、ビジネスのスケールと共に増加し、会社の収益性に影響を与えます。

2-3. 原価と販管費の違い

原価と販管費の主な違いは、それぞれが会社の運営にどのように関わっているかにあります。原価は、商品やサービスの生産に直接的に関連している一方、販管費は、商品やサービスの販売やビジネスの一般的な運営を支えるための費用です。原価は通常、売上高に直接関連しているため、売上高が増えれば原価も増えます。一方、販管費は固定費が大部分を占めるため、売上高による影響は少ないです。


3. 原価と販管費を分ける理由

原価と販管費を分けることは、企業の収益性、運営効率、そして営業利益の正確な計算において、非常に重要です。これらの費用を区別することで、企業は財務の状況をより深く理解し、意味のあるビジネス戦略を立てることが可能になります。

3-1. 企業の収益と利益を理解するため

原価と販管費を分けることは、企業の収益と利益を正確に理解するために重要です。原価は売上に直接関連しており、販管費は企業の運営に関連しています。これらを区別することで、企業はどの部分が利益を生み出し、どの部分がコストを生むかを把握できます。例えば、Netflixは原価(コストオブリベニュー)としてコンテンツの制作費を計上し、これが利益にどのように影響するかを評価します。

3-2. 企業の経営効率を評価するため

原価と販管費を分けることで、企業の経営効率を評価することができます。原価は生産量によって変動する一方、販管費は固定的な要素が多いです。これにより、企業は販売量の増減が利益にどのように影響するかを把握することができ、効率的な運営戦略を立てることが可能になります。

3-3. 営業利益を正確に算出するため

営業利益は、売上から原価と販管費を引いたもので、企業が本来のビジネス活動から得た利益を表しています。原価と販管費を正確に計算し、分けることで、企業は営業利益を正確に算出できます。これにより、投資家やステークホルダーは企業の真の収益性を理解することが可能になります。


4. 負の運転収益(営業利益)について

運転収益は事業の総収益からその収益を得るための全運営コストを差し引いたものであり、負の運転収益は会社の販売コストや運営経費が総収益を上回ったことを示します。具体的な例としては、ABC社が総収益として1,000万ドルを報告し、販売コストが500万ドル、一般管理費として50万ドル、営業・マーケティング費用として100万ドルを費やしたとします。これら全ての運営コストを1,000万ドルの収益から引くと、年間運転収益は350万ドルとなります。しかし、ABC社が研究開発部門に追加で400万ドルを投資した場合、会社の総運営費用は収益を500,000ドル上回り、結果として運転収益は-$500,000となります。

4-1. 負の運転収益とは何か

運転収益は、事業の収益から関連する運営コストを差し引いたもので、その値が負であるということは、販売コストや運営経費が総収益を上回ったことを示します。これは、商品の売上やサービスの料金が、それらを生産・提供するためのコストをカバーできなかった場合に発生します。

4-2. 負の運転収益の原因と影響

負の運転収益の主な原因は収益の低下または運営コストの増加です。これは、売上が低下したり、商品のコストが上昇したり、人件費や広告費などの運営経費が増加したりすると発生します。負の運転収益は、企業が利益を生み出す能力が低下していることを示し、最悪の場合、企業は負債の支払いができずに破産する可能性があります。ただし、新興企業では負の運転収益が一般的で、利益に転じるまでには時間がかかることがあります。また、企業が会計上の利益ではなく実際の現金流入を生み出している場合、負の運転収益を報告していてもキャッシュフローポジティブである可能性があります。

4-3. 負の運転収益が投資家に与える影響

投資家にとって、負の運転収益は企業の財務状況と業績を評価する際の一つの指標です。一般的に、負の運転収益は企業の財務健全性に疑問符を投げかけるものですが、その背後には多くの要因が存在することを理解することが重要です。新興企業や急成長を遂げている企業では、投資や研究開発のためのコストが運営コストを押し上げ、一時的に運転収益を負にすることがあります。このような場合、企業が実際に現金を生み出しているかどうかを判断するために、フリーキャッシュフローをチェックすることが推奨されます。


5. 運用レバレッジとの関連性

運用レバレッジは、固定費用と変動費用のバランスにより企業の利益がどの程度変動するかを表す指標です。高い運用レバレッジは固定費用の割合が高く、売上が上がると利益が大きく増加しますが、その逆の場合は大きな損失を招く可能性もあります。株式市場における東京ディズニーランドのような企業は高い固定費用を持つため、運用レバレッジが高い典型的な例です。

5-1. 運用レバレッジとは何か

運用レバレッジは、企業が固定費用を増やすことで生産量を増やす力を表す指標であり、販売量の増減が利益に与える影響を示します。例えば、製造業の企業は設備投資により固定費用を増やすことで生産量を増やし、運用レバレッジを上げることができます。

5-2. 運用レバレッジと原価、販管費の関連性

運用レバレッジは原価と販管費に密接に関連しています。高い運用レバレッジを持つ企業は固定費用が高く、売上が増えると原価率が下がり利益が増大します。しかし、販売が減少すると、固定的な販管費が重荷となり、利益は急速に減少します。例えば、航空業界は高い固定費用と運用レバレッジを持つため、乗客数が増えると利益が急増しますが、その反対の場合は大きな損失を被る可能性があります。

5-3. 運用レバレッジのリスクと収益性

運用レバレッジのリスクと収益性については、運用レバレッジが高いほど収益性は高まる可能性がありますが、同時にリスクも増大します。具体的には、売上が予想よりも低下した場合、利益の減少は大きくなります。これは運用レバレッジが高い企業にとって大きなリスクとなります。

実例として、プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)が挙げられます。近年、PEファンドは積極的にレバレッジを使用して投資を行っており、その結果、リターンを大きく上げています。しかし、レバレッジの拡大は金融システム全体のリスクを増大させる可能性があり、その動向を注意深く監視する必要があります。


6.まとめ

原価と販管費には基本的な違いがあります。原価は製品やサービスの生産に直接関連する費用であり、販管費は企業の一般的な経費です。これらを分ける理由は、企業の収益や利益を正確に把握し、経営効率を評価するためです。特に営業利益の算出においては重要です。負の運転収益(営業利益)は、収益よりも費用が大きい状態を指し、その原因や影響についても考える必要があります。また、運用レバレッジとは投資や運用におけるリスクと収益性の関係性を指し、原価や販管費とも関連しています。運用レバレッジの理解は重要であり、リスクと収益性のバランスを考慮しながら適切な経営戦略を取る必要があります。